2014年3月6日の参院予算委員会において石橋通宏参院議員(民主党)が国際連帯税について、3月17、18日の参院財政金融委員会において川田龍平参院議員(結いの党)が国際連帯税・金融取引税について質問しました。また、通常国会の会期末に近い、6月19日にも川田龍平参院議員が質問しました。

実は、2012年8月に「税制抜本改革法」が成立しましたが、第7条7項で国際連帯税について『国際連帯税について国際的な取組の進展状況を踏まえつつ、検討すること』と記載されています。しかし、委員会での質疑を通して明らかになったことは、政府は外務省を除いてきちんと検討している形跡がなかったことです。

欧州金融取引税は日本と世界の金融取引に多大な影響が及ぶ…

「政府のどこが中心となって検討するのか」という川田龍平参院議員の質問に対し、麻生太郎財務大臣は「それは税務の話になるので財務省であり政府税調であるだろう」と答えました。

欧州では地球規模課題対策の資金ともなる金融取引税の導入が迫っています。「もしこの金融取引税が導入されると日本だけでなく国際的な金融取引に多大な影響が及ぶ」(三井金融庁総括審議官)というのであればなおのこと、国際連帯税(含む金融取引税)の検討を具体的に始めるべきです。国際的な取り組みが進展しているのですから。以上は、3月18日の質問でした。

引き続いて、6月19日の質問では、去る5月5日に開催された日仏首脳会議での国際連帯税に関するオランド大統領と安倍総理とのやり取りを質問。川田龍平参院議員は「私は、この国際連帯税、とりわけ航空券税についての検討というのは半ば国際公約になっていると思います」と政府を追及し、政府の、とりわけ官邸のイニシアティブ発揮を強く求めました。

4月に「国際連帯税創設を求める議員連盟」の総会が開催

国会議員との勉強会(2013年10月)
国会議員との勉強会(2013年10月)

4月23日に「国際連帯税創設を求める議員連盟(会長:衛藤征士郎衆院議員)」の2014年度第1回総会が開催されました。本総会では、新年度の活動方針について話し合われました。また併せてEU11カ国で先行導入の検討が進められている金融取引税(欧州FTT)の最新動向について、横浜市大国際総合科学群教授の上村雄彦先生を招いての勉強会も行われました。

「国際連帯税創設を求める議員連盟」は、我が国において国際連帯税の創設をめざす超党派の国会議員有志が、2008年2月に発足させた議員連盟です。初代会長は津島雄二衆院議員(自民党・当時)、二代目は広中和歌子参院議員(民主党・当時)、三代目は林芳正参院議員(自民党)、四代目は川口順子参院議員(自民党・当時)、そして現在は衛藤征士郎衆院議員(自民党)がそれぞれ務め、協力・連携関係にある民間諸団体とともに今日まで活動を続けています。

金融取引税とは何か?

アフリカ開発会議での国際シンポジウム(2013年5月)
アフリカ開発会議での国際シンポジウム(2013年5月)

金融取引税(FTT:Financial Transaction Tax)とは、通貨、株式、債券、デリバティブ、一次産品などあらゆる金融資産の取引への課税を指します。金融取引税により、株価、為替レート、一次産品価格の乱高下という不安定さが弱められるのみならず、実施国政府に多大な税収をもたらします。

金融取引税は、金融業界はじめ経済界の反対などがあり、実現は難しいと考えられてきました。ところが、2011年9月に欧州委員会はEU加盟各国に対し、欧州金融取引税を2014年1月に導入するEU指令案を提示しました。これは、EU域内居住者である金融機関(またはそれに準ずるファンドや個人)の取引に対し、株式と債券取引に0.1%、デリバティブ取引に0.01%を課すものです。

この税制の目的・特徴について、アルジルダス・セメタ税制担当欧州委員(閣僚級)は次のように発言しています。「(1)FTTは金融セクターの国家財政への妥当な貢献をもたらす、(2)FTTは安定した金融活動をもたらし高リスクな投機を抑制する、(3)FTTは一般市民に負担を求めることなく大幅な税収増をもたらす、(4)この税収は景気対策のみならず、開発や気候変動等の地球規模課題の対応資金とすることができる」(2012年5月欧州議会での演説のまとめ)。

しかし、この提案に英国などが反対し、EU27カ国による一斉の導入が困難になりました。それでドイツ、フランスなどの導入積極グループは、2013年1月22日、「強化された協力」という手続きで11カ国による先行導入を決めました(同年2月14日欧州委員会が11カ国導入に向け正式提案)。以後、英国によるEU法に反するとしての欧州司法裁判所への提訴などで紆余曲折があったものの、2014年中へのFTT導入をめざして11カ国で調整中となっています。

●金融取引税導入予定11カ国

ベルギー、ドイツ、エストニア、ギリシャ、スペイン、フランス、イタリア、オーストリア、ポルトガル、スロベニア、スロバキア

導入予定のFTTの実施内容

導入予定の実施内容について、ロイター通信は以下のように報道しています。

(『〔情報BOX〕EU11カ国で導入する金融取引税のポイント』2013年2月15日)

<対象>

11カ国に「経済的なつながり」がある場合、すべての金融機関によるすべての商品及び市場に関するすべての取引。

<税率>

株式や債券、短期金融資産、レポ取引、証券貸借取引は0.1%。デリバティブ(金融派生商品)取引は0.01%。取引にかかわった各金融機関が支払う。加盟国はこれより高い税率を適用することも可能。

<例外>

クレジットカード、預金、通貨のスポット取引など日常的な金融取引は課税対象とはならない。株式や債券、投資信託ユニットの資金調達を目的とした発行も対象外。

<課税逃れ防止対策>

11カ国内の金融商品に関する取引は、時期や場所を問わず課税されるとの「発行原則」を採用。課税地域からロンドンなど域外へ取引が移ることを阻止することが狙い。

<税収見込み>

年間300億─350億ユーロ

《以上がロイター通信の記事》

課税の目的ですが、基本的に国内財政への寄与ならびに金融規制を挙げていますが、これにグローバル公共財への資金創出が入るかどうかは、今後の協議となります。

11カ国FTTは日本の金融機関にも関係してきます

ところで、課税対象ですが、加盟国の金融機関同士の取引では両金融機関に課税されることはもちろんですが、加盟国の金融機関と取引した非加盟国の金融機関も「加盟国に設立されたものとみなされ課税対象とする」ということが欧州委員会提案に明記されていますので、非加盟国の金融機関も納税をしなければなりません。例えば、(非加盟国である)日本の金融機関が(加盟国の)フランスの金融機関と取引した場合、世界のどこで取引を行ったとしても、日本の金融機関にも課税され、フランスの税当局に納税しなければならない規定となっています。

また、租税回避を防ぐために、同提案では発行主義原則を取っており、加盟国で発行された金融商品に関して加盟国圏外で取引された場合にも課税されることになります。例えば、(非加盟国である)日本の金融機関が(非加盟国である)米国の金融機関との間で、(加盟国の)ドイツの金融機関が発行した株式を取引した場合、日本と米国の金融機関はそれぞれドイツの税当局に納税しなければならないのです。

このように欧州で実施されようとしているFTTは、日本の金融機関や金融市場には無関係どころか、大きく影響してきます。

今後のスケジュールと日本での課題

国際連帯税フォーラム講演会(2013年6月)
国際連帯税フォーラム講演会(2013年6月)

11カ国FTTの導入は、本来2014年1月1日からの予定でしたが、英国の反対の立場からの欧州司法裁判所への提訴などで、大幅に遅れてしまいました。ようやく5月6日、11カ国の財務相が集まり、下記のことを決めました。

1)遅くとも2016年1月1日に導入する

2)金融取引税を漸進的に導入する。まず株と一部のデリバティブ(取引)への課税から始める

3)まだ技術的作業が必要であり、実行可能な解決策を年末までにまとめ上げる

また、導入予定11カ国のうちスロベニアが国内事情で導入を断念しました。ともあれ、複数国によるFTTの共同導入は歴史上初めてのことであり、画期的事業となるでしょう。

一方、日本においてはFTTに関し政府レベルでも金融機関等の民間レベルでもまだ関心が高まっていません。従って、官民挙げて早急にFTTについて検討していくことが求められています。そしてFTTの積極的要素を踏まえ、欧州10カ国と連動しつつ導入を図っていくことが求められています。その要素とは、セメタ欧州委員(閣僚級)の言うように、(1)財政の安定化のために、(2)投機マネーを規制するために、(3)そして世界の貧困や気候変動対策のためのグローバル資金調達のために、です。

※前回の記事はこちらです。

世界中の人々の命と暮らしを守りたい!!「国際連帯税」の取り組みについて解説

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リーディング・グループ専門家ワークショップ「2015年の準備:持続可能な開発と気候変動における革新的資金調達の役割」報告会

国際社会においては開発(貧困)と気候変動について、来年に相次いで重要なイベントが行われ、そこで資金問題も大きな課題となる予定です。すなわち、9月の国連ポスト2015開発アジェンダ(持続可能な開発目標)の策定会議、年末のパリでの国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)です。

こうした動向から、開発のための革新的資金調達に関するリーディング・グループが6月19日、20日とパリにおいて専門家によるワークショップを開催しました。日本からも国際連帯税フォーラムの金子文夫さん(横浜市大名誉教授)が参加しましたが、その報告会を下記の通り行いますので、ぜひご参加ください。

・日 時:7月14日(月)午後5時30分から7時

・会 場:自治労会館2階会議室A

・申込み方法:こちらのアドレス(info@isl-forum.jp)から「報告会に参加希望」とお書きの上お申込み下さい。

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「forumゼミ:デリバティブ取引のabcを学ぼう」(第三回)

これまで主にデリバティブ取引のオプションとスワップを勉強してきましたが、最終回は日本銀行が公表している「BIS(国際決済銀行)関連統計」を読み、デリバティブ取引の全体像を捉えることです。事前に目を通していただくのは、下記のアドレスで。

BIS関連統計⇒ https://www.boj.or.jp/statistics/bis/index.htm/ 

これのうちの以下の1)と2)の統計を見てみます。

1)デリバティブ取引に関する定例市場報告

・「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の解説

・「日本分集計結果」の「データ 2013年12月末」

2)外国為替およびデリバティブに関する中央銀行サーベイ

・「外国為替およびデリバティブに関する中央銀行サーベイ」の解説

・「日本分集計結果」の「データ 2013年6月末残高調査」と「データ 2013年4月中取引高調査」

金融取引税を知るためにもデリバティブ取引の実態を知る必要があります。ご関心のある方はぜひご参加ください。

・日 時:7月24日(木)午後6時30分から8時30分

・会 場:自治労会館2階会議室A

・申込み方法:こちらのアドレス(info@isl-forum.jp)から「forumゼミに参加希望」とお書きの上お申込み下さい。

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●執筆協力

国際連帯税フォーラム

国際連帯税フォーラムは、日本と世界とで国際連帯税導入を求めて、2011年6月に設立された組織です。現在、市民社会の11の団体と、多くの専門家・有識者個人と市民が参加しています。

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