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都市での荷物配達に便利!電動カーゴバイクの時代がくるか

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
車の数を減らすオスロの街で、乗り物に変化 Photo: Asaki Abumi

中心部での車の出入りを大幅に減らす「カーフリー」計画。

4年前に北欧ノルウェー・オスロ市より発表され、他国でも大きなニュースとなった。

原因は、首都の大気汚染問題などを改善するため。

「カーフリー」と聞くと、全ての車が出入りできなくなる印象を持つかもしれない。

実際は「できるだけ」車の数を減らすというもの。今でも中心部に車は走っているが、その数は減った。

自転車道が次々と設置されるなか、オスロで特に目にする乗り物はマウンテンバイクだ。

坂が多く、スポーツが好きな市民。ママチャリなどよりも、高価そうなアウトドア用の自転車が多い。

その中で、密かに市民権を獲得してきているのが、「カーゴバイク」だ。

カーフリー計画により、トラックなどでは移動にしにくい。大量の荷物や商品を運搬する企業は、電動アシスト付きのカーゴバイクで商品を運ぶようになってきた。

オスロで排出される温室効果ガスの10%以上は、商品輸送により発生している。乗り物が電動化されると、気候変動対策にもなる。

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125キロの商品の運搬が可能なカーゴバイクに乗って登場したのは、物流会社DB Schenkerに勤めるベンジャミン・アピアさん。

DB Schenker社は「ビジネス業界の気候ネットワーク」という組織にも入っている Photo: Asaki Abumi
DB Schenker社は「ビジネス業界の気候ネットワーク」という組織にも入っている Photo: Asaki Abumi

以前、会社から提供されていた乗り物はディーゼル車だったが、電動式カーゴバイクに変わり、「エコな運転手」の仲間入り。 

「中心部はカーフリーなので、カーゴバイクのほうが動きやすい」とベンジャミンさんは笑顔で話す。

同社では現在3台のカーゴバイクを持つが、すでに追加注文をしたそうだ。

カーゴバイクで走っていると、「あれ、見て!」とたくさんの歩行者から驚いて指をさされるそうだ。20~30個の包みを入れることができる Photo: Asaki Abumi
カーゴバイクで走っていると、「あれ、見て!」とたくさんの歩行者から驚いて指をさされるそうだ。20~30個の包みを入れることができる Photo: Asaki Abumi

カーゴバイクを買う企業に、市は補助金を出している。

1社で最高10台まで、購入価格の最高30%までを負担。

電動式の自転車やカーゴバイクを購入する個人や企業に補助金を出す政策は、反発にあうこともある。

電動式はいずれにせよ高価なので、最初の購入者グループは、金銭的に余裕がある生活をしている人々。

「そういうグループに税金を補助金として配分するのは、おかしい」という意見だ。

一方で、ノルウェーは今や世界でナンバーワンの「電気自動車EVの先進国」。EV流行の火付け役となったのも、政府の補助政策と、最初に購入を開始した富裕層たちだ。

新しいものに、人々は最初は懐疑的だ。

行政からの補助金をきっかけに、「興味はあるけど……」と購入をためらっていた人が、やっと財布のひもを緩める。補助金は、「最後の一押し」になる。

道でカーゴバイクを見かける風景がより「当たり前」となれば、購入を検討する人や企業は増えるだろう。

企業は「私たちはこんなグリーンなことをしています!」と顧客にPRできる。企業イメージがあがり、社員の自尊心も高くなる。荷台には「これでグリーンな運搬をしています」と書かれている Photo: Asaki Abumi
企業は「私たちはこんなグリーンなことをしています!」と顧客にPRできる。企業イメージがあがり、社員の自尊心も高くなる。荷台には「これでグリーンな運搬をしています」と書かれている Photo: Asaki Abumi
郵便局もカーゴバイクで手紙を配達している。以前、私も試させてもらったが、おもしろかった。これで街を走っていれば、いい運動にもなりそうだ
郵便局もカーゴバイクで手紙を配達している。以前、私も試させてもらったが、おもしろかった。これで街を走っていれば、いい運動にもなりそうだ

「EVの街」では、車以外の乗り物も電動化してきた。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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