Yahoo!ニュース

なぜ企業サイトの「CSR/社会貢献」情報が最近注目されているのか

安藤光展サステナビリティ・コンサルタント
企業サイトで注目度急上昇中のコンテンツとは?(写真:アフロ)

■企業サイトの「CSR/社会貢献」情報ってなに?

あなたは経済系メディアや新聞各社を中心に取上げられることが増えてきた「CSR」や「ESG」という単語を知っていますか?

最近のCSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・企業統治)では“ビッグなマネー”が動いてることもあり、各ビジネス領域からの注目度が高まっています。しかし、この界隈はニッチなこともあり、多くのビジネスパーソンは「見聞きしたことがあるような気がするけど、いまいち理解できていない…」という方がほとんどだと思います。

そういう方々のために本記事では、社会的な動きと企業の情報開示レベルや、なぜ企業サイトの「CSR情報」が注目されているかを、意識調査や社会的背景を含めてまとめます。また、本日情報解禁の我々の企業情報開示格付け「CSRエンゲージメント・ランキング2017」も合わせて使い分析してみます。

■ESG投資の盛り上がり

まずはCSRとESGという概念を簡単に紹介します。

CSRとは、企業の社会的責任と訳され「事業活動における社会への影響に責任を持つ」ことと国際的に定義されています。具体的には、コーポレート・ガバナンス(企業統治)、コンプライアンス(法令遵守)、ワークライフバランス、ダイバーシティ(多様性)、ディーセントワーク(働きがいのある仕事)、環境対応、人権・労働慣行への対応、などなど、企業の事業活動すべての社会的側面を指します。「CSR=慈善活動」と考える方もいますが、慈善活動はCSRのごく一部の概念でしかないことをご理解ください。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。主に投資家、IR、ファイナンスなどの関係者が使うワードで、厳密には異なりますが、意味はCSRと同義語だとまずはご理解ください。本記事では便宜上、ESGをCSRという概念に含むとして紹介していきます。

さて、本題の「ESG投資」について。ESG投資とは、定量的な財務情報だけではなく非財務情報であるESG要素を考慮する投資のことです。ESGに関する要素はさまざまですが、例えば「E」は地球温暖化対策、「S」は女性従業員の活躍、「G」は取締役の構成などが挙げられます。

※参照:GPIF|ESG投資

すでにGPIFだけでも1兆円レベルの投資がESG投資だとアナウンスされており、今後その投資額を広げるとも言われています。ほんの少しの動きでも企業の株価に大きな影響がでますね。これらの投資における企業評価は「公開情報」がよく活用されるようになっています。

投資サイドから「CSR情報をしっかり開示しないと御社を評価しないし株も買いませんよ」と宣言されているので、企業は必死になって(実際のCSR活動が進んでいるか別として)情報開示を行おうとしているのです。日本企業は外部(ステークホルダー)からの“本気のプレッシャー”に弱いんですね。そういった背景もあり、投資家サイドも企業サイドも公開情報としての「CSR情報」がホット・トピックスとして扱われるようになってきているのです。

その中でも誰でも閲覧できる企業サイト(コーポレート・サイト)がよく利用されるということもあり、企業サイドがウェブでCSR情報を積極的に開示するようになってきた、という背景が見えてきます。

■社会意識調査

投資サイドのプレッシャーもあり企業はCSRの情報開示を迫られている実態は紹介しました。では、他のステークホルダーは、企業の社会性をどのように見ているのでしょうか。今回の我々の調査でも重要視した「エンドユーザー/消費者」について、2つの調査データを紹介します。

◯消費者意識調査

・日本の消費者の43%が、ブランドの社会的/政治的問題に対するスタンスによって購買行動を決定している

・日本の消費者の39%が、ブランドの信念(立場や姿勢)に基づいて購買を決定する「ビリーフ・ドリブン」な購買者であることが明らかに

・日本の「ビリーフ・ドリブン」な購買者の49%が、「意見の分かれる社会問題や政治問題への姿勢に共感した」という理由だけで、それまで利用したことのないブランドを購入し、また35%がロイヤルユーザーとなっている

出典:「2017 エデルマン・アーンドブランド」(エデルマン・ジャパン、2017)

◯生活者の社会意識調査

・約8割の生活者が社会問題に「関心がある」と回答

・生活者の4割程度が「社会/環境に配慮している商品」を購入

・「社会/環境に配慮していない商品」を「買わない」と答えた生活者は約6割

・社会/環境問題に積極的に取り組む企業に「好感が持てる」は約8割

・「その企業の商品/サービスを買いたい」「その企業を信頼できる」も約4割

出典:「2017年度生活者の社会意識調査」(博報堂研究開発局、2017)

この記事を読んでいるあなたが「企業のCSRに対する姿勢」を評価するとは限りませんが、少なくとも日本において一定数の消費者/生活者は、企業の社会的側面をみているということがわかります。

ESG投資の盛り上がり、消費者の社会的意識の向上、などの社会的背景もあり、企業のCSR情報開示は説明責任を果たす上で非常に重要な要素を占めることになっています。現代社会において、企業を取り巻く様々なステークホルダーが企業のCSR(社会的側面)を重要視し始めています。こういった背景もあり、我々で企業が実際どの程度情報開示ができているかを、消費者/エンドユーザー視点で調査することにしたのです。

さて、それでは我々の調査結果を紹介します。前置きが長くなりましたが、以下より本題の「CSRエンゲージメント・ランキング」を紹介します。

■CSRエンゲージメント・ランキング2017

1、ヤフー(総合点数:188点)

2、キヤノン(184)

3、伊藤忠商事(182)

4、トヨタ自動車(180)

5、大和ハウス工業(178)

5、オムロン(178)

7、ソフトバンクグループ(176)

8、りそなホールディングス(170)

9、本田技研工業(166)

10、エヌ・ティ・ティ・データ(164)

11、SOMPOホールディングス(162)

12、資生堂(158)

13、国際石油開発帝石(142)

13、NTTドコモ(142)

15、小松製作所(138)

15、三菱重工業(138)

15、三菱電機(138)

15、リコー(138)

19、武田薬品工業(136)

20、富士通(134)

(出典:ウェブエンゲージメント評価「CSRエンゲージメント・ランキング2017」を発表しました

※ヤフー社がトップとなっていますが、「Yahoo!ニュース 個人」の契約との関連性もなくステマではありません。厳正なる調査の結果であることをご了承ください。

企業のCSR情報開示の調査を、私が代表をするCSRコミュニケーション協会と、調査パートナーのエンゲージメント・ファーストと共同で格付け「CSRエンゲージメント・ランキング2017」を行いました。本日情報解禁です。こちらも参考にみてみましょう。

今回のランキングでは1位ヤフー、2位キヤノン、3位伊藤忠商事というランキングでした。特にこの3社はステークホルダー(株主・投資家、従業員、顧客、取引先、NPOなどの利害関係者)の視点を考慮したCSRウェブコンテンツ運営をしていました。

総評としては、大手上場企業でCSRウェブコンテンツがステークホルダー視点で適切に整備されていたのは全体の約16%、エンドユーザー/消費者が理解しやすくアクションをしやすいウェブコンテンツを運営しているのは全体の約14%でした。調査の詳細については「ニュースリリースページ」からご確認ください。

■CSR企業ランキング2017

前述の我々の調査は、これはこれで調査としてはいいのですが、これだけで総合的にCSR情報開示がすぐれている企業は確定できません。もう一つのスクリーニングとして日本では唯一のCSR総合企業評価の「CSR企業ランキング」(東洋経済新報社)と比較して2つの側面から情報開示レベルの高い企業を探してみましょう。

1、富士フィルムホールディングス

2、ブリヂストン

3、KDDI

4、コマツ

4、NTTドコモ

4、キヤノン

7、富士ゼロックス

8、デンソー

9、リコー

9、花王

11、味の素

12、コニカミノルタ

13、NEC

14、ホンダ

15、ダイキン工業

16、村田製作所

17、日産自動車

18、クボタ

19、積水ハウス

20、アサヒグループホールディングス

(出典:最新版!「CSR企業ランキング」トップ700社

こちらの調査では、基本的には情報開示の量が多ければ多いほど上位にいける仕組みです。ただし、企業の財務状況も評価要素として大きく、非財務領域(≒社会貢献情報)だけの充実ではなく、本業の良し悪しも含まれます。

我々の調査結果である「CSRウェブコンテンツが充実して、エンドユーザー視点で制作・運用されて」いて、後者調査の「財務体質も健全で総合的にCSR活動に取り組み、情報開示も積極的に行って」いる企業の重複は「キヤノン、ホンダ、NTTドコモ、コマツ、リコー」の5社です。

企業の一部分を切り取ったにすぎませんが、この5社は日本でトップクラスのCSR情報の開示姿勢と運用実績があり、他社に比べて、透明性が高く、信頼性が高い“良い会社”である可能性が非常に高いという結果がわかりました。

本記事の読者に企業のウェブ・広報担当者の方がいましたら、ルーティンワークが大変でこのカテゴリの対応優先度が低いのはわかるのですが、様々なステークホルダーからの情報ニーズがあるわけでして、今回の我々の調査結果などを参考にしていただき、自社の取り組みに活かしていただければ幸いです。

■まとめ

本記事では、企業サイトの「CSR/社会貢献」情報が注目されているのは、様々なステークホルダーの情報ニーズが増しているからだよ、という結論であり、日本社会の新しい潮流の一部をご理解いただけたかと思います。

別に「CSR/社会貢献」以外の企業情報開示もですが、積極的に開示することは企業の透明性向上/信頼性時向上に貢献するといわれています。最近では就活生が、企業分析でCSR情報のワークライフバランスなどの労働慣行について調べる、ということも増えているとよく耳にします。

まずは「企業のCSR活動って注目を集めてるのね」と知っていただくだけで結構です。企業サイトをチェックする機会がありましたら、ぜひ「CSR/社会貢献」のページをチェックしてみてください。その企業の新しい一面を見つけることができるかもしれませんよ。

サステナビリティ・コンサルタント

サステナビリティ経営の専門家。一般社団法人サステナビリティコミュニケーション協会・代表理事。著書は『未来ビジネス図解 SX&SDGs』(エムディエヌ)、『創発型責任経営』(日本経済新聞出版)ほか多数。「日本のサステナビリティをアップデートする」をミッションとし、上場企業を中心にサステナビリティ経営支援を行う。2009年よりブログ『サステナビリティのその先へ』運営。1981年長野県中野市生まれ。

安藤光展の最近の記事