■さすがのトヨタです

あなたは「社会に貢献する企業を1社挙げてください」と聞かれた時、どんな企業を思い浮かべるでしょうか。

今週6日、日経から「第1回ESGブランド調査」の結果発表がありました。消費者意識調査なので、必ずしもその実態を表したものではないですが、世間ではどう思われているかを知るには良い調査だと思います。ESG(環境・社会・企業統治)に馴染みのない方もいると思いますがシェアさせていただきます。

ESGブランド調査は、2000年から毎年実施していた「環境ブランド調査」を改変したもの。調査対象をこれまでの「環境(E)」だけでなく、「社会(S)」「ガバナンス(G)」に広げ、さらに「インテグリティ(誠実さ)」を加えた4分野で評価となっています。

ESGというワードに馴染みのない方は、CSR(企業の社会的責任)・SDGs(持続可能な開発目標)・社会貢献、などに近いものとお考えいただければと思います(厳密には異なりますが便宜上)。株式投資に関わる人であればかなり認知が進むESGですが、一般生活者のイメージ調査というのはあまりなく、結果も興味深いものになっています。早速ランキングをご紹介!

■ESGブランド調査2020

1位、トヨタ自動車

2、サントリーホールディングス

3、イオン

4、キリン

5、花王

6、パナソニック

7、スターバックスコーヒージャパン

8、資生堂

9、ホンダ

10、サッポロビール

11、日本マクドナルド

12、ソニー

13、Google

14、カゴメ

15、味の素AGF

16、Apple

17、大和ハウス工業

18、キユーピー

19、味の素

20、富士フイルム

出典:第1回ESGブランド調査

■専門的視点からみるとどうか

本調査では圧倒的な点差で1位となったトヨタ自動車(以下トヨタ)。消費者意識調査でトヨタは1位でしたが、専門機関からみた時にはどのレベルで評価されているのでしょうか。日経と双璧を成すCSR/ESG評価の東洋経済の調査を見てみます。

◯CSR企業ランキング2020

1位、KDDI

2、NTTドコモ

3、日本電信電話

4、花王

5、富士フイルムホールディングス

6、セブン&アイ・ホールディングス

7、JT

8、コマツ

9、富士ゼロックス

10、旭化成

11、ダイキン工業

12、キリンホールディングス

13、大和ハウス工業

14、ブリヂストン

15、東レ

16、富士通

17、トヨタ自動車

18、東芝

19、積水ハウス

20、三菱商事

出典:東洋経済新報社「CSR企業白書2020」

東洋経済のCSR調査によれば、トヨタは2020年は17位で昨年の19位からランクアップしています。トヨタは強豪ひしめくトップオブトップの企業であり、名実ともに国内の総合上位企業です。せっかくなので、他のランキングでもトヨタを見てみましょう。

◯社会貢献支出額ランキング2020

1位、トヨタ自動車

2、ホンダ

3、NTTドコモ

4、日本電信電話

5、サントリーホールディングス

6、三井不動産

7、JT

8、日本生命保険

9、キヤノン

10、三菱UFJフィナンシャルグループ

11、武田薬品工業

12、イオン

13、JXTGホールディングス

14、パナソニック

15、明治ホールディングス

16、三菱地所

17、大和ハウス工業

18、ソニー

19、三菱商事

20、エーザイ

出典:東洋経済新報社「CSR企業白書2020」

ちなみに、トヨタの年間社会貢献支出額は191億円です。中小規模の上場企業年商の何倍もの数字…。ちなみに、2位のホンダは89億円、3位のNTTドコモが88億円となっていてこちらもまったく別格な数字です。これは寄付金額だけの数字ではありませんが、年間で相当のリソースを社会貢献分野に投資しています。このあたりが、一般生活者の社会貢献イメージの向上にも貢献しているのかもしれません。

■ESGはブランディングに貢献するのか

「ESGブランド」というワードがそもそもパワーワードと言いますか、ふわっとしている概念ですが、私はブランディングは専門ではありませんが、普通に考えれば、ESG要素“のみ”でブランディングができるほど、そんな簡単な話ではないとは思います。トヨタだって、何百億円という社会貢献予算を使い、なおかつ通常のブランディング活動をして、やっとイメージを維持できているわけでして、そこに再現性はなさそうです。

サステナビリティ推進の現場では、しばしばブランディングという言葉が飛び交うことがあります。「ESG推進の目的はブランディングです」「ESGの成果はブランディングです」などのフレーズを耳にしたことがある人もいるかもしれません。しかし、このフレーズを発した人に「ブランディングの定義とは何ですか?」「その影響は数値化できるんですか?」「本当にビジネスに貢献するんですか?」「費用対効果は適切ですか?」などと聞いても、たいした答えは返ってこないでしょう。なかなか難しい課題です。

その中でも、界隈でよく話題に上がるのは「パーパス・ブランディング」があります。ここでいうパーパスとは「目的」よりは「存在意義(自社が存在することで社会・ステークホルダーに貢献できること)」の意味で使われます。志、大義名分、とも言えます。パーパスは自社の存在意義であると同時に究極的な企業としてのあり方でもあるのです。

ESGブランド調査の上位企業すべてにパーパスがあるかというと微妙ですが(たとえばAppleにはパーパスやミッション・ステートメントがないのは有名)、社会・環境に大きな影響を与える大手企業としては、ESGの視点も大事なのは間違いないのかもしれません。

■社会の変化に企業はどう対応するか

昨今の消費者は、企業やブランドに求める役割が変化しつつあるように思います。良くも悪くも、ダイバーシティ(多様性)やエシカル(倫理観)やコンプライアンス(法令遵守)を、より企業に求めるようになってきています。これは各種調査でも明らかなことですが、それが消費者の中で企業イメージにつながっていっていると。パーパスに共感するというか。

では、一般生活者がトヨタのパーパスにどこまで共感して、今回の調査回答をしているかというと、ほとんどなさそうな気もします。たとえばトヨタのパーパスと思われる「豊田綱領」のステートメントを知っている人は、関係者以外いないでしょう。豊田綱領はかなりESG的な発想なんですけどね。

もちろん、国内最大手企業の一つで余裕があるからできるんでしょ、というご意見もあると思います。それは否定しません。事実ですから。しかし、予算が取れるのに取り組まない企業が多いのが事実です。

コロナ禍の中で、CSR/サステナビリティ推進の予算を極端に削る企業も今後増えるでしょう。サービス業全般のように、昨年対比売上9割減もあったような大打撃を受けた企業では、まずはキャッシュの確保はしょうがないですから。ただ、この手の消費者調査は、実態もさることながら、どれだけ情報の露出ができるかもポイントになります。特にBtoCビジネスモデルを主軸にする企業は、このあたりを考慮しながらも最低限の予算確保もしたいところです。

以上、今後も注目したい企業ランキングの紹介でした。