ロシア航空宇宙企業S7スペース、民間宇宙ステーション構想を発表。有人火星探査拠点化を目指す

S7スペースの海上打ち上げプラットフォーム。Credit: S7 SPACE

ロシア格安航空会社大手、S7航空のグループ企業であるS7 Space(S7スペース)は、2018年12月25日に民間宇宙ステーション構想「Orbital cosmodrome(オービタル・コスモドローン)」計画を発表した。宇宙ステーションは将来、有人火星探査の拠点となる計画だという。S7 Spaceは2018年4月に海上打ち上げ企業シーローンチを買収しており、コンセプト動画では海上プラットフォームから民間宇宙ステーションへ向けて宇宙船が打ち上げられている。

S7スペースは、2段式衛星打ち上げロケット“ゼニート”の打ち上げを海上または陸上から行う企業として設立された。ゼニートは1985年に旧ソ連が開発・運用を開始したロケットで、1990年代以降は商用衛星の打ち上げも行われてきた。1995年に米ボーイング、ロシアの宇宙開発企業RSCエネルギアなどが出資、設立した海上プラットフォームから打ち上げを行うシーローンチが運用していた。しかし数回の打ち上げ失敗後、2009年にシーローンチが経営破綻し、2014年以降は打ち上げを行っていなかった。ゼニートはロシアとウクライナが共同で製造していたため、両国の対立によって製造・運用が行われなくなるとの懸念もあった。

2016年末にS7スペースは、シーローンチから海上プラットフォーム「オデッセイ」とその関連施設を買収する計画を発表した。当初は6ヶ月程度で買収を完了する予定であったが、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査などに時間がかかり、手続き完了は2018年4月までずれ込んだ。その間、1年に10~12回を見込んでいた衛星打ち上げを海上から行うことはできず、S7スペースが関わった衛星打ち上げ実績は、2017年末にカザフスタンのバイコヌール宇宙基地からゼニートロケットで打ち上げられたアンゴラの通信衛星Angosat-1(アンゴサット1)にとどまっている。しかしアンゴサット1は打ち上げ後に衛星との通信ができなくなり、機能を喪失している。

バイコヌール宇宙基地から打ち上げられたゼニートロケット。Credit: S7 SPACE
バイコヌール宇宙基地から打ち上げられたゼニートロケット。Credit: S7 SPACE

2018年11月には、S7スペースはオデッセイを改修して再使用型ロケットの打ち上げを行う計画を発表。ロシアが開発中のソユーズ5ロケットを元にソユーズ7 シーローンチ(ソユーズ7SL)を開発するとした。ソユーズ5は2022年に初打ち上げが予定されており、ソユーズ7SLが実現するとしてもそれより後になる。

「軌道上の宇宙基地」を意味するオービタル・コスモドローン構想はS7スペースのFacebookページおよび動画で公開されたもので、地球低軌道の大型の有人宇宙ステーションが描かれている。宇宙ステーションへ向かう宇宙船はシーローンチ海上プラットフォームから打ち上げられ、軌道上で結合されて火星有人探査に向かっている。動画の登場人物が手にしている雑誌によると、宇宙ステーションから火星まで30日で航行できるという。

文書による発表ではないためオービタル・コスモドローン構想の詳細は不明だ。だが、2018年7月に発表された「オービタル・スペースポート」計画と関連する構想であるとすれば、現在の国際宇宙ステーションの一部であるロシアモジュールをベースに発展させるものであるようだ。国際宇宙ステーションは2024年以降は民営化する方向となっており、ロシア企業がロシアモジュールの運用に名乗りを挙げたとも受け取れる。S7は今後、ロシア国内の民間企業に参加を呼びかけていくという。

S7スペースは、ロシアの持つ長い有人宇宙飛行の経験を強調している。とはいえ、今年8月にはISSに接続されていたソユーズ宇宙船に穴が開いていることが発見されており、11月にはISSへ向かうソユーズの打ち上げにも失敗している。近年は衛星打ち上げの失敗が何度も起きており、オービタル・コスモドローンの建造や運用に関わるロケットはまだ実現していない。構想の段階ですべての要素が実現していなければならないわけではないが、S7のコンセプト動画の先に本当に有人火星探査があるのかは心もとない。