アメリカ最古のテニス大会…!? 閑静な街シンシナティのマスターズ大会が大盛況な理由

シンシナティに来ています。

もちろん、テニスのマスターズ大会「Western & southern Open」を取材するためです。

多くの方がご存じかとは思いますが、錦織選手は臀部の負傷のため、ここにはいません。

予選に参戦した日本人選手も、一人として本戦にたどり着くことはできませんでした。

それでも、全然さびしくはありません!

なぜならこんな時ほど、じっくり腰を据えて現在のテニス情勢を把握し、選手たちを取材するチャンスだからです!!

そんな前置きはさておき(負け惜しみではありません)、この大会に来るたびに驚き、感動することがあります。

素晴らしい大会なのです。

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実はアメリカでも、テニスに関心のない人たちに「シンシナティに行く」と言うと、一様に「Why?」と聞かれます。

もちろん彼らに悪気があるわけではなく、それは単純に、この街が観光都市ではないからでしょう。

しかも大会会場の“リンドナー・ファミリー・テニスセンター”は、地元の人たちですら「middle of nowhere」(日本語でいえば「陸の孤島」という感じでしょうか…)と表現するようなロケーション。ダウンタウンから約40キロ離れた郊外で、車がなくては、来ることはまず不可能です。

それにもかかわらず、この大会は昨年も約1週間の期間中に19万1752人もの観客を動員し、今年も火曜日の時点ですでに、1日あたり2万5998人の最多観客動員を記録しました。ちなみにシンシナティの人口は、29万7517人(2013年)。もちろん市外からも多くのファンが詰めかけてはいますが、この街がいかにテニスを愛しているかが伺い知れる数字ではあります。

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市民がこの大会を愛しているのは当然と言えば当然で、それは歴史にも裏打ちされています。

古くは“シンシナティ・オープン”と呼ばれた同大会が初めて開催されたのは、なんと1899年のこと。大会史をつづるガイドブックには「アメリカで最古と“言うこともできる”トーナメント」と記されています。

「言うこともできる」の一文が付随する理由は、「1881年から開催」の歴史を謳うUSオープンがあるから。ただ第1回全米オープンが開催されたのは、現在のニューヨークではなく、ニューポート市のカジノ場。対してシンシナティ・オープンは、会場の変更こそあるも、117年に及ぶ歴史の全大会をシンシナティ市内で開催してきました。ここにシンシナティの人々が、「我らの大会こそが全米最古」を主張する道理があります。

ちなみにシンシナティ・オープンの創始者は、旅行でニューポートに出かけた際に、いわゆる“全米オープン”を観戦して大いに感激し、地元でも同様の大会を開こうと思ったそう。つまりはシンシナティ・オープンは、全米オープンの姉妹大会と呼べるかもしれません。

そんな長き歴史を誇る同大会の現会場であるリンドナー・ファミリー・テニスセンターは、1万1400人を収容するメインスタジアムを含む、4つのテニス専用常設スタジアムを揃えています。北米で4つ以上のスタジアムを備える会場は、全米オープンとここだけだそうです。

施設および大会を運営するのは“テニス・フォー・チャリティ”と呼ばれるNPO。大会スタッフは基本的に全員ボランティアで、その数は1217人。ボールキッズも170名に到りますが、これは例年より少ない数。なぜなら今年は、大会時期が約1週間後ろ倒しになったため、多くの学校はすでに新学期が始まっているからです。

それらボランティアやボールキッズの多くは自身もテニスをたしなむ人が多いそうで、この街では、テニスが観るスポーツとしてもやるスポーツとしても人気があることが伺えます。

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それだけのテニス熱が感得できる環境で連日プレーするからか、プレーヤーたちのモチベーションも高い模様。今年の全米を最後に引退を表明しているフィッシュは、2回戦でマリー相手に大健闘し「信じられない程に良いプレーができている」と自分でも驚きを隠せません。若手のコリッチやベテランのカルロビッチが熱い試合でファンを沸かせれば、ジョコビッチやマリーは剣が峰で踏ん張り、流石の実力と意地を見せつけました。トロントをスキップしフレッシュなフェデラーが狙うは、7度目の戴冠。その一方でここは、ジョコビッチが手にしていない唯一のマスターズでもあります。

初優勝に燃えるジョコビッチは、準々決勝ではバブリンカを6-4、6-1のスコアで退け「今週で最も良いプレーが、僕の最大のライバルの一人であり、直近の対戦で負けた選手相手にできた」と目に光を湛えます。

連覇を狙うフェデラーも、3回戦で豪快なジャンピングスマッシュを叩き込むなど、強いのみならず魅せるプレーでスタジアムを沸かせました。

楽しみは、尽きません。

……重ねがさね、負け惜しみではありません。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。こちらのページでは、連日テニスの最新情報が掲載されています。