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「旧統一教会」名称変更文書不開示は不当 上脇博之神戸学院大学教授が提訴

赤澤竜也作家 編集者
訴訟提起のため大阪地裁に入る上脇博之教授と弁護団(筆者撮影)

2015年6月、世界基督教統一神霊教会(旧統一教会)が世界平和統一家庭連合へ名称変更することを文部科学省に申請し、同年8月に下村博文文部科学大臣(当時)が認証した過程の記された文書が開示されないのは不当だとして、神戸学院大学の上脇博之教授が15日、国に不開示決定の取り消しを求める訴えを大阪地方裁判所に起こした。

上脇氏は昨年8月と10月の二度にわたり文部科学省に対し、旧統一教会が名称変更を申請した時の一切の書類、文部科学大臣が名称変更を認証した時の一切の書類、旧統一教会が名称変更の申請を受理しなければ違法である旨主張した文書(当該文書がない場合は応接録)、文科省が名称変更を認証するに至った協議検討の文書などの開示請求を行った。

宗教法人法は、名称を変更するには会社の定款にあたる「規則」の変更を所轄庁に届けるように定めている。開示された「規則変更認証の決裁文書」では、旧統一教会が規則を変更した理由が黒塗りされており、添付されていた旧統一教会の役員会議事録および評議員会議事録については、文書名以外はすべて黒塗りが施されていた。訴状において原告は国が挙げる非開示事由に該当しないことは明らかであるとしている。

門前払いだった名称変更。なぜ突如、認証されるに至ったのか。

1980~90年代にかけて霊感商法や合同結婚式で多く被害者を出し、損害賠償請求を認める判決も出されるに至った旧統一教会は1997年以降、文化庁に対し複数回にわたって名称変更の相談をする。しかし、「組織の実態が変わっていない」という理由で申請は受理されてこなかった。ところが第2次安倍政権下である2015年8月、突如認証されるに至っている。1997年当時の文化庁宗務課長で規則変更認証時は文科審議官だった前川喜平氏は「下村博文文科相(当時)からの圧力があった可能性が十分にある」と推測している。(2020年7月28日日刊ゲンダイDIGITAL、前川氏に対する野党合同ヒアリングなど)。原告弁護団の阪口徳雄弁護士と筆者も前川氏より直接同様の話を伺った。ただし、現時点で確たる証拠があるわけではない。

1997年より旧統一教会側から申請させないよう文化庁宗務課が対応してきたにもかかわらず、なぜ2015年になって認めるという決定をしたのか。教会側の弁護士が裁判に訴えると宗務課にプレッシャーを掛けていたのか。政治の圧力があったのか。肝心な部分はなにも明らかになっていない。

安倍首相を銃撃した山上徹也被告は犯行動機に自らの家庭を崩壊に至らしめた旧統一教会を挙げ、「安倍氏がこの団体を国内で広めたと思って恨んでいた」などと供述した。その後、自民党と旧統一教会との根強い癒着が報道されるに至っている。

訴訟を提起した上脇教授は、

「名称変更は旧統一教会を救い、被害が拡大するキッカケとなりました。政府が加担してしまっていたんです。そのときの行政文書がまったく出て来ていない。本来は説明責任があるはずです。なんとかこじ開けて真相究明につなげたいと思っています」

と語る。

多額献金など数々の社会的な問題を引き起こしていたため、名称変更が認められてこなかった旧統一教会。突如、認証されるに至った背景になにがあったのか。裁判の行方が注目される。

作家 編集者

大阪府出身。慶應義塾大学文学部卒業後、公益法人勤務、進学塾講師、信用金庫営業マン、飲食店経営、トラック運転手、週刊誌記者などに従事。著書としてノンフィクションに「国策不捜査『森友事件』の全貌」(文藝春秋・籠池泰典氏との共著)「銀行員だった父と偽装請負だった僕」(ダイヤモンド社)、「内川家。」(飛鳥新社)、「サッカー日本代表の少年時代」(PHP研究所・共著)、小説では「吹部!」「白球ガールズ」「まぁちんぐ! 吹部!#2」(KADOKAWA)など。編集者として山岸忍氏の「負けへんで! 東証一部上場企業社長VS地検特捜部」(文藝春秋)の企画・構成を担当。日本文藝家協会会員。

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