Yahoo!ニュース

全豪OPレポート:理性と本能を両立させ大坂なおみが3回戦へ 初の4回戦目指し地元選手との大一番に挑む

内田暁フリーランスライター
(写真:Shutterstock/アフロ)

女子シングルス2回戦 ○大坂なおみ 7-6, 6-2 E・ベスニナ[16]

 ミスが少なく、ダブルスの名手らしくあらゆるプレーを器用にこなし、場数も豊富な試合巧者――。2回戦の対戦相手のベスニナは、大坂がやや苦手とするタイプのプレーヤーだと言えるでしょう。そしてだからこそ、現在大坂が取り組んでいる「プレーの安定感」や「精神面の強さ」を試すうえでの、格好の試金石でもありました。

「彼女はバックハンドが強いし、プレーが安定していることで有名な選手。だから私もミスを減らし、チャンスが来れば攻めるというのを考えていた」

 戦前に抱いていたプランを、大坂は明かします。サービスのコースも相手のフォアを丁寧に突き、打ちたい本能を抑えての理性のテニス。第1セットはリードしながら追いつかれ、突き放されそうになりながらも食らいつき、粘り強くタイブレークへと持ち込みました。

 そのタイブレークの2-3とリードされた場面で、後に大坂が「ターニングポイント」に挙げるシーンが訪れます。大坂のバックのリターンはネットの白帯を叩くも、その威力が功を奏したか相手コートにポトリと落ちる。両手を掲げて相手に詫びながらも、大坂は「この幸運を生かすためにも、集中力を上げなくては」と自身に言い聞かせました。

 そしてサービスラインに立った大坂は、この重要な局面で「インスティンクト(本能・直観)」に身を委ねます。それまでは相手のフォアを狙っていた大坂が、まずはアドサイドからワイドへ183km/hのエース。さらにはデュースサイドからも、187km/hの高速サービスをセンターにピンポイントで叩きつけます。いずれも相手のバックサイドに鋭く刺さる、リターンの名手が一歩も動けぬエース。相手の心を揺さぶり、スタンドを沸かせたこの2発を機に主導権をもぎ取った大坂が、第2セットでも第3ゲームを5ポイント連取でブレークし、そのままゴールラインまで走り切りました。

 理性と本能をブレンドし、ターニングポイントを逃さぬ勝者の資質も発揮して3回戦へ駆け上がった大坂の、次の相手はオーストラリアのアシュリー・バーティー。メインスタジアムに組まれたこの一戦では、相手への大声援が戦いが予想されます。しかしそのアウェーの状況をも、大坂は心待ちにしている様子。

「大きなスタジアムでプレーするのは、子どもの頃からの夢。緊張はしないし、楽しみしかない」

 来たる大舞台での戦いに胸を高鳴らせ、「まだ満足感は全くない」と闘争心をたぎらせながら、過去5度跳ね返されてきた、グランドスラム3回戦の壁を打ち破りに行きます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日テニスの最新情報を掲載中

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事