Yahoo!ニュース

実は経済合理性の高い活動? 節目となるクールビズの意義

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
(写真:アフロ)

■今年もクールビズがスタート!

環境省は4月23日に、2019年度クールビズについて昨年同様に「5月1日〜9月30日」までとする発表を行いました。今回は、令和となってからは1回目、全体では15回目の節目の年となっています。

すでにクールビズが始まっていますが、連休明けとなる今日はやや肌寒い地域もあり、今日知った方もいるでしょうし、全国的に暑くなる明日以降から本格的に始まると思われます。毎年、私がいる東京はゴールデンウィーク明けから、街を歩く半袖の人が見られるようになりますが、東北はまだ涼しい所が多いだろうし、日本全体で一律の実施時期というのはいささが現実的ではないような気もしますが、そのあたりは臨機応変に対応する企業も多いでしょう。

一般ビジネスパーソンの環境意識の向上には貢献しているクールビズですが、企業組織としての環境活動意識は、気候変動、異常気象などのグローバル・リスクに関心はあるものの、そこまで熟成されていない気がします。ただ、世界のトップ企業は、エコとか省エネというカジュアルなワードではなく、ガチな社会的インパクトを出せる取組みを徐々に始めています。

そこで本記事では特にCSR(企業の社会的責任)の視点を中心に、クールビズ関連調査や環境対応先進企業などのデータも紹介しながら最新動向をまとめます。

■クールビズとは

クールビズとは「夏期に過ごしやすい服装で仕事をするという衣料軽装化キャンペーン」のことです。冷房時の室温を28℃にしても快適に過ごせる軽装を推奨する取り組みであり、環境省が中心に啓蒙活動を行い、2005年に当時の総理大臣・小泉氏によって提唱されました。地球温暖化対策の一環として政府が提唱する、夏を快適に過ごすライフスタイルであり、室温の適正化とその温度に適した軽装や取り組みを呼び掛けており、気軽にできるアクションなどを呼び掛けています。

昨今ではビジネスセクターでも、環境対応(気候変動対応)に対するプレッシャーが国内外で大きくなっています。日本の政府・官公庁・主要経済団体なども、環境イニシアティブに対して、署名や賛同をしており、もはや企業としては“逃げられない”状況となっています。

しかしながら、製造業であれば、それでも環境負荷低減はなんとか進められるのですが、非製造業はモノを作っていないため、そもそも環境負荷の比較的低いビジネスモデルとなっており、現実的な環境活動が難しい場面も多々あります。たとえば、IT企業の環境活動などはできることが非常に限られています。しかし、クールビズは業種・業態問わず対応できる気軽さがあるため、原則すべての企業で導入可能なスキームではあります。日本政府も、国際的な動き(パリ協定、TCFD、SDGsなど)に対してコミットメントしており、今後、企業への環境課題対応が緩和されることはまずないので注意が必要です。

■クールビズ意識調査

さて、そんなこんなで節目のクールビズですが、現状として、どの程度の認知度があるのでしょうか。

日本気象協会の調査(2017)によれば、クールビズの認知度は「98.3%」で実施率は「約6割」にとどまっているとしています。認知度は、ほぼ100%といえますが実施率は約6割にとどまりギャップがある模様。これは地域差、例えば関東と東北など、そもそもの気温差が実施率の差になっているようです。

出典:クールビズに関するアンケート調査(日本気象協会)
出典:クールビズに関するアンケート調査(日本気象協会)

興味深い傾向としては、クールビズのメリット1位は「快適に過ごすことができる」で、デメリットは「特になし」が1位になっている点です。これはノータイ・ノージャケットでも両者の合意(クールビズの認知)があれば、商慣行自体に対する影響はほぼないということなのでしょう。ただし、デメリット2位として、男性「見た目のだらしなさ」、女性「服装選びが難しい」があるとされており、普段とは異なる服装をどこまで準備するのかが、課題であるようです。これは私も実感があるので納得のデータです。

■就活生の夏場の服装

環境省の調査(2017)によれば、全国20代〜60代の男女を対象に「就活生の夏場の服装」について調査したところ、全体の54.0%は「クールビズでいいと思う」という結果が出たとのこと。逆に約半分は「良くない」と思っている人がいるというのが興味深いです。私はビジネスカジュアル(オフィスカジュアル)であれば、ノータイ・ノージャケットでも良いと思うのですが。

出典:就活生の夏場の服装調査(環境省 COOL CHOICE)
出典:就活生の夏場の服装調査(環境省 COOL CHOICE)

就活をする当事者は、夏の就活は大変だと身をもって理解しているからか、20代が全世代で最もクールビズ推進派となっています。名目上は来月からが本格的な就職活動期間となるわけで、企業サイドも就活生への配慮が必要でしょう。しかし、前述の調査のようにクールビズの課題として、どのようなレベルの服装ならよいかわかりにくい点があり、採用面接で「クールビズ(軽装)でお越しください」と言われても、対応が難しいという場面もあると思います。たとえば、対応がわからないから結局エントリーを見送るなど、優秀な学生をくだらない理由で獲得できないということでは経済的損失が大きすぎるので、丁寧な対応をしていきましょう。

このあたりは正解はないので、学生サイドとしては質問できるのであれば一度ドレスコードを聞くなどしたほうがよいのでしょうか。とはいえ、あまり適当なことは言えないので、本稿では動向紹介だけにしておきます!

■環境貢献度の高い企業

では、もう少し大きな枠組みでデータを見てみましょう。最近の企業はどの程度、環境活動をしているのでしょうか。環境対応の企業ランキングがあるのでランキング上位をご紹介します。

イオン、SOMPOホールディングス、富士フイルムホールディングス、ダイキン工業、デンソー、キヤノン、トヨタ自動車、サントリーホールディングス、ホンダ、丸井グループ、ローム、東芝、ダイフク、ケーヒン

(出典:環境ランキング上位企業、「CSR企業白書2019」東洋経済新報社)

この企業評価は、環境担当部門および方針の有無や、環境会計・環境監査の対応状況から、環境国際規格・再エネ・生物多様性などへの対応など幅広い環境対応を点数化しランキングにしたものです。上記の企業は、単にCO2排出が低い(もしくは低減に並々ならぬ努力をしている)というだけではなく、総合的な環境対応がすぐれているとされる先進的な企業群となります。これらの企業では、当然今年もクールビズ活動をされると思いますが…環境評価が高い企業にお勤めの方は自社の評判を落とさぬよう行動をすべきでしょう。ご苦労様です。

また昨今では「ESG投資」という環境・社会などに配慮した株式投資をする方法論も浸透してきており、特に上場企業では環境活動をしないもしくは控える、という選択肢はもはや存在しないというレベルにまできています。まぁ、クールビズ推進により株価が上がるというのはないですが、逆にクールビズ程度もできない企業は環境意識が低い(環境リスクがある)ので投資をしないという、スクリーニングの可能性は否定できません。

つまり、企業評価としてもそうですが、すでに環境対応がなにかしらの経済合理性のある事業活動であることを多くのビジネスパーソンが認識すべきフェーズに入った、ということがトピックスかと。個人の活動や、組織や社会に与える影響をイメージできるかというと難しいですが、ビジネスパーソンの教養として理解しておくべきです。

■クールビズの意義

私はCSR/サステナビリティ・コンサルタントという、業種的には“お堅い”方面のドレスコードですが、打合せ等で「ノータイ・ノージャケット」の事前指定があることはあまりありません。新規の場合は実際に訪問して先方のドレスコードを知るということも多々あります。

実際のところ、コンサルタントであってもなくても、BtoB業種の場合は先方のドレスコードに合わせることが多いと思います。先方がノータイ・ノージャケットなのであれば、それに合わせることもできるでしょう。また先方から打合せ室に入ってから「暑いのでジャケットを脱いでいただいて構いません」と言われるかもしれません。

環境活動の経済合理性が高まっており、単なるエコ以上の意味を持つようになっています。まずはこの事実を知っていただく必要があります。個人の行動一つで社会が良くなる(環境負荷が減る)かというと難しい部分もありますが、会社組織全体でクールビズを推進することで、環境負荷低減も現実的な話になります。ぜひ、今週は方々で「今年もクールビズ始まったみたいですね」と会話のネタにしていただくことで社会的なインパクトが大きくなり、ひいては大きな環境活動になることでしょう。

環境省が進める地球温暖化対策プロジェクト「COOL CHOICE」に詳しい方法などが掲載されているので、詳しく知りたい方は参考にしてみてください。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

安藤光展の最近の記事