政治家に対して直接モノが言える有権者になろう!「ロビイング(政策提言活動)」とは何か?(前半)

ジャーナリスト、フリーライター・編集者の大塚玲子さん

私は政治や選挙をテーマにいろいろ記事を書いています。しかし、私たち市民が政治に関わるうえで選挙だけではなく「ロビイング」も密接に関わってきます。ただ、「ロビイング」や、「ロビイスト」という言葉自体をほとんどの方たちが知らないと思いますので、今回はジャーナリストの大塚玲子さんと一緒に「ロビイング」について説明していきます。

政治家に政策提言することが「ロビイング」

明智 まず、自己紹介をお願いします。

大塚 フリーでライターや編集者をやっております、大塚です。明智さんとは先日、「サイボウズ式」の取材で初めてお会いして、フローレンスさんの就業規則変更の件などについて記事を書かせてもらいました。今日は、よろしくお願いします。

・サイボウズ式の記事はこちら

「LGBTの人、オッケーだよ!」──同性婚や事実婚にも「慶弔休暇」を付与

社会的弱者やマイノリティの声を政治に届けるには?──“草の根ロビイング”の進め方

明智 今、様々なメディアが有権者に対して自民党が提案している法案に賛成か反対か、安倍首相の考えに賛成か反対かという二者択一を迫る報道をしています。しかし、それでは有権者一人一人がそれぞれのテーマに対してどのような意見や考えを持っているかという問いかけが足りないと思っています。

つまり、有権者一人一人が自民党や安倍首相に対して賛成か反対かを考えるだけで終わってしまい、それ以上の想像力を働かせて課題を解決していくことができていないのです。

私としては有権者一人一人が政治に関わるうえで選挙だけではなく、政治家に対して直接モノを言える環境にしたいと考えています。そのような環境を作っていくためには、まずロビイングや、ロビイストについてみなさんに知って欲しいと思っています。

大塚 私もそうですが、いまロビイングに関心をもつ人は増えていますよね。よく「アドボカシー」という言葉も聞きますが、ロビイングとは何が違うんですか?

明智 「アドボカシー」は、社会的弱者やマイノリティなどの権利擁護をするために社会に対して「課題広報」や、「政策提言活動」を行うこと全般をさします。このアドボカシーの中でも、特に「政策提言」にあたる活動をロビイングと呼びます。

大塚 なるほど。日本ではこれらの言葉が少しごっちゃに使われていますが、正確には、アドボカシーのほうが、より広い概念なんですね。もう一つ、いまの説明に出てきた「課題広報」というのはどんなことですか?

明智 「課題広報」については、これまで私が関わってきたLGBTの自殺対策を例にご説明します。まず政治家や官僚に「LGBTの自殺対策やってください」と要望します。これがロビイングです。

そうすると政治家や官僚は「世論が盛り上がらないと動けない」と言います。そこで世論を盛り上げるために「課題広報」を行うことが必要になってきます。私の場合だとメディアと連携したり、SNSを活用したり、Yahoo!ニュースで記事を書いたりですね。それでいくつかの新聞やテレビとかで取り上げられると、政治家や官僚が「そろそろ世論が盛り上がってきたから動かないと」ということで話が進んでいきます。

なので、アドボカシーを進めていくにはロビイングと課題広報はワンセットになるのです。

弱者やマイノリティを守る「草の根ロビイスト」とは

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大塚 なるほど、そういう区分けなんですね。では、いよいよ本題に入りますが、「ロビイスト」って何ですか?

明智 政治に影響を及ぼしたり、法律や条例を変えたり作ったりするために、議員や官僚、行政などに働きかけを行う人、つまりロビー活動をする人のことです。

大塚 明智さんが名乗っている「草の根ロビイスト」とは、どう違うんですか?

明智 これまで日本で行われてきたロビイングは、経団連や日本医師会、農協などの業界団体が「もっと金よこせ」と言って政治家に圧力をかけることがメインでした。また、労働組合も政治運動の一環として政策提言活動を行ってきています。これらの組織は圧力団体と呼ばれ自分たちの利益を図るべくロビイングなどの政治活動を行っています。

さらにこれらの圧力団体は組織内候補を選挙のときに出馬させて自民党や民主党などに送りこみます。これらの組織内候補が当選したら、この議員を中心として圧力団体はロビイングを行っていくことが可能となります。このような組織内候補は参議院選挙の比例代表から出馬することが多いのです。

大塚 つまり、圧力団体はロビイングをするだけではなく、自前で候補者まで出しているということですか?そういう候補者ばかりが当選したら、政治は圧力団体の思うがままになってしまいますね……。

明智 そうですね、圧力団体や参議院選挙の比例代表のことは、また改めて別の記事で対談しましょう。いったん話を元に戻しますね。

その一方で、弱者やマイノリティを守るためのロビイングをやる人がいませんでした。私はNPOやソーシャルビジネスの担い手が事業と結びつけて、弱者やマイノリティを守るロビイングを行うのが良いと考えています。

もともと「草の根ロビイスト」は認定NPO法人フローレンスの駒崎代表が使い始めた言葉でした。圧力団体が行うロビイングと、NPOやソーシャルビジネスが行うロビイングとは目的がぜんぜん異なりますので「草の根ロビイスト」と違う名称を使用しています。

フローレンスでは「ロビイング」と「事業」を車の両輪と考えています。事業だけでもなく、ロビイングだけでもなく、その両方をまわすことによって、社会を変えていけるという発想です。困っている人を減らすためには、事業で対応するだけではなく、困った人を生み出す仕組み自体を変えていかなければなりません。

大塚 「草の根ロビイスト」って、日本に今どのくらいいますか?

明智 日本にはほとんどいないのが現状です。事業に比べると、ロビイングをできる人材というのは、あまりいないみたいですね。

あと、ロビイングは経験によって得るスキルやノウハウが大きいので実際にやってみないとわからないことが多いです。そして、強い想いや信念がないとできません。本音を言うと国会議員や官僚の相手ってとても疲れます。実は国会議員や官僚に会った次の日に寝込むことが何回もありました。

(つづく)

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ジャーナリスト、フリーライター・編集者

大塚玲子

【ブログ】

サイボウズ式記事

東洋経済オンライン連載「善意が生んだ不思議組織 PTAのナゾ」

【プロフィール】

フリーライター&書籍編集者。著書は『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』。都内の編集プロダクションや出版社に勤めたのち、妊娠を機に退社、フリーに。1971年生まれ、東京女子大学文理学部社会学科卒業。

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