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全国各地から同性愛者やトランスジェンダーが大集結!全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)を開催!!

明智カイト『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事
2014年4月28日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)勉強会

エディ×明智カイト

全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)の呼び掛け人である「レインボープライド愛媛」代表のエディと、「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」共同代表の明智カイトが対談

LGBTとは、レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセクシュアル(B)、トランスジェンダー(T)の頭文字をとった言葉ですが、同性や両性に恋愛・性愛の感情を抱いたり、心身の性別に違和感を感じる人々など、当事者が前向きに表現した性的マイノリティの総称です(※)。

※もっと詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

「セクシュアル・マイノリティ/LGBT基礎知識編」

全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)を立ち上げたきっかけ

「レインボープライド愛媛」代表のエディ氏
「レインボープライド愛媛」代表のエディ氏

明智 全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)の一番初めの発起人はエディさんですが、立ち上げたきっかけはなんですか?

エディ これまで私は愛媛という地方で活動していて、近くに相談し合える人も少なく試行錯誤の中で苦労してきました。年に1、2回でも全国で活動しているアクティビスト同士で集まって、交流会というよりは活動を進める為の勉強会、各取り組みの発表会などが出来たらどれほど心強く、自信になるだろうと思いました。

経験や情報の共有ができたり、活動者同士だからわかる悩みを話せる場が出来ればどうだろうかなと。活動で出てきた課題をみんなで考えていける場を作っていくことによって、更に活動の充実と、日本全国のLGBT運動を力強く推進させていけるネットワークを作れると思いました。とにかく全国のみなさんと実際の活動の仕方や、ノウハウについて話し合える時間が欲しかったんですよ。

明智 今までLGBT活動者で全国規模のネットワークってありませんでしたよね。エディさんの考える「活動者」ってどのようなイメージですか?

エディ LGBTにまつわるテーマの取り組みについて、何らかの行動を起こしている人、起こそうとしている人でしょうか。それは当事者の居場所づくりであったり、社会の理解を進める活動であったりと、いろいろな切り口の活動があると思いますが、小さなことでも実際に行動し挑戦していこうとする人たちです。活動者というのは、ネット上などで当事者からも批判や批評にさらされるものですが、人間そんなに強くはありません。活動家同士が支え合う場が必要ではないか?とも思っていました。

明智くんは何で私の誘いに乗って全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)の呼び掛け人をやる気になったのかな?

明智 私は日本のLGBT運動って世代間とか、地域間でずいぶんな違いがあるなと思っています。たとえばLGBT活動者はみんな「1人社長」みたいな人ばかりで、後輩や仲間を育てるという発想がないんじゃないかなというのが正直な感想です。先人たちがいろいろな取り組みをされてきた中での経験とか反省などが、次世代にきちんと継承されていないのです。横のつながりとして全国的なネットワークも必要だし、縦のつながりとして世代間を結ぶネットワークも必要と思っていたときに、エディさんからお声が掛かって「お、これだ!」と思いましたね(笑)

2014年4月28日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)勉強会
2014年4月28日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)勉強会

エディ 確かに。活動しているとそのことに「いっぱい、いっぱい」なところがありますよね。でも、失敗も成功も話し合える場を作らないと、活動が倒れてしまう例も数多く見てきました。全国を見渡しても東京や大阪などの都市圏に大きなイベントや当事者が集中しています。地方は隠れている人が大半で、このことで仲間を見つけるのも難しくさせます。地方に住んでいるLGBT当事者は、本当に孤立と孤独の中で頼れる先も少なく生活している現状があります。でも当然ながら、地方でも全国の各地域でたくさんの当事者が生活をしているのです。

各地域での経験やノウハウなどの情報共有をする機会を作ることは、これから日本全国でLGBT運動を進めていくうえで大変貴重な場となると思います。また、世代間の交流や、歴史の共有、経験の情報共有も必要とされていますよね。

明智 都市部ではLGBT当事者もたくさんいるし、進学や就職などで地方から若い人がたくさん来ています。カミングアウトをしている人もたくさんいるし、大きなイベントもたくさんありますよね。逆に地方は、表面化するLGBT当事者が少ないし、若い人は都市部に行ってしまう。当然、カミングアウトもできる環境ではないし、大きなイベントを開催する余裕もありませんよね。暮らしている場所によって「住みやすさ」が異なるのは大きな問題だと考えています。「1人で頑張るのはもう無理」から、「みんなで助け合って生きていく」「みんなが生きていけるような法律や制度に変えていく」といった発想が今求められていると思います。

エディ そうです。自分が生まれた故郷を去らなくても、その故郷が住みやすい場になって良いはずなんですよ。地方でも変化が表れ始めたなら、この日本は変わると思います。そのためにも活動の勢いを全国的に増していける後押しが必要だと考えています。

今は全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)の交流会や勉強会をパレードなどに合わて東京と大阪で開催しています。将来的には東京や大阪だけではなく、全国各地で開催できるようにしたいですね。例えばですが、松山でカラフル連絡網の大会をやって全国からLGBT活動者を呼びたい。開催があるために、その地域の力もアップしていく機会にできるでしょう。そのような勢いで地方の広がりもしっかりと進めることで、日本全体のLGBT活動を推進できれば面白いですね。

明智 そうですね、都市部ではLGBTの可視化はある程度進んでいます。これからはLGBTであるために「生きづらさ」「生き難さ」を感じている人たちの存在をきちんと可視化して、ケアや支援をしていく必要があると考えています。私はこれまで学校や職場における「生きづらさ」「生き難さ」を取り上げてきましたが、今後は地方で暮らしているLGBT当事者たちの抱えている政策的課題を可視化して、支援体制を整えていく環境作りをしてきたいと思っています。

2013年の学習会で見えてきたLGBT活動者たちの課題

2013年4月29日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)学習会
2013年4月29日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)学習会

明智 去年はじめたカラフル連絡網ですが、2013年4月29日に第1回目の学習会を開催しました。初めての試みだったにも関わらず日本全国から23団体もの参加がありました。この学習会ではみんなで「困っていること」「悩んでいること」について話し合いましたね。ここでの話し合いから見えてきたLGBT活動者の抱えている課題は何ですか?

エディ LGBT活動者の抱えている課題について、特に気になることを3点挙げたいと思います。

(1)「組織とリーダーシップ」

組織のマネジメントや、人材育成の問題が挙げられます。団体を立ち上げてみたけれど、「どうやって団体を運営して良いのかわからない」「団体内での意思決定が難しい」「後輩の育て方や、引き継ぎをどうしたら良いか悩んでいる」といった内容です。

(2)「ファンドレイジング」

どの団体も運営資金集めに苦労していることが浮き彫りになりました。一般的に資金集めというと会費、事業収入、自治体からの補助金、企業からの助成金、講演料などが考えられますが上手くできていない。

(3)「LGBT支援の輪」の作り方

それぞれの地域の中で同じ想いを共有して一緒に活動してくれるLGBT当事者、もしくは非当事者の協力者をどのようにして増やしていくのか悩んでいることがわかりました。これは「広報」とか「情報発信」の仕方にも関係してくると思いますが、周囲に理解者や協力者を増やすことに苦労や躊躇がある状況が見えてきました。

2013年の学習会で出たLGBT活動者が抱えていた様々な課題を、みんなで知恵や経験を合わせて一つずつ解決していけるよう、勉強会を継続していきたいと考えています。参加者から「困ったときに相談に乗ってくれる仲間がいてくれて心強い」「全国に悩みを共有できる仲間がいてくれて嬉しい」など、LGBT活動者の心の支えとしての期待が想像以上に大きいことも見えてきました。

明智 みなさんが団体の運営方法に困難を感じていることがわかりましたね。2013年に初めて学習会を開催してみてLGBT活動者の中には「全国の仲間と交流会したい」「全国の仲間と勉強会したい」という二つのニーズがあることがわかりました。2013年10月12日には大阪で交流会も開催しました。

2014年は東京で交流会と勉強会を開催

2014年4月26日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)交流会
2014年4月26日に開催した全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)交流会

明智 先日の東京で行われたLGBTパレードに合わせて、交流会と勉強会をそれぞれ開催しました。2014年4月26日に全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)交流会を開催し22団体(計28人)が参加。2014年4月28日には全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)勉強会を開催し31団体(計35人)が参加しました。今回の感想はどうですか?

エディ 今回もたくさんの活動者たちが集まってくれましたね。全国から41団体もの名前が並び圧巻でした。去年より広い場所を用意してもらったのにも関わらず、定員いっぱいで、参加をお断わりすることにもなってしまいました。

今回は4人の取り組み発表を参考にして、参加者同士で積極的な議論を行いました。後半の自由議論では、スタッフ集めや参加者の集め方についてで大いに盛り上がりましたよね。活動者同士ですからみなさん積極的に参加され質問や発言の嵐!毎度ですが、あっという間の充実した時間となりました。交流会の日も、勉強会の日も、その後の飲み会などへとなだれ込んで熱い会話が続きました。

明智 はい、みなさんとても熱かったですね。ここで参加者のみなさんの声をご紹介したいと思います。

・日本中の活動者の、生の声を聴けた。もっと長い時間やってほしい!

・どうしたら国や自治体を動かせるか深く聞きたい

・カラフル連絡網のプラットフォームになるHPを作ろう

・小グループでのディスカッション時間も作りたい

・タイムキープされテンポ良い進行が良かった

・みなさんとつながっていけそうで活動の広がりにワクワクする などなど

参加者のみなさんの興奮が思い起こされます。準備は大変ですが、今年もやれてよかったですね。

賑やかだったパレード会場のカラフル連絡網ブース。2014年4月27日 代々木公園
賑やかだったパレード会場のカラフル連絡網ブース。2014年4月27日 代々木公園

エディ 今回はLGBTパレード(東京レインボーパレード)の会場に、カラフル連絡網のブースを出展しました。各団体が個別にブースを出すのは大変ですが、まとまって出せたことで可能になりました。全国の各団体チラシを置くコーナーを作ったり、販売物のあるところはそれぞれのレインボーグッズなどを販売し、対面ブースも出せたことでパレード参加者との交流ができました。全国の各地域で、いろんなLGBT団体が立ち上がっていることに、来場された皆さんも驚かれていましたよ。このような活動の発信を後押しいただけると、地方での取り組みも大いに勇気づけられると思いました。

明智 次回ですが、2014年10月には大阪で開催を計画しています。活動者の輪も広げ、今後も継続して集まれる場をつくっていきたいですね。

LGBT当事者が日本のどこでも暮らしていける社会に

明智カイト×エディ
明智カイト×エディ

明智 今後の全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)の展望についてはどのように考えていますか?

エディ 全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)を通して、全国の各地域で活動するLGBT活動者の仲間を増やしていきたいです。互いに声を掛け合うことで、LGBT活動の質も向上させていけるだろうし、LGBTの中での相互理解が進められる機会に必ずなると思います。各地域で活動者が立ち上がり、LGBT団体が全国に増えていくといいですね!みんなの経験やノウハウなどを共有することでその勢いを増せないかと思っています。最終的にはLGBT当事者が都市とか地方とか関係なく「日本のどこでも安心して暮らしていける社会」にしたいと考えています。明智くんはどんな展望を考えてますか?

明智 私は「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」で、政党や国会議員に対して要望活動や、政策提言をしています。そこで課題となるのは「正統性」の問題です。例えば、ある国会議員から「あなたの要望は全国のLGBT当事者が望んでいる内容ですか?みなさんできちんと話し合いは済んでいますか?」と尋ねられることがあります。これは私の要望を聞き入れることによって、他のLGBT当事者から「余計なことしないで」という批判や、要望を政党や国会議員が受けることがあるからとのことです。なので、政党や国会議員はそういったステークホルダー(利害関係者)の中での調整ができていない案件には手を出したくないというのが本音のようです。全国LGBT活動者の会(カラフル連絡網)での交流の先には、政策提言の内容について意見集約、合意形成を図っていけるかもしれません。全国で活躍される皆さんの声が集まってくることで、政党や国会議員に対して「これは全国の多くのLGBT当事者が望んでいることです!」と胸を張って要望していけるようになると思っています。

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●エディ

2007年レインボープライド愛媛の設立時より代表。愛媛県松山市1970年生まれのゲイ。愛媛県人権問題研修講師として講演活動も行うなど、当事者の声を届けている。松山市男女共同参画推進センター運営推進委員。松山市人権教育推進協議会理事。

個人ブログ:ゲイリーマンのカミングアウト的思考

レインボープライド愛媛

同性愛や性違和、性同一性障害など性的マイノリティの当事者団体として、四国愛媛の県庁所在地である松山を中心に活動。当事者同士の支えあいや、社会の理解を進めるべく積極的な活動をしている。2010年からは毎年12月に愛媛LGBT映画祭を開催。2013年には中四国初となる常設の当事者支援施設として「えひめLGBTセンター 虹力(にじから)スペース」を開設。年3回地元愛媛のLGBT情報誌を発行し、公民館や支所をはじめ公共施設や市役所ロビーにも配布するなど、出来る可視化を進めている。また、選挙毎には性的マイノリティに関する公開質問を候補者に実施し、政党向けの調査も行い政権党の考えも明らかにしている。地域に根差した活動により、愛媛県や松山市の人権重要課題として性的マイノリティが入るなど、地域に変化が表れ始めている。

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『NPO法人 市民アドボカシー連盟』代表理事

定期的な勉強会の開催などを通して市民セクターのロビイングへの参加促進、ロビイストの認知拡大と地位向上、アドボカシーの体系化を目指して活動している。「いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン」を立ち上げて、「いじめ対策」「自殺対策」などのロビー活動を行ってきた。著書に『誰でもできるロビイング入門 社会を変える技術』(光文社新書)。日本政策学校の講師、NPO法人「ストップいじめ!ナビ」メンバー、などを務めている。

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