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錦織圭、我慢のテニスでベスト16進出 208cmの超ビッグサーバーとの対戦へ:BNPパリバOPレポ

内田暁フリーランスライター

○錦織圭 76(6) 76(5) S・ジョンソン

過去の対戦成績は3勝無敗。誕生日が僅か5日違いのスティーブ・ジョンソンには負けなしではありますが、その内容はいつも接戦。この日の試合も同様に、一進一退の攻防となりました。

第1セットの主導権を握ったのは、第2ゲームで早々にブレークしたジョンソン。時速215kmを計測する相手の高速サービスと、スライスやネットプレーにリズムを崩され、錦織はなかなか思うように攻められません。特に苦しめられたのが、バックから放たれる低く滑るスライス。「ボールが重いので、持ち上げて打つのも、いつもと少し違う感覚」というのが、その最たる理由でしょう。また、ボールが良く飛ぶこの大会の環境では「フラットで打つと直ぐにアウトになってしまう」こともあり、打球の制御に苦しみました。

錦織の過去のこの大会での戦いを振り返ると、バックのスライスとネットプレーを織り交ぜるタイプの選手に、苦しめられてきた歴史があります。昨年のF・ロペス、さらに一昨年のT・ハース――いずれの試合も強風のなかスライスでじっくり攻められ、焦れたようにミスを重ねた敗戦でした。

だからこそジョンソン戦の錦織は、「我慢」を自らに強います。攻め急がずにボールを左右に散らし、ミスをしても気持ちを落ち着けるように大きく息を吐き出し、次のプレーに集中します。第1セット4-5とリードされて迎えた相手ゲームでは、30-0からエースを決められたかと思われましたが、“チャレンジ”成功でリプレイに。するとこの機を逃さんとばかりに、リターンからプレッシャーをかけブレークバックに成功します。なだれ込んだタイブレークでは、ダブルフォールトもあり2-6まで追い込まれるも、「半分諦めていたので、落としてもいいやくらい」に気持ちを振り切り、逆に相手には硬さが目立つように。第1セットは、総ポイント数で2本勝った錦織が逆転で奪いました。

第2セットに入っても、我慢のテニスは続きます。4-3からブレークし抜け出すも、続くゲームではフォアがラインを割る場面が目立ち、相手に許したブレークバック。このセットも再びタイブレークにもつれ込みますが、序盤に飛びだした、この日ほぼ唯一のクリーンなリターンウイナーが一つの流れを作ります。

30度を超す炎天下のなか、ストレート勝利にも関わらず1時間56分を要したロングマッチ――過去2大会の悔いを振り切るような、まさに我慢の勝利でした。

ベスト16進出は、昨年に続く同大会最高成績タイ。その先へと続く道に立ちはだかるのは、文字通りの大きな壁。身長208cmの、“ビッグ・ジョン”ことジョン・イズナーです。過去の対戦成績は1勝1敗。初対戦は1年前のマイアミで、その時は相手のサービスと強打に圧倒され敗戦。再戦は4カ月後のワシントン大会決勝で、この大一番をフルセットで制してリベンジを果たしました。

さて……錦織を応援する人たちにとっては、少々耳の痛い情報があります。

多くの選手が苦手とするここインディアンウェルズのサーフェスとコンディションですが、イズナーは「僕にとっては、これ以上望むべくもない、パーフェクトなサーフェスだ」と断言します。「ボールは速く飛ぶし、なおかつバウンド後は球速が落ちて、高く弾む」。おかげで「僕のような長身の選手にも、アタックするための時間的余裕が生まれる」という訳です。

その言葉を証明するかのように、3回戦のマナリーノ戦のイズナーは、サービスゲームで4ポイントしか落とさぬ驚異の数字を叩きだしました。ファーストサービスでのポイント獲得率は、実に100%です……。

チーム・ケイの面々。右からチャンコーチ、中尾トレーナー、ボッティーニコーチ
チーム・ケイの面々。右からチャンコーチ、中尾トレーナー、ボッティーニコーチ

このイズナーの試合を、錦織の2人のコーチ、マイケル・チャンとダンテ・ボッティーニは並んでモニター観戦していました。

「今日のジョンソン戦もそうだったように、圭がこのコートで最も苦しんでいるのがキックサービスの処理。高く跳ねるから、リターンのタイミングがどうも合わないんだ……」

険しい表情のチャンに「ではイズナー戦も、セカンドサービスの対処が鍵になりますね?」と聞くと、「だから僕らは、この試合を見ているんだよ」とモニターを指さし笑顔を見せます。

ここまで「我慢のテニス」を貫いてきた錦織が、相手の土俵とも言えるコートで、超巨大なビッグサーバーにどう立ち向かうのか? そして“チーム・ケイ”はどのようにイズナーを分析し、いかなる戦術を用意するのか――? 

厳しい戦い……しかしだからこそ、見どころに満ちた楽しみな一戦になります。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookから転載。連日テニスの最新情報を掲載しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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