ノルウェー王女の元夫が自殺 クリスマスの孤独と心の病

ルイーセ王女と自殺したアリ・ベン氏(写真:REX/アフロ)

ノルウェー王室のマッタ・ルイーセ王女の元夫であるアリ・ベン氏(47)が自殺をしたというニュースが、25日クリスマスの夜に報じられた。

同氏はデンマーク生まれのノルウェー人作家・アーティストであり、絵画などのたくさんの芸術品を残している。2002~2017年までは、王女の夫として非常に有名な人物だった。

ルイーセ王女は「天使が見える」などの発言をするスピリチュアルな人物として知られている。夫婦はゴシップ紙などでは常連で、芸能人のような立場にいた。

ベン氏は2017年に俳優の俳優のケヴィン・スペイシーをセクハラで告発したこともある。2007年のノーベル平和賞受賞式でのコンサートで、テーブルの下で下半身を触られたと主張していた。

王女とは2016年に離婚。幸せそうだった夫婦の破局に、国民は驚いた。その後、王女は新しいパートナーと出合い、霊媒師との交際が国際的にも今年は注目を集めた。

25日は、ノルウェー王室メンバーと一緒にクリスマスを祝う霊媒師のデュレク・ベレット氏の姿の写真が、現地でニュースとなっていたばかり(VG紙)。ベン氏の自殺の知らせはその夜に流れた。

他国では、「ケヴィン・スペイシー氏にセクハラされた王女の元夫」として報じられているが、現地の空気は異なる。

ノルウェーではクリスマスは家族と過ごす時期だが、一緒に過ごす相手がいない人にとっては、孤独感が極度に増す日だ。

1年で最も大事な日に、王女との間にいる3人の子どもを残して、命を絶つほど追い詰められていたであろうベン氏を思い、悲しむ人が多い。

クリスマスに父を亡くした子どもたちを心配する声も集まっている。

王女は公式なコメントは現在は出していないが、ノルウェー国王や皇太子らはベン氏のことを「大事な家族の一員で、好きだった」としてやりきれない思いを発表した。

この国では、自殺は長年タブーとされており、自殺する人が増えないようにとメディアも関連テーマはニュースにしないでいた。しかし、タブーにしたままでは社会問題は解決しないとして、自殺に関する議論などが増えつつあった。

同時に、クリスマスに孤独だと悲しみながら、誰にもそのことを言わない人も多い。

「自殺」と「クリスマスの孤独」というふたつのタブーが以前から存在していた社会だからこそ、市民に親しまれていた王女の元夫の死は衝撃的だった。同氏は自分の心の葛藤に触れた本を昨年出していた。

クリスマスの夜は、自殺がトップニュースとなる異様な雰囲気となった(ノルウェー公共局)。孤独を感じている人も多いであろうクリスマスに、有名人の自殺で精神のバランスをさらに崩す人もいる。

各メディアは、メンタルヘルスや心の悩みの電話相談ができる機関の電話番号をリスト化する対応にも追われた。ニュースが報じられてから、赤十字社などの機関も「誰かと話したい人は、私たちに電話をしてください」とSNSなどで呼び掛けた。

ソールバルグ首相も、「ひとりきりでいないで。互いのことを思いやりましょう。助けが必要な人は友人や家族、メンタルヘルスのヘルプセンターに電話しましょう」と26日にFacebookに投稿した。

26日は王宮前に市民が訪れ、ベン氏の死を弔い、花を手向けている。

人口530万人のノルウェーでは、1990年から自殺を図った人は10万人。毎年500~600人が自殺をしており、3人のうち2人は男性。自殺の平均年齢は47歳。自殺率は他の欧州の国とは大きく変わらない(ノルウェー公衆衛生機構)。2019年度の世界の幸福な国ランキングでは、ノルウェーは第3位となっている。

Photo&Text: Asaki Abumi