2021年6月13日(日本時間)、米宇宙開発企業ブルー・オリジンが運用する宇宙船「ニュー・シェパード」の商業初飛行のオークションが行われた。ブルー・オリジンの設立者で、米アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏、弟のマーク・ベゾス氏と宇宙旅行を共にする搭乗機会を求めては143カ国から6000人が参加し、事前に最高で480万ドル(約5億2600万円)の価格が提示されていたシートの落札価格は2800万ドルだった。搭乗者の名前は非公開。

出典:New Shepard First Seat Auction中継より
出典:New Shepard First Seat Auction中継より

ニュー・シェパードは、ブルー・オリジンが開発する弾道飛行型の再使用ロケットシステム。6人搭乗可能なクルー・カプセル(宇宙船)と独自開発のBE-3ロケット部分から構成され、テキサス州の射場で高度約100キロメートルの宇宙まで繰り返し飛行できる。2015年から打ち上げ試験を開始し、これまで15回の試験飛行と無重力実験を行ってきた。ニュー・シェパードの名前は、アメリカ初の有人宇宙飛行を達成したアラン・シェパード宇宙飛行士にちなんでいるが、乗客が搭乗する初飛行は1969年にアポロ11号が世界初の月面着陸に成功したのと同じ、7月20日を予定している。

Credit: Blue Origin
Credit: Blue Origin

宇宙旅行には、国際宇宙ステーションへ滞在する軌道上への飛行と、地上から「宇宙の入り口」ともいえる高度100キロメートル前後まで上昇し、数分間の自由落下による微小重力を体験して帰還する弾道飛行(サブオービタル)のタイプがある。ニュー・シェパードは後者のサブオービタル型だ。

同様にサブオービタル飛行を体験できる宇宙旅行には、リチャード・ブランソン氏が設立した米ヴァージン・ギャラクティックの「スペースシップ 2」がある。スペースシップ 2もニュー・シェパードと同様に6名が搭乗でき、宇宙旅行のサービス開始表明はヴァージン・ギャラクティックのほうが先だった。1シートあたりの費用はヴァージン・ギャラクティックが25万ドルと表明しており、ニュー・シェパードは非公開だが「それよりも低価格」との見通しがあった。

後発の宇宙旅行サービスとして、より手ごろな価格にする狙いもあったと見られるが、スペースシップ 2の商用運行は大幅に遅れて、FAAによるライセンスの期限となる2022年までずれ込む可能性がある。また、スペースシップ 2が高度約80キロメートルと、「宇宙」の定義をめぐって議論もある高度までの飛行となるが、ニュー・シェパードは高度100キロメートルの「カルマン・ライン」を越えるため、宇宙の定義では異論がない。

Credit: Blue Origin
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こうしたことから、定常的な運行では、ニュー・シェパードの搭乗価格は1シートあたり50万ドルと当初の表明より高額になる予測がある。「宇宙船の中で最も大きな窓を備える」とクルー・カプセルからの眺めのよさも打ち出している。初回の飛行は、記念的な性質が強くジェフ・ベゾス氏が同乗することからより高額となった。落札費用は、ブルー・オリジンが2019年に設立した若者向けの宇宙教育団体「クラブ・フォー・ザ・フューチャー」に寄付される。