月有人着陸を4年延期、火星有人探査は2033年に。米下院、超党派議員がNASA法改正案を提出

ゲートウェイのコンセプト。Credit: NASA

2020年1月24日、「月から火星へ」計画を含む米下院からNASA設置法案の改正案が提出された。共和、民主両党の議員の提案によるもので、現在NASAが目指している2024年の月面有人着陸「アルテミス」計画を4年延期して2028年実施に戻し、月近傍に構築する宇宙ステーションを足がかりに、2033年に火星有人探査を実現する目標だ。火星探査に向けた宇宙服の開発などを見据え、国際宇宙ステーション(ISS)の運用を2028年まで延長する。

National Aeronautics and Space Administration Authorization Act of 2020」法案は、下院の科学技術宇宙小委員会宇宙航空分科会から提出された。法案はNASAが実施する数多くミッションを定義するもので、火星有人探査を最大の目標としている。

現在の月から火星へ計画には、月基地の建設や月の資源の利用などが含まれている。Credit: NASA
現在の月から火星へ計画には、月基地の建設や月の資源の利用などが含まれている。Credit: NASA

現トランプ政権のペンス副大統領が2018年に発表した、NASAによる月面有人着陸計画の2024年実施目標を当初の2028年目標に戻し、月有人探査の役割を火星探査の準備的なものと位置づけた。月近傍を周回する宇宙ステーション「ゲートウェイ」を火星探査の足がかりとし、名称も「ゲートウェイ・トゥ・マーズ」に改める。

火星有人探査までの道程を2段階に分け、準備期間である月探査は「ルナ・プリカーサ・イニシアチブ(LPI)」とする。LPIの期間、月、火星へ宇宙飛行士を運ぶ超大型ロケットSLSの完成を目指す。特に、SLSの4機目から登場する予定の大型第2段EUSの完成を重視している。現在の月探査計画では、月面着陸機を民間ロケットで輸送することも視野に入れているが、法案ではSLSとEUSの組み合わせを用い、国の計画で有人探査を行う場合はSLSが輸送の役割を担うべきとの立場だ。LPIの完了まで、SLSの製造、運用体制を維持するには1年に2回の打ち上げを行うべきとの目標も盛り込まれている。

火星有人探査技術の獲得を「マーズ・イネーブリング・テクノロジー・イニシアチブ(METI)」とする。METIの段階では、火星大気圏への突入、降下、着陸(EDL)技術の開発や放射線安全対策、宇宙船、探査用の宇宙服の開発などを行う。特に宇宙服開発のためにISSを活用し、現在は2024年で予算終了となるISS運用を2028年まで延長すべき、となっている。

現在の月計画と大きく異る点は、月探査の計画の一部を「クリティカルでない」と位置づけたことだ。月基地建設と月面での有人活動、月面の水などを資源として利用するといった活動は火星有人探査のリスク低減にはつながらないとして、「月から火星へ」計画には含めるべきでないとしている。実施する場合には、別の予算を用意するべきだという。

現在、月有人探査計画「アルテミス」では、女性の宇宙飛行士が月面着陸することなどを掲げて2024年を目標に進められている。もともと2028年目標だった目標が4年前倒しにされたもので、急激な予定変更を元に戻すことになる。

また、法案は下院全体で承認されてから上院で審議されるプロセスを経るため、法案提出がただちにNASAの計画変更を意味するわけではない。過去10年以上、火星有人探査が大目標だったとはいえ、その実現方法では小惑星を経由する案などが現れては消えた経緯がある。今回の法案がゲートウェイに対する批判を再燃させる可能性もあると考えられる。