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魚の皮や廃棄ソファで作ったバッグは売れるか?「ごみは誰かの宝物になる」

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
「エコファッション」が新しい基準に Photo:Asaki Abumi

フィンランド・ヘルシンキ発のファッションブランド「Lovia」

余って捨てられる予定だったソファ家具の布地、廃棄予定だった魚や動物の皮などを使って、新しいカバンを作っている。

Photo: Asaki Abumi
Photo: Asaki Abumi

バッグの皮は、

  • ノルウェーとアイスランドの養殖サーモン業者からの廃棄予定だった魚
  • フィンランドの野生動物の頭数コントロールのために狩られたトナカイやヘラジカ
  • ソファなどの家具作りで余った布地
魚皮をなめして、新しい命を吹き込む Photo: Asaki Abumi
魚皮をなめして、新しい命を吹き込む Photo: Asaki Abumi
サーモンの皮だとは、見た目では分からない to: Asaki Abumi
サーモンの皮だとは、見た目では分からない to: Asaki Abumi
公式HPで商品番号を入れると、商品が出来上がるまでの過程や売り上げの配分などを追うことができる。ブランドの透明性へのこだわりは強い Photo: Asaki Abumi
公式HPで商品番号を入れると、商品が出来上がるまでの過程や売り上げの配分などを追うことができる。ブランドの透明性へのこだわりは強い Photo: Asaki Abumi

五月に首都ヘルシンキで開催されていたイベント「ファッション・イン・ヘルシンキ」では、数多くのブランドが参加していた。

私が真っ先にここのお店を訪ねた理由は、このLoviaの写真のインパクトの強さだった。「TRASH BAG」は「ごみバッグ」を意味する Photo: Lovia
私が真っ先にここのお店を訪ねた理由は、このLoviaの写真のインパクトの強さだった。「TRASH BAG」は「ごみバッグ」を意味する Photo: Lovia

サーモンの皮からファッションアクセサリーを作ることができると、私は初めて知った。

表面は何かの動物の皮に見える。「まさか魚だとは」。人は思わないのではないだろうか。 Photo: Asaki Abumi
表面は何かの動物の皮に見える。「まさか魚だとは」。人は思わないのではないだろうか。 Photo: Asaki Abumi

調べてみたら、ほかの国にも似たようなビジネスをしている人がいた。

代表のオウティ・コルピラークソさんに取材をした。

この日はファッションイベントで、定価価格でオリジナルバックを注文することができる。自分だけのデザインが欲しいと来客が殺到した  Photo: Asaki Abumi
この日はファッションイベントで、定価価格でオリジナルバックを注文することができる。自分だけのデザインが欲しいと来客が殺到した Photo: Asaki Abumi

ファッション業界で広がるエコロジカル・ムーブメント

代表のコルピラークソさん Photo: Asaki Abumi
代表のコルピラークソさん Photo: Asaki Abumi

ブランドは2014年、店は昨年3月にオープンした。

環境やサステイナブルなファッションへの社会の意識が高まっている中で、タイミングが良かったとコルピラークソさんは話す。

フィンランド人はエコへの関心高ければ、ファッションへのこだわりも強い。

アクセサリーや小物入れも Photo: Asaki Abumi
アクセサリーや小物入れも Photo: Asaki Abumi

「お客さんは環境に配慮したファッションを求めている。今ファッションビジネスを始める人にとっての、当たり前のスタンダードです」

「歴史やこれまでの習慣がある大企業のほうが、大きな変革に苦戦しているとも感じます」

小さなブランドのほうが、持続可能な変化に臨機応変だと話す。

仕事はごみ探し

「私の最初の仕事は、ごみを探すこと」 Photo: Asaki Abumi
「私の最初の仕事は、ごみを探すこと」 Photo: Asaki Abumi

エコバッグができた流れ

  1. レザー業界では何トンもの廃棄物が出ていた
  2. とりあえず、集めた
  3. 「さて、どうしよう」と考えた
  4. 「この素材を長期的に使うには?」
  5. 「バッグを作ろう!」と思いついた

廃棄処分の素材が集まるので、色や質は選べない。集まったゴミを「パズルのように」あわせて、商品にしていくのが彼女たちの仕事だ。

ヘラジカの皮やソファの布からできるバッグ Photo: Asaki Abumi
ヘラジカの皮やソファの布からできるバッグ Photo: Asaki Abumi

25~35歳の若い女性のお客さんが多いという。

「あなたの身の回りのものに、もっと敬意を」というのがブランドの志だ。

環境に配慮してファッションを楽しみたいというユーザーからは大好評 Photo: Asaki Abumi
環境に配慮してファッションを楽しみたいというユーザーからは大好評 Photo: Asaki Abumi

「ごみは、誰かにとっての宝物となります」とコルピラークソさんは微笑む。

あなたの手元にあるごみは、何かに再利用できそうだろうか?

ビジネスチャンスは、足元に転がっているのかもしれない。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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