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ウインブルドン:好きになってきた芝で、創造性溢れるプレー全開!センターコートで快勝し錦織圭3回戦へ

内田暁フリーランスライター
(写真:アフロ)

■男子シングルス2回戦 錦織6-4, 6-4, 6-0 C・ノーリー■

 高く弾むボールめがけて跳ね上がり、振りかぶったフォアで豪華に“エアK”を叩き込む……かに思われた次の瞬間、小さく振り下ろしたラケットが、ネット際に柔らかなボールを落とす――。

 客席から感嘆の溜息と賞賛の拍手が沸き起こるなか、主審が告げる「セカンドセット、ニシコリ」の声。誰もがある種の緊張と心の高揚を覚えるウインブルドンのセンターコートで、錦織は相手を手球にとり、テニスそのものを楽しんでいるようでした。

 2回戦の対戦相手のノーリーとは、これが初めての顔合わせ。アメリカの大学で力をつけたサウスポーの英国人は、芝では……特にウインブルドンでは、危険な存在になりえたでしょう。それでも、「練習は何度もしてきた」相手のプレーは、錦織の頭に入っていたと言います。試合立ち上がりこそ、アドレナリン全開でボールに食らいつく挑戦者の気迫に「思っていたよりも良いな」との印象を抱きますが、「続かないだろう」と冷静に見極めてもいました。第6ゲームで先にブレークを許すも、直後のゲームを、相手のダブルフォールトにも乗じブレークバック。初戦後に課題にあげた「前に出る」姿勢も貫いて、第1セットを先取しました。

 第2セットに入ると錦織が睨んだ通り、ノーリーのプレーに荒さが目立ち始めます。対して、サービスとストロークに安定感を増した錦織は、試合が進むにつれ遊び心や創造性に満ちたプレーを披露。第3セットに入った頃には、大きくリードしたスコアも心の余裕の一助となり、「ミスなくプレーできそうだ」との手応えを感じるまでになっていました。きれいに刈り込まれたセンターコートの芝の上を、フォアの強打が鋭く滑り、ドロップショットが小さく跳ねます。「攻める姿勢を常に持っていた」錦織が、最後まで疾走の足を緩めることなく、第3セットは6-0の電車道。観る者をも楽しませる圧巻のプレーに、本来アウェーであるはずのセンターコートから、勝者を讃える大きな拍手が沸き起こりました。

 芝には長く苦手意識を抱いてきた錦織ですが、11のウインブルドン出場回数はグランドスラムの中で最多。センターコートの雰囲気も、会場が誇る150年の伝統と格式にも、「何度もやってきているし、年齢も年齢で色々経験しているので慣れている」と言います。ロッカールームからセンターコートに続く通路を歩く時には、「ここならではの雰囲気」に心がざわめきますが、いざ試合が始まれば、そこが“聖地”と呼ばれる場所であることなど、全く意識しなかったほど。

 芝でのテニスを楽しみながら、一つのセットを落とすことなく、3回戦へと進出です。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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