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幸せを運ぶ青い蜂「ルリモンハナバチ」=実は「労働寄生」のちゃっかり者#幸せの青い蜂 #昆虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
いかにも幸せを運んでくれそうなルリモンハナバチ。

 「幸せを運ぶ青い蜂」として有名なルリモンハナバチに、今年も出会うことができた。しかしこの蜂は、メルヘンの世界のようなその可愛い姿や、優しげな名前からは想像できない、ずる賢い生き方をしている。

 ルリモンハナバチのメスは、コシブトハナバチなど他の蜂の巣に産卵するという。つまりルリモンハナバチの幼虫は、他の蜂が作った巣で、他の蜂の子どものために用意された餌(花粉など)を食べて育つ。

 自分で子育てなどの労働をしないこうした生き方を「労働寄生」と呼ぶらしい。鳥で言えば、「托卵(たくらん)」という手を使うカッコウのような生き方だ。

花に頭を突っ込んで食事中のルリモンハナバチ。
花に頭を突っ込んで食事中のルリモンハナバチ。

宙に浮かぶルリモンハナバチ。
宙に浮かぶルリモンハナバチ。

 こうした生活史を知ると「幸せの青い蜂」というイメージが損なわれそうだが、縁起のいい出来事などというものは、しょせん迷信のようなもの。

 そもそもルリモンハナバチとか、身近な青い鳥の代表のルリビタキとかが幸せの象徴のように言われるのは、メーテルリンクの童話「青い鳥」からの連想。美しい青い紋を持つ蜂が花から花へと飛び回る姿を見て、いかにも「幸せを運んでくれそう」と思うのは、見る人の勝手だ。

「鰯(いわし)の頭も信心から」とか「病は気から」とか言うように、気持ちの持ち方次第で、気分も、幸せ度合いも変わる。

ランタナの花とルリモンハナバチ。
ランタナの花とルリモンハナバチ。

コスモスの花とルリモンハナバチ。
コスモスの花とルリモンハナバチ。

 つまり、「ルリモンハナバチに出会えたら縁起がいい」と強く信じることが重要なのだ。「ルリモンハナバチを見つけたのに、幸せが訪れる気配が全くないのはなぜなんだ」などと、昆虫記者のように不平不満をぶちまけてはならない。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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