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危機をしのぎ「博打のような読み合い」制した錦織圭。勝機を引き寄せた、新ルールへの“解釈力”

内田暁フリーランスライター
(写真:Shutterstock/アフロ)

■全豪オープン2回戦 錦織 63、76(6)、57、57、76(7) I・カルロビッチ■

 センターを捕らえたサービスは、スライスで返そうとした相手のラケットを弾くと、地面を叩き跳ね上がった。

 その瞬間、錦織は崩れ落ちるようにヒザを折り、両手を地面へと付きます。しばらくその姿勢のまま勝利の味を噛み締めた後、紅潮した顔を向けた先には、歓喜に沸くファミリーボックスが。

「今日は勝ちきったというか、自分から取ったスーパータイブレークだった。負けるタイミングが2~3回あったのを防いで挽回して、最後まで気持ちを切らさずプレーできたのは、自分の中でうれしかった」

 試合を振り返る表情にも、達成感と喜びの色が浮かびます。試合時間3時間48分。最終スコアは63、76(6)、57、57、76(7)。ビッグサーバーのカルロビッチとの「博打のような読み合い」を制し、錦織が3回戦へと歩みを進めました。

 相手のカルロビッチは、前哨戦のインド大会で決勝に勝ちあがるなど、上り調子で今大会を迎えたビッグサーバー。39歳にしてなお成果を上げるその訳は、この日の試合でも3セット以降に顕になります。

「確実に(サーブの)コースを変えられ、読みが当たらなくなった」と錦織。さらには以前に対戦した時より、「ボレーが上手くなっている」とも感じたと言います。加えて錦織戦でのカロルビッチは、セカンドサーブでも最速208キロを叩き出すほど、リスクを負って攻めてきました。

 ブレークポイントをつかめぬまま、一瞬のチャンスに懸けたカルロビッチに奪われた第3セット。第4セットも似た展開で落とすと、第5セットでもゲームカウント4-4からのサービスゲームで、3連続ブレークポイントの危機に瀕します。このセットも錦織にブレークポイントが無かったことを思えば、事実上のマッチポイントでした。

 錦織はこの時、敗北を受け入れたことを認めます。その上で「ファーストサービスが入ってくれれば、可能性がある」と気持ちを引き締め、勝機を探り続けました。果たしてそこから3本連続でファーストを入れ、しのぎきったマッチポイント。最後もサービスから主導権を握るとストローク戦で打ち勝ち、絶体絶命の窮地を切り抜けてみせました。

 そうしてなだれ込んだ、今季から導入された最終セットの10ポイントタイブレーク――。

 多くの選手にとってまだ肌に馴染まぬこのルールを、錦織は「自分に有利だ」と捉えたと言います。

「リターンで、どっかで返せば……7点より、若干だが可能性が出てくる」

 そう信じていたからこそ、リードされた相手サービスの場面でも、2連続で鋭いリターンを返せたのでしょう。前出の「自分から取った」の言葉の真意は、きっとここにあるはずです。

 

 この日の勝利を「良い戦い」と喜ぶと同時に、より調子を上げるためにも「もっとストローク戦をしたい」という錦織。

 その願い通り、次の相手はストローカーのジョアン・ソウザ。ここまで難しいドローでしたが、そこを切り抜けた第8シードに、良い風が吹いてきたかもしれません。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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