北欧フィンランドのパワフルな女性たちを知る映画2作品

Photo: Aurora/Oslo Pix

働く女性やママに住みやすい国として、国際ランキングでトップ常連国の北欧。フィンランドの今の女性像を垣間見ることができる2作品に出合った。

オスロ映画祭Oslo Pixで上映されていた両作品はどちらも良作。

どんどん成功する彼女、仕事に行き詰まり、家で育児する彼氏

アレクシ・サルメンペラ監督の『VOID』(2018)では、昔の男女像が逆転したかのようなカップルが登場する。

女優としてのキャリアを積む彼女。人気作家だが、もう五年間も新作を書けずに、パソコンのスクリーンを見つめ続ける彼氏。

新作のアイデアが湧くかもしれないと、男は船で旅に出る。

「あなたも家賃を払ってよ。稼いでいるの、私のほうじゃない」と言いながら、映画の戦争シーンで銃を撃ちまくる女。

一方で、「これまでの映画での女優のイメージは偏りすぎている」と疑問に思いながら、時にはセックスシーンで古典的な女を演じる。フェミニストの自分が、心の中で葛藤する。

まさかの浮気による妊娠。ふくれたお腹でフィンランドの人気ファッションブランド、マリメッコのドレスを着ながら、メディア撮影に応じる。妊娠のことばかり書こうとする記者に、彼女は抵抗感を抱く。

北欧の自立した女性のイメージと、育児と仕事の選択をアメリカで求められる現実が、ぶつかり合う。

家では、男は一文字も書けずに、彼女が浮気相手との間に産んだ子どものオムツを変えている。

仕事で成功を収めようと必死のアーティストカップル。モノづくりに行き詰ったことのある人は、二人に共感できることもあるだろう。

アメリカと北欧のカルチャーがぶつかり合い、昔の映画とはちょっと違う男女の役割が描かれている。

本作は白黒映画だが、たまに突然とカラーシーンが登場する。「どうしてここだけ色のある世界なんだろう」と、考えながら見るのもおもしろい。

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アルコール依存症のフィンランド人女性と、難民申請者のイラン人男性

オスロの映画祭ではたくさんの作品を見たが、こちらのフィンランド作品は間違いなく個人的にトップスリーに入る。DVDが出たら、絶対に買いたいと思った。

Miia Tervo監督による『AURORA』(2019)は、観客をたくさん笑わせてくれる、元気がでる映画だ。

フィンランドの街に住むアウロラは、平凡な毎日に飽き飽きしていた。ある日。イランからの難民申請者、ダリアンが小さな娘を連れて現れる。滞在許可がおりないと、国を追い出される彼の悩みは深刻だ。

「フィンランド人の妻を見つければいいのでは?」。思わぬ出会いで、ダリアンの妻探しを手伝うことになった。

一方で、自分にはアルコール依存症の傾向があると自覚がないアウロラ。つらい時にお酒を飲んでしまう癖で、周囲を傷つけ始めていた。

人々との奇想天外なやり取りは、見ていて何度も笑ってしまった。

難民申請者に対する悪気のない偏見にまみれた地域の人々のセリフが、映画には溢れている。

もし政治家がテレビで言っていれば、「政治的に正しくない」、「極右政党や人種差別者の言うことだ」と叩かれていそうだが、市民が映画でぼそっと言って、ダリアンがさらっと対応する。誤解や偏見はあったが、それでも仲が打ち解けていく様子は、見ているものをほっとさせる。

「フィンランド人の女には、こう接しなさい!」というアウロラからの社会の常識レッスン。

性の話にあまりにオープンすぎる女性たち。

「ここは、フィンランドだ!サウナは裸で入るんだ!」と男たちにパンツを脱がされそうになるダリアンなど、異文化交流のシーンが満載だ(雪国フィンランドではサウナが人気)。

「なんだ、この人たちは?」と戸惑うダリアン。異国の地で異なるカルチャーに触れて戸惑ったことがある人、日本のことを外国人に説明しようとしたことのある人は、どこかで感情移入できるかもしれない。

ムーミンのマグカップを集めることが大好きな女性。

ひとりで寂しいこともあるけれど、元気に生きるおばあちゃんたち。

映画にはたくさんの女性が登場する。

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フィンランドのライフスタイルや男女像を知るには、性格が異なる両作品は参考資料になることだろう。

「日本でいつか上映されるといいな」と思いながら、この記事を書いた。

Text: Asaki Abumi