Yahoo!ニュース

台風の風速70mは、時速252km。換算は【4かける1割引】と覚える。窓にテープでは対策できません

あんどうりすアウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 
イラスト イラストACより引用 計算式あんどうりす

 沖縄に接近中の大型で強い台風9号の最大瞬間風速の予報が、8月31日現在、70m/sとなっています。これは、一部の住宅が倒壊するほどの猛烈な風と言われています。でも、風速だとイメージできない人も少なくありません。風速を時速に換算する方法は簡単です。4かける1割引です。みなさんもやってみてください。

風速は時速にするとイメージしやすい

(一社)日本気象予報士会サニーエンジェルス提供 風速と時速がイメージしやすいイラスト 
(一社)日本気象予報士会サニーエンジェルス提供 風速と時速がイメージしやすいイラスト 

 まず、風速70mといえば、時速に換算すると、252kmです。

 風速でピンとこなくても、時速だとイメージしやすくなります。

 クルマを運転している人は、体感で時速がわかります。乗り物に詳しい人は新幹線の最高速度、時速285kmを知っています。災害をわが事としてとらえるには、イメージしやすいことが大切です。

時速換算は4かける1割引と覚える!

 風速から時速への計算の仕方は簡単にできます。4かける1割引で覚えてください。

 なぜかというと、まず、風速→時速は、3.6をかければ計算できます。

著者作成
著者作成

 そして、3.6という数字は、4から0.4を引いた数字、つまり1割を引いた数字と同じです。

 だから、3.6をかけるのではなく、まず4をかけて、1割を引くわけです。

 1割引なので、4をかけてから0.9かけても同じです!

 だから台風9号の最大瞬間風速70mというのは、時速252kmと計算できます。

 私の防災講座でも、この、あんどうオリジナル計算式をお伝えしています。こどもに計算を覚えてほしいと思っている保護者の方に好評です。

イラストACより引用
イラストACより引用

 そして、こどもに伝えてほしい事として、「台風の風で、傘が飛ばされそうになっている人はかなり恥ずかしい」という話をしています。風速15mだったら、時速54kmです。クルマで走っている時、窓から傘をさすと、どれだけの風を受けるかをイメージしてみてください。小学生でもイメージできるし、計算もできます。それなのに、台風の時、駅前で傘をさしている人は計算ができない人みたいで、こどもに対して勉強しなさいって言えないくらい恥ずかしいと思うのです。

時速に換算できると養生テープの対策は心もとないとわかる

イラストACより引用
イラストACより引用

 ところで、首都圏で記録的暴風となった2019年9月の台風15号の最大瞬間風速は57.5mでした。時速は207kmで、1996本の電柱が被害を受け、長く停電が続いた地区もありました。

 そして1ヶ月後の台風19号の際、当初は、台風15号と同じく風の強さが心配されていたこともあって、養生テープを買いに走った方も多かったのではないでしょうか?

 でも、時速に換算できると、養生テープのバッテンでは、心もとないことがわかります。

 こちらは風速40m(時速144km)〜50m(時速180km)の時、傘が窓ガラスを割る映像です。傘の先がそのまま室内を襲っています。これが、時速200kmとなれば、屋根瓦や植木鉢、自転車が飛んで、重さの衝撃も加えながら窓ガラスに突進してくるのです。そのバッテンで防げますか?割れるのはどう考えても防げません。

2019年台風15号による被害 写真提供たいちおう
2019年台風15号による被害 写真提供たいちおう

 窓が割れると、風圧で屋根が飛ばされる事態にもなっています。被災地の報道でご覧になった方もいるのではないかと思います。

 飛来物によって割れるのは防げないにしろ、飛散防止になればいいと思うかもしれません。しかし、時速200kmで飛来物が飛び込んできて、割れた瞬間、風も入ってくるわけです。バッテンでの飛散防止については、やらないよりはほんの少しましになるかもしれないけれど、時速でイメージすると、心もとないと感じられますよね。もし、台風到着まで時間があるなら、やるのはバッテンではなかったはずです。

台風は毎年来るので、場当たり的な対策ではなく根本対策を

気象庁 風の強さと吹き方 
気象庁 風の強さと吹き方 

 今回の台風9号は、最大瞬間風速70m(時速252km)で、一部の「住家で倒壊するものがある」猛烈な風となります。気象庁の風の強さと吹き方の表でさえも、最大瞬間風速60m(時速216km)までの記載になっているので、その強さが今まで以上であることが想像できます。ちなみに表には、平均風速35〜40m未満(時速140km未満)で「外装材が広範囲にわたって飛散し、下地材が露出するものがある」と記載されています。外壁は、この段階で落ちる想定です。

 沖縄の住宅は台風対策として8割ほどの家が鉄筋コンクリート(RC)造なので、本州よりも台風に強い家になっています。上記の気象庁の表に、最大瞬間風速60m(時速216km・平均風速だと40m以上 時速140km以上)では、「鉄骨構造物で変形するものがある」とありますので、鉄骨構造物の場合は注意が必要です。それを超える予想なのですから、本当に自宅で安全なのかの検討は必要になります。

 家の倒壊が心配されたり、風だけでなく、雨による浸水や土砂災害の心配がある場合は早めに安全な場所の頑丈な建物等に避難することが重要になります。

 新型コロナウイルスの感染も心配な時期ですので、分散避難として、避難場所だけでなく、知人、友人、親戚宅やホテルへの避難も検討することになります。建物の強度だけでなく、ハザードマップを確認することもお忘れなく。また、夜になってからの避難では危険です。

photoACより引用
photoACより引用

 新型コロナ時期の防災・減災対策としては、家自体が安全であることがとても重要になります。

 窓については、シャッターを設置したり、トリプルサッシにリフォームできれば今後も安心です。それらは、台風対策になるだけでなく、地震対策にもなりますし、断熱性能も高めることができます。断熱は、省エネにつながり、災害時、少ない電気でエアコンを稼働させることが可能になります。一気に防災・減災対策が進むのでおすすめです。なお、余談ですが、網入りガラスは火事の時、熱でガラスが割れた際、飛び散るのを防止するものですが、飛来物で割れにくい訳ではありません。台風や地震では通常のガラス同様割れるので、対策が必要なガラスです。

長野県 環境配慮型住宅助成金 リフォームタイプ
長野県 環境配慮型住宅助成金 リフォームタイプ

 とはいえ、資金が必要になります。そんな時、防災・減災のリフォーム助成金だけでなく、断熱リフォームの助成金も探してみてください。防災・減災で探すと、見落としがちですが、長野県の環境配慮型住宅助成金などは、魅力的な制度です。このような制度が自治体にあると、補助を受けて窓のリフォームが可能です。

 また、飛散防止をしたいのであれば、飛散防止フィルムを貼ると、台風&地震対策にもなります。そして、断熱機能つきであれば、夏の暑さ、冬の寒さも防ぎます。

東京都港区 家具転倒防止器具等無償提供 PDFより引用
東京都港区 家具転倒防止器具等無償提供 PDFより引用

 東京都港区のように、家具転倒防止器具等を1世帯、150〜195までのポイントから選んで無償で取り付けられるよう助成している自治体もあるので、飛散防止フィルムを購入する前に確認してみてください。

 

 台風9号の今後についても心配です。そして、9月1日は、関東大震災が起こった日です。この日は地震だけでなく、当時、日本海沖を通過していた台風の風の影響で、火災旋風まで起こす延焼が各地で起こりました。この時期は台風に思いをはせると同時に、地震対策、火事対策も考えてほしい日になります。

 ちなみにこの台風は上陸していなかったのです。それでも、関東平野には、当初南風が15m(時速54km)吹き、のちに北風が風速22m(時速79.2km)となり、延焼を拡大させました。現在では、当時のように、かまどを使っているわけではありませんが、家屋が倒壊することで、火事が起こることがわかっています。地震と台風が重なると、自宅が地震で無事であっても、風の強さによっては、火事から避難する必要がでてきます。台風対策と地震対策はぜひセットで進めていただければと思います。

 そして、まず、今この瞬間にすぐできる防災の知恵として、風速→時速換算4かける1割引を覚えて、被害をイメージできるようになっていただければ嬉しいです。

アウトドア防災ガイド  リスク対策.com名誉顧問 

FM西東京防災番組パーソナリティ 兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 博士課程 女性防災ネットワーク東京呼びかけ人 阪神淡路大震災の経験とアウトドアスキルをいかした日常にも役立つ防災テクを、2003年から発信。子育てバックは、そのまま防災バックに使えるなど赤ちゃん防災の先駆けとなるアイデアを提唱。技だけなく仕組みと知恵が得られると好評で、口コミで講演が全国に広がる。企業広報誌、子育て雑誌などで防災記事を連載中。ゆるくて楽しい防災が好み。

あんどうりすの最近の記事