1997年のヘール・ボップ彗星を上回る、観測史上最大の彗星核を持つ「メガコメット」になるかもしれない太陽系外縁天体(TNO)発見の報告が天文学者の注目を集めている。太陽系の広大な外縁部で、“彗星の巣”と呼ばれる「オールトの雲」から来たと見られる小天体「2014 UN271」は、60万4000年もの周期で太陽系の内側に接近し、2031年1月に土星の軌道のすぐ外側までやってくる。

2021年6月19日、国際天文学連合(IAU)の小惑星センターに新たな天体の報告が掲載された。全天の14%を観測する米フェルミ国立加速器研究所の「ダークエネルギー・サーベイ(DES)」で発見された天体群のひとつで、チリのセロ・トロロ汎米天文台のビクター M. ブランコ4m 望遠鏡の観測データから見つかった。

2021年6月23日の「2014 UN271」の軌道。出典:JPL Small-Body Database Browserより
2021年6月23日の「2014 UN271」の軌道。出典:JPL Small-Body Database Browserより

海王星以遠の太陽系外縁部には太陽から数万天文単位付近を大きく球殻状に取り囲む氷微惑星の集まり「オールトの雲」が広がっている。ダークエネルギー・サーベイではこれまでにも太陽系外縁天体を発見しており、2014年から4年間のデータでは316個のTNOが見つかっている。しかし最初の観測データが2014年であることから「2014 UN271」と仮符号をつけられた天体は、長大な周期とこれまで観測された中でも最大のものとなる彗星核という特徴が際立っていた。

まずはその周期だ。NASAの「JPL・スモールボディ・データベース」に記載された情報によれば、2014 UN271の遠日点距離は14278.89506982491 AU(天文単位)。およそ2兆キロメートルになる。公転周期は約60万4000年で、200年以上の公転周期を持つ長周期彗星の中でも非常に長い。またその大きさは、直径が100~200キロメートル程度と見られている。1997年にー1等級程度と非常に明るくなったヘール・ボップ彗星の公転周期は約2530年、彗星核の大きさは50キロメートルで、それをはるかに上回る。

※軌道に関する情報は更新される可能性があります

発見者のPedro Bernardinelli博士は、2014年から2018年までの観測画像を合成した2014 UN271の画像をツイッターで公開。「(彗星の)コマは確認されていない」とコメントした。

2014 UN271は、現在太陽系の内側に向かっており、2031年1月23日に10.93 AUの近日点(土星の軌道のやや外側)に到達する。太陽に近づいて氷などがガスとなって活動を始めると、彗星の周囲を取り巻いて明るく広がる「コマ」や「尾」を持つ彗星として見られる可能性がある。

ただし、ヘール・ボップ彗星のように地球から肉眼や望遠鏡で観測できる、いわゆる「天体ショー」ではなさそうだ。とはいえ、太陽系の内側で長周期彗星を観測できる機会は少ない。国立天文台は長周期彗星とオールトの雲との関係についての研究で「長周期彗星は地球にかなり近づいてからでないと発見することが難しいため、彗星が遠ざかって観測できなくなってしまうまでの時間は短い」としている。2014 UN271はチリのヴェラ・ルービン天文台が今後10年観測を行うともいわれている。

これまで、探査機が接近して観測した彗星は、ハレー彗星やチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星など公転周期が200年より短い短周期彗星に限られていた。接近まで10年のリードタイムを持つ2014 UN271に探査機を送ろう、という提案は早くも持ち上がっており、天文学者のフィリ・プレイト氏は「欧州宇宙機関(ESA)が2029年に打ち上げを計画する長周期彗星観測計画Comet Interceptor(コメット・インターセプター)計画のターゲットに」と述べている。

1985年、76年ごとに太陽に最接近するハレー彗星を、欧州の探査機「ジオット」を始めソ連の2機の「ヴェガ」、アメリカの「アイス」、日本の「さきがけ」「すいせい」が一斉に協調観測し、「ハレー艦隊」と呼ばれる国際規模の観測協力が実現した。10年後、巨大な核を持つ長周期彗星の初探査を実現させれば、彗星の構成や原始太陽系で惑星を作った物質について新たな成果を得る、21世紀の快挙となるかもしれない。