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中国の長征5号Bロケット大気圏再突入 米機関も確認

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
Credit: Aerospace corporation

中国の宇宙ステーションの基本部分「天和」を打ち上げた大型ロケット長征5号Bコアステージ(カタログ番号2021-035B)が2021年5月9日11時24分に大気圏に再突入、インド洋に落下したと中国報道各社が伝えた。米軌道物体の追跡サイトも同様の見解を伝えており、詳細な日時と落下海域を確認中だ。

中国新聞網の報道では、5月9日北京時間10時24分(日本時間11時24分)、落下海域は東経72.47度、北緯2.5度のインド洋上となっている。新華社通信もほぼ同様の報道だが、落下海域は東経72.47度、北緯2.65度とのことだ。

米軌道物体の追跡情報を提供しているAerospace corporationは、日本時間5月9日11時21分に「新たなデータが得られないことから、長征5号Bは大気圏再突入したと見られる。これはAerospace corporation、Space-Track.org両機関の最新の予測とも合致している。映像による確認、軌道離脱の情報は得られていないことから、現在未確認であり監視を続けている」とコメントした。

Space-Track.orgは、再突入時刻は5月9日02:14 UTC(日本時間11時14分)と確認されたとコメントした。

長征5号Bコアステージは、打ち上げ時に海上に落下しないという特徴をもった中国の大型ロケット。推進剤を消費した後の質量は20トン以上あると見られ、大気圏再突入時に完全に燃え尽きない可能性もあった。何らかの姿勢、軌道制御を行う制御落下(コントロールドリエントリ)を実施した兆候が見られないため、米軍を始め各機関が懸念を表明していた。

2021年5月9日、NASAのビル・ネルソン新長官は長征5号Bロケットの大気圏再突入にあたり、声明を発表した。責任ある行動はすべての宇宙開発国の義務としながらも、「中国がスペースデブリに関して責任ある基準を満たしていない」と非難した。

“Spacefaring nations must minimize the risks to people and property on Earth of re-entries of space objects and maximize transparency regarding those operations.

“It is clear that China is failing to meet responsible standards regarding their space debris.

“It is critical that China and all spacefaring nations and commercial entities act responsibly and transparently in space to ensure the safety, stability, security, and long-term sustainability of outer space activities.”

「宇宙開発国は、宇宙物体の再突入にあたって地球上の人々と資産へのリスクを最小化し、このような運用を実施する際には最大限の透明性を確保しなければならない。

中国がスペースデブリに関して責任ある基準を満たしていないことは明白である。

中国およびすべての宇宙開発国、営利団体は、宇宙活動の安全性、堅牢性、保障と長期的な持続可能性を確保するために、宇宙で責任と透明性をもって行動することが重要だ」(仮訳)

5月9日NASA長官声明より

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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