健康経営から迫る企業の挑戦:生涯現役社会を目指した投資。社会保障負担が高まるなかで企業の模索も続く。

(写真:アフロ)

 加速する高齢化と若年層の減少。急速に進む人口構造の変化が辿りつく先にある社会保障費増加による財政圧迫。そして労働力減少が招く経済活動の低迷。その打開策として、だれしもが健康で長生きができる「生涯現役社会」の構築が目指されている。「いかにして健康で働き続けていくか。」その課題に対して、大企業や中小企業の間で、広がりを見せる健康経営。この取り組みも、民間企業から発信されている「生涯現役社会」の再構築。健康経営を実施することで、将来の収益性の向上を狙った企業の健康投資。その長期ビジョンには、従業員に健康保持・増進を促すことで、従業員の活力の向上とともに生産性の向上に繋げ、いずれは業績向上や組織の価値向上が期待されている。

 

 実際にその効果は、どのように概算されているのだろうか。たとえば経済産業省が取り上げているジョンソアンドジョンソン(J&J)の健康経営。図で示すように、J&Jは世界にグループ会社は250社の従業員11万4,000人を抱えている。従業員に対して、健康教育プログラムを提供したところ、そのリターンとして投資1ドルに対するリターンが3ドルになると調査結果を報告している。

図 健康投資と健康収益

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経済産業省「経済産業省におけるヘルスケア産業政策について」より抜粋

 このように健康経営は、様々な形で広がってきている。そのきっかけとなったのが、2015年から始まった「健康経営銘柄」選定である。各企業に対して健康経営度調査が行われ、業界別に健康経営を実施している企業が選ばれる。たとえば、建設業では住友林業、銀行業にはみずほフィナンシャルグループが2018年の選定企業として挙げられている。また2018年には、「健康経営優良法人」の認定証の授与式も開催された。初年度の受賞法人には、大企業の235法人と中小企業の318法人が認定された。この表彰制度を推進することで、健康経営に取り組む法人の「見える化」を図り、健康経営が社会的に評価を受けることができるように環境の整備が進められてきた。

 さらに近年では、企業の健康増進の取り組みに対して、インセンティブなどが付与されてきている。たとえば、自治体が行う公共工事や入札審査に加点がなされる公共調達加点評価もあれば、自治体、金融機関ならびに民間保険などで実施されている融資優遇や保険料の減額や免除などがある。具体的には2016年12月から行われている池田泉州銀行の人財活躍応援融資“輝きひろがる”。これは「健康経営優良法人」の認定を受けた企業には銀行の所定金利より一律年▲0.1%の融資を行っている。また住友生命保険相互会社が行う団体3大疾病保障保険「ホスピスA(エース)」も「健康経営優良法人」に対して健康経営割引プランを適用し、保険料2%の割引を2018年4月より実施したばかりである。

  

 加速する高齢化と若年層の減少といった人口構造の変化が辿りつく先。今ある経済社会構造であり続けた場合に、われわれは社会保障費増加による財政圧迫と労働力減少が招く経済活動の低迷に直面するだろう。その打開策として、だれしもが健康で長生きができる「生涯現役社会」の構築は、時置かずして取り組まなくてはならない課題であろう。