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SNSが原因?「夏のボディ」美化にうんざりする女性たち 北欧の美の基準

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
「ボディケアしている?」社会に「余計なお世話」と感じたことはあるか?(写真:アフロ)

毎年、6・7月になると、北欧ノルウェーでは恒例の議論が始まる。「夏の体」についてだ。

夏といえば、海。

池、フィヨルド、海のある場所で、水着を着て、日光浴を楽しむ。

北欧は、暗くて寒い冬の期間が長い。そのため、短い夏には、日差しを浴びようとする人であふれる。

日本にあるような「美白」への興味はゼロ。小麦色の肌こそ、社会でステイタスがあるとされる。

日光浴・小麦肌への執着は、今に始まったことではない。

しかし、ブログやSNSでの写真アップが普通となってくると、新しい問題が生じ始めた。

自信のない人、体を他人の前でさらしたくない人たちへの、精神的ストレスが増したのだ。

今、フォトショップやスマホアプリでの写真加工は、当たり前。

「夏休みを満喫していることを、周囲に認知してもらう」ために、ネットでの写真投稿の数が増えた。

投稿数は数年前に比べて減ってきてはいる。それでも、インスタグラム、スナップチャット、フェイスブック、ブログと、どこかで他人の写真は目にするものだ。

細い体ではない女性、筋肉があまりない男性は、ストレスを感じることが増えた。

「いいかげんにして。もう、夏のボディのストレスには、うんざり」という投稿が、この時期になると新聞などで掲載される。

「そうだ、そうだ!」と、投稿をネットでシェアしたり、「いいね!」する人は、未だに多い。この議論は、終わってはいないのだ。

例えば、ノルウェー国営放送局NRKでは、「他人と自分を比較するのを、やめよう」というアドバイス記事が出た。

  • あなたの外見は、あなたがどういう人かを意味しているわけではない
  • 体重で自分の価値を決めずに、自分に優しくなって
  • 他人の体にコメントしている人がいたら、「やめなよ」と言おう
  • ダイエットなど気にせずに、食べよう

などなど。

スポーツ選手・Birgit Skarstein氏が、フェイスブックに4日に投稿した批判は、大きな話題となる。

「夏のボディ競争。ノルウェー非公式の全国大会が、また始まった!」というものだ。

1万4千回以上シェアされた文章は、ノルウェーのフェイスブックで最も読まれた投稿のひとつとされている。

肌をさらすことが増える夏、どれほど精神的に重圧を感じている人が多いか。

SNSでの議論の過熱は、未だに問題が改善されておらず、悩む人が多いことを意味する。

2014年のアフテンポステン紙に掲載された記事を読んでみた。

「キラキラして、脱毛されて、細くて、茶色い肌。私の夏の体は、どのようにセクシュアリティ化されているか」が論じられている。

外見美に対する重圧は、2019年になっても変わっていない。

・・・・・

ノルウェーでは、広告、芸能人、雑誌、CM、アニメ、漫画などは、日本ほど社会で大きな影響力をもっていない。

美化・編集された写真は、若者のメンタルヘルスを悪化するため、政治家による規制もされている。

もし、北欧の美の基準が日本に持ち込まれたら、批判・禁止される対象は幅広い。

今年は、スポーツ選手たちが、肌の露出が多いコスチュームを着ることに、ストレスを感じていることもノルウェーでは議論されている。

今は女性の声が注目を集めるが、ここは「筋肉がよい」とされる社会だ。今後は男性からの「もう、いやだ」という声も、どんどん増えるだろう。

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Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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