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あなたの影響力を使おう、環境のためにできること 北欧ノルウェーからのヒント

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
サウナ施設があるオスロのフィヨルド開発地区の会場SALTにて

ノルウェーでは毎年、数週間に及ぶ大規模な気候フェス「Klimafestivalen 112」が開催されています。2020年は1月11日~2月2日まで、気候変動や環境に関連するイベントが全国各地で盛り上がります。

子どもから大人まで楽しめる無料イベントでは、地球に負荷が少ない暮らしはどのように可能か、たくさんのアイデアやインスピレーションを受けることができます。

18日には首都オスロのフィヨルド沿いエリアで気候フェスがありました。

プラスチックのゴミで作った恐竜 Photo: Asaki Abumi
プラスチックのゴミで作った恐竜 Photo: Asaki Abumi

フィヨルドの底のゴミ

フィヨルドというと、大自然と山々に囲まれた広大な景色を想像するでしょうか。首都では、まるで川のように、フィヨルドが静かにひっそりと街中に入り込んでいます。

フェスでは潜水士がフィヨルドの底に潜って、市民がポイ捨てしているゴミを実際に目にすることができます。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi
自転車や空き缶。スマホやクレジットカードも Photo: Asaki Abumi
自転車や空き缶。スマホやクレジットカードも Photo: Asaki Abumi

温暖化が進むと……

子どもや若者が中心となって、気候変動対策を訴える抗議活動。その展示写真の前には、枯れた植物がありました。

水をやり忘れたものが、そのまま残っているのかなと思ったのですが、実は、温暖化が進むと、植物が枯れることを訴えるために、わざと置かれていました。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

飛び恥、食品ロス。今年、私は何をしよう?

黒いパネルには、気候変動対策となる新年の目標を書き込むことができます。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

「飛行機に乗る回数を減らす」、「古着を買う」、「買い物を減らす」、「相手を批判するだけではなく、応援もする」、「食べる肉の量を減らす」、「野菜をもっと食べる」などが書かれていました。

市民にできる、小さなこと

気候変動や環境のために「こういうことをしてください」とポストカードに書くと、トランプ大統領やノルウェーの首相、オスロ自治体などに無料で郵送されます
気候変動や環境のために「こういうことをしてください」とポストカードに書くと、トランプ大統領やノルウェーの首相、オスロ自治体などに無料で郵送されます
ポストカードや切手の購入費はかからないので、参加者は気軽に首相や自治体にメッセージを書けます Photo: Asaki Abumi
ポストカードや切手の購入費はかからないので、参加者は気軽に首相や自治体にメッセージを書けます Photo: Asaki Abumi
たくさんのカラフルなカードは? Photo: Asaki Abumi
たくさんのカラフルなカードは? Photo: Asaki Abumi

壁に貼られている色鮮やかなカードには、こんなことが書かれていました。

  • 買う量を減らす
  • 節電する
  • 食品ロスを減らす
  • 食べる肉の量を減らす
  • 旅行の交通手段を変える
  • 投票や抗議するなど、自分も活動する
Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

裏をみてみると、「環境団体のメンバーになる」、「周囲の人と話し合ってみる」など、行動の第一歩となるヒントがありました。カードを作っているのはノーベル平和センターです(ノルウェーはノーベル平和賞の国)。

ファッションや生理用品をエコに

ノルウェー製の月経カップ Flove  Photo: Asaki Abumi
ノルウェー製の月経カップ Flove Photo: Asaki Abumi

会場では、環境に優しいファッションや生活用品グッズの紹介や販売がされていました。

布ナプキンや蜜蝋(みつろう)ラップを販売 Photo: Asaki Abumi
布ナプキンや蜜蝋(みつろう)ラップを販売 Photo: Asaki Abumi
修理した服などでファッションショー。倫理的に正しい、エシカル・ファッションを考えるために Photo: Asaki Abumi
修理した服などでファッションショー。倫理的に正しい、エシカル・ファッションを考えるために Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi
「リサイクル駅」では、徹底したゴミの分別を呼び掛けます Photo: Asaki Abumi
「リサイクル駅」では、徹底したゴミの分別を呼び掛けます Photo: Asaki Abumi
黄色い「灰皿」では、「新年の願い、どちらを選ぶ?」という質問が。左側「買い物をやめる」と、右側「プラスチックの袋を使わない」のどちらにタバコを捨てるかを選べます Photo: Asaki Abumi
黄色い「灰皿」では、「新年の願い、どちらを選ぶ?」という質問が。左側「買い物をやめる」と、右側「プラスチックの袋を使わない」のどちらにタバコを捨てるかを選べます Photo: Asaki Abumi
スマホやアイロンなど、電気器具を修理してくれるコーナーも Photo: Asaki Abumi
スマホやアイロンなど、電気器具を修理してくれるコーナーも Photo: Asaki Abumi

気候フェスでは、「私には、何ができるかな」という市民の疑問に、このようにも答えています。

  • あなたの投票権を使って、支持する政党に何を求めているかを伝える。気候を救いたいと思うのなら、社会と制度の変化に、あなたも責任を持つ必要があります
  • あなたのしていることが地球に悪いと、罪悪感をもたない。それよりも、なにができるかを考えましょう。一緒にできることがあると、周囲の人にインスピレーションを与えましょう
  • ひとりで気候を救おうと悩まないで。声をあげて、何がされるべきかを訴えましょう
  • 自分の生活活動により、どれほどの二酸化炭素が排出されているかを把握しましょう
  • 飛行機に乗る回数を減らしましょう
  • 政治家の行動を待っている間にも、できることはあります。気候にポジティブな活動に寄付をしましょう
  • あなたの影響力を使いましょう。銀行や年金基金に責任ある行動を求めましょう
  • もっと野菜を食べましょう
  • 食べ物を無駄に捨てないようにしましょう
  • 今持っているものを、大事に使い続けましょう
  • 環境団体のメンバーになりましょう

・・・・・

「北欧はなぜエコ先進国なのか」ということをよく聞かれるのですが、このような「楽しい」イベントが、1年中開催されており、現場に自治体や政治家も参加していることが、背景のひとつにあります。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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