Yahoo!ニュース

全豪OPレポート:昨年ベスト4の 穂積/加藤、初心に帰った積極プレーで天敵に快勝

内田暁フリーランスライター

ダブルス1回戦:穂積絵莉/加藤未唯 6-3, 7-5 M・アダムチャク/S・サンダース

 勝利の瞬間、2人はコート上で飛び跳ね、固くハグを交わします。

「1回戦で勝っただけなのに、あんなに喜んじゃって……」

 そう言い2人揃って浮かべる少し照れたような笑みが、この勝利の大きさを物語るようでした。

 昨年の全豪オープンでベスト4進出の快進撃を見せた穂積/加藤の、初戦の相手は地元オーストラリアペア。完全にアウェーの状況ですが、それ以上に大きいのは、昨年の2度の対戦でいずれも持ち味を出せず敗れていたことでしょう。

「なんで、よりによってここで当たるの……」

 ドローを見た時は2人とも、苦い思い出が胸をよぎったと認めます。

 しかしその敗戦の経験が、試合に挑む日本ペアの戦略と覚悟を、明確かつ強固にしていました。

「相手にやられる前に、こっちから仕掛けていこうと思っていて。緊張した場面でやるよりも、早い段階で色んなボールを打って、相手にこちらのプレーを特定されないようにしようと思っていました」

 加藤が戦略を明かせば、穂積も「今日は自分たちが積極的に打っていったので、相手のポジションも引いていた。過去2回の対戦とは逆の気持ちになっていたと思います」と、試合序盤から策の奏功を感じていたと言います。過去の対戦では手を焼いたアダムチャクのボレーを時にパワーで崩し、リターンのポジションも状況に応じて変えながら、相手のサービスにプレッシャーをかけていく。冷静さと熱い気持ちを両輪とし、アウェーでつかみ取った快勝でした。

 昨年終盤でやや勝ち星に見放された時期、穂積と加藤は「全豪の時のような勢いや思い切りを取り戻したい」と声を揃えていました。今や上位進出が普通のことになってきた2人が、思い出の地での初戦突破で見せた初々しい歓喜の姿……それは彼女たちが欲していた、初心と勢いを取り戻す好機となったかもしれません。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事