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DV被害、追い出し離婚…、共同親権を望む母親たちの声

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
(写真:アフロ)

これまで日本における子どもの連れ去り被害や、共同親権を望む当事者の声は父親がほとんどでした。しかし、実際には母親の側も共同親権を望んでいるのです。特にDVの被害に遭い、しかも親権をとれなかった別居母親たちの声は全く社会には届いていません。

共同親権の説明についてはこちらの記事をご覧ください。

日本でも離婚後の「共同親権」導入を(親子が親子であることを当たり前の社会へ)

今回は、追い出し離婚によって子どもたちと引き離された母親と、DVの被害に遭い子どもたちと一緒に逃げ出した母親について取材しました。

現代にも残る「追い出し離婚」の実態

ジブリさん(仮名・40代)は「追い出し離婚」の被害者です。長男と長女の2人と無理矢理に引き離された後、元夫側から子どもたちに会いたいなら離婚届に署名しろと脅迫を受けました。今現在、子どもたちは徳島県の山間部に住んでいますが、限界集落での生活を余儀なくされています。子どもたちにはアレルギー疾患が判明していましたが、治療も受けられず医療虐待の疑いがあります。今年7月には子どもたちをジブリさんが引き取ることになっていましたが、元義父に妨害され音信不通です。警察にも介入してもらっていますが、向こうの元義父母から跡継ぎが出来たのでジブリさんはもう用済みだと言われています。

ジブリさんは「子どもたちに会えるという期待や希望が踏みにじられてからは、日常生活もまともに送れず涙が止まらない日々が続いています。何とかアレルギー疾患で命を落とす事が無いよう回避して欲しいと願っています。そして、必ず時間が掛かったとしても会えたときには二人の子どもたちを思いきり抱きしめたいです。共同親権であれば子どもたちの意志も尊重されるようになると思いますし、そう願っています。」と涙声で語っていました。

DV被害者が共同親権を望む理由

岡田 茜さん(仮名・40代)はDV被害者で二児の母親です。元夫によるDV被害から逃れるため子どもたちと一緒に警察に保護を求めてシェルターへ避難しました。保護命令1回目の期間中に元夫からの接触(脅迫行為)があり、2回目(延長)を申請して受理されています。判決では面会交流は「無し」となりましたが、離婚成立後に岡田さんの一存で数回子どもたちと面会させていました。

共同親権のことを岡田さんが知ったきっかけは児童福祉施設でのボランティア活動だったといいます。離れて暮らす実両親を恋しがる子どもたちに触れ、子どもの気持ち、親権の在り方について考えたのが始まりでした。あるお子さんに「新しいお家、嫌だ。本当のお父さんの所がいい。先生お願い、連れてって」と言われたときは本当に辛かったし、今でも思い出すと涙が出てくるそうです。

岡田さんは「子どもの連れ去り、虚偽DVという言葉はTwitterの書き込みを見て知りました。まさかこんな悲しみが潜んでいたのかと、かなり衝撃を受けましたね。子どもと引き離された親の悲しみと、親を求めた施設の子どもたちが重なって一気に引き込まれていきました。」と、そのときの想いを語ってくれました。

同じDV被害者からも理解されない悩み

岡田さんはDV被害者の中で「単独親権=同居親=DV被害者」と、「共同親権=別居親=連れ去り被害者」の構図があることに衝撃を受けたと言います。なぜなら、子どもの連れ去り被害者の中にもDVの被害に遭っている母親がいることを知っていたからです。親権を失ったDV被害者や、DVを立証できない被害者を救える手立ては共同親権しかないと考えていました。

「子どもと引き離された親の中にDV被害者がいるのに、なぜ共同親権に反対をしているのか?」と、いつしか岡田さんは共同親権に反対しているDV被害者へ理解を求めるようになりました。しかし、ようやく得た平穏な生活を脅かされる危惧があるのか、なかなか理解は得られない状況が続いています。Twitter上では「DV被害者のくせに」と共同親権を推進している岡田さんを批判する人たちまであらわれました。

共同親権に反対しているDV被害者のほとんどは親権を有する同居親です。係争中の方もいるかもしれませんが、深刻な事態からは脱し、救済された形となっています。その上で共同親権に反対するのはなぜか。岡田さんの目には、自分たちの安全・安心のために親権を失った別居親、DV被害者の犠牲から目を背けているように映っていました。

DVの被害に遭い、しかも親権をとれなかった別居母親たちを救いたい

諸外国の運用を見ると、離婚後共同親権制度には単独親権が含まれています。加害性があるなど、子どもに悪い影響を与える親には監護権は認められず、面会も制限されます。また、親権停止・剥奪と組み合わせれば完全に単独親権状態となります。共同親権が導入されてもDV支援の運用が見直されない限り虚偽DVでの連れ去りは後をたちません。虚偽DVが大きな問題となればシェルター運営に支障をきたし、真正のDV被害者までいわれのない疑いをうける可能性があります。そして付け焼き刃のような運用見直しが行われれば避難・保護の妨げになる可能性もあります。

岡田さんは最後に「同居DV被害者の皆さんも過去のトラウマなどで苦しんでおられると思います。ケアサポートが不十分ですからね。でも優先すべきは今現在、苦しんでおられる方々です。DV被害者を含む別居親のみなさんを救いたいし、子どもたちの尊厳を守りたいと思っています。」と、強い決意を語ってくれました。

法務省は離婚後も父母の両方が親権を持つ「共同親権」の導入の是非について検討する研究会を年内に設置すると発表しました。結論を受けて導入が必要と判断すれば、法相が民法改正を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通しです。ぜひとも、共同親権が実現し、被害者と子どもたちが断絶させられている今の日本の社会を変えて欲しいと願っています。

『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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