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北欧の安全保障政策の中核をなすウクライナ支援 北欧5か国、継続支援を共同声明

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ゼレンスキー大統領と北欧5か国の首脳・大統領(写真:ロイター/アフロ)

「ゼレンスキー大統領がサプライズ訪問」という報道が13日にノルウェーを駆け巡った。12日にワシントンでバイデン米大統領や議員らと会談した後の突然の訪問だった。

ノルウェーには北欧サミットのために北欧5か国の首脳や大統領が集まっており、ゼレンスキー大統領と面会したノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、アイスランドの北欧5か国のリーダーはウクライナ支援を継続することを強調した。

「北欧5か国」が連携して支援するという共同声明で、共同記者会見では「北欧サポート」が全面的に打ち出された。

会談には、ノルウェーのヨナス・ストーレ首相、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領、アイスランドのカトリーン・ヤコブスドッティル首相、デンマークのメッテ・フレデリクセン首相、スウェーデンのウルフ・クリスターソン首相が出席。

ノルウェー国会で特別に演説

演説をするゼレンスキー大統領 ノルウェー国会提供写真
演説をするゼレンスキー大統領 ノルウェー国会提供写真

ゼレンスキー大統領はノルウェー国王とも会談をし、ノルウェー国会では国会議員らを前に演説し、ウクライナへの支援を感謝した。

第二次世界大戦後、外国からの賓客がノルウェー国会で国会議員や政府関係者に演説を許可されたのは3回のみ。最初は1948年の英国の政治家ウィンストン・チャーチル、最後は昨年ゼレンスキー大統領がビデオ演説したときだ。これはウクライナがノルウェーの国会議員らにとっていかに重要な存在かを象徴している。

ノルウェー国会のスード・ガラハニ国会議長は、ウクライナの戦いは「ヨーロッパの民主主義の未来に関わる」と、支援をやめてはならないと演説した。

ノルウェーからは国内総生産の1.7%に相当する支援が約束されており、現在それを上回る支援を行っている国はないとノルウェー公共局NRK公共局は報道している。

ノルウェーは30億ノルウェークローネの民間支援をするとともに、今後4年間でウクライナに750億ノルウェークローネを提供する予定。デンマークは約75億デンマーク・クローネに相当するウクライナ・パッケージをデンマーク議会に提出する予定。スウェーデン政府も数日中にウクライナへの新たな支援策を発表すると発表。

ウクライナ支援は北欧の安全保障政策の中核をなす

米国からの援助が取り消されるのかどうかが心配されている中、北欧諸国からの支援はウクライナにとって貴重な命綱となる。ロシアと国境を接するフィンランドを始め、ロシアとの地理的距離が近く緊張関係が続いていた北欧諸国にとって、ウクライナの戦いは自国の防衛にも密接に関係する問題だ。

ロシアのウクライナ侵攻以降、フィンランドとスウェーデンはNATO加盟申請をするなど、北欧諸国には大きな影響を与えている。北欧諸国は「小国」だからこそ、結束して危機を乗り越えようとする考え方が特に色濃く表れる国々だ。今回の「北欧サポート」はまさに北欧ならではの安全保障戦略といえる。

記者たちからは「他の欧州諸国からの支援の影り」について聞かれ、「ウクライナが北欧諸国から支援こそが、他の欧州諸国からも必要な支援」とゼレンスキー大統領は回答した。また、ロシアに対して各国が圧力を継続していくことの重要性も訴えた。

ゼレンスキー大統領が支援継続のために各国を訪問する中、「疲労が顔に現れている」こともノルウェー現地メディアは強調して報道した。

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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