円形交差点で裸にならないで、ノルウェー道路庁が高校生ルスにお願い

赤い服がトレードマークのルスとは? Photo: Asaki Abumi

「高校生の皆さん。円形交差点で性行為はNO」。

ノルウェー道路庁が、真面目に、このようなプレスリリースを18日に出した。

今、ノルウェーでは、赤色のオーバーオール(作業着のような、つなぎ)を着た高校生たちが、各地で出没中。

ルス(RUSS)と呼ばれる彼らは、卒業を間近に控えた高校生。専攻科目によって、ズボンの色は赤・青・黒・緑などがある。

今からナショナルデーの5月17日まで、ルスたちは特別な存在として、若者から大人への通過儀式を祝う。

先生や警察官などにイタズラをしたり、たくさんのビールを飲んだり、通常では「だめそう」なことを、思い通りにすることができる。

帽子ルールとは

ルスには、「ルス帽子の紐」ルールというものがある。

帽子には長い紐がついている。「紐ルール」は、毎年100個ほどあり、「ルス委員会」などによって発表される。ルールをクリアすればするほど、その証しとして、レシートやコンドームなどの「ガラクタ」を紐に結び付けていく。

ルス帽子と紐 Photo:Asaki Abumi
ルス帽子と紐 Photo:Asaki Abumi

「屋外で性行為をする」、「ボディランゲージだけで避妊用具を買う」、「24時間でビールを24本飲む」、「ビックマックを3口で食べ干す」など。

「え?」と耳を疑うようなルールばかりだ。

「驚きの卒業儀式100のルールとは?」

道路庁「その紐ルール、やめてほしい」

ルールの中に、道路庁がピクリと反応したものがあった。

  • 「3か所の円形交差点で安全な性行為」
  • 「『乾杯!』という看板を持って、円形交差点で他のルスと一緒に座り込む」
  • 「橋の上で裸で走る」

「このようなことをする人たちがいたら、運転手が驚いて、交通事故が起こるかもしれない。だから、やめてほしい」、というプレスリリースだった。

プレスリリースは、道路庁の最高責任者であるテリエ・グスタブセン氏によるもの。

このお願いの文章が、また丁寧で、「なんだ、この国は」と思わずにはいられない内容だったので、紹介したい。

またルスの時期がやってきました。春の兆しです。若者が13年間の教育を終えた後の、自由を祝う時ですね。いいと思います。

多くの人々が、ルスの時代を思い起こすと、楽しくて、幸せだったなと感じるのではないでしょうか。

ファンタジーに溢れたルスの紐には、面白くて、クリアするのが大変なルールも含まれています。

『大人の』視点からすると、一部のルールは、おかしいのではないかとしか思えないのですが、パーティーと楽しむことが目的なのでしょう。

土曜日の朝、私は、ある雑誌の特集を読んでいました。リンゲサーケル高校での、ルス帽子の紐ルールについてでした。多くはユーモアに溢れていました。

きっと、面白いと思って、作られたのでしょう。「3か所の円形交差点で安全な性行為」、「『乾杯!』という看板を持って、円形交差点で他のルスと一緒に座り込む」、「橋の上で裸で走る」。

(ちなみに、指定されているミョース橋の上で裸で走ったら、罰金ですよ)。

私には他の仕事もあるため、全国のルスのルールを確認することはできません。しかし、他の高校でも、もしかすると同じようなルールがあるのではないか、と思っています。

私は、口うるさい、お節介な親戚になろうと思います。

親愛なるルスの皆様。他のルールを選びましょう。

楽しんでください。ルスの時期を、思いっきり祝い、後から思い起こした時に、楽しかったなと思えるように。

円形交差点での性行為、看板を持って座り込む、橋の上で裸で走るのは、やめましょう。

他のルールはどうでしょうか。例えば、ルール38の「道路庁にルスバスを無料点検してもらう」、とか。

道路庁ディレクタター、テリエ・グスタブセンより

出典:ノルウェー道路庁Vegvesen

ノルウェーでは、大人たちがルスに口出しをすることは、「大人げない」とされている。なぜなら、政治家たちを始め、誰もがルスを通過してきたから。

しかし、現代では飲酒や性行為が過激になりつつあり、「しっかり避妊してね」など、大人がそっとアドバイスをする傾向にある。

※ルスの行動にどれだけ参加するかは個人の自由なので、全員が泥酔したり、性行為をしているわけではない。だが、筆者は毎年ルスを取材しているが、酒・性行為は、オスロでは一般的に見聞きしてきた。

他にもある、お節介な道路庁のルスへの気遣い

道路庁からルスへのメッセージは、実はこれだけではない。

ルスは、保護者に金銭的な余裕があれば、専用のバスやワゴン車を所有できる(運転手は雇う)。

派手にデザインしたルスたちの乗り物は、彼らにとって、「かっこいいグループ・お金のシンボル」だ。

ルスバスのデザインは多種多様。目立つほどクール Photo: Asaki Abumi
ルスバスのデザインは多種多様。目立つほどクール Photo: Asaki Abumi

ルス専用の乗り物を止めろとは、大人は言わない。しかし、事故は起こして欲しくないと、道路庁は、無料で車両点検をおこなっている。

ルスバスの中は、カラオケのようになっている Photo: Asaki Abumi
ルスバスの中は、カラオケのようになっている Photo: Asaki Abumi

「無料だから、点検にきてね。交通ルールを守りましょうね」と、丁寧に作り上げられた動画まで用意されている。ルスのための専用Facebookページまでもある。

他国でもニュースに

ノルウェーの不思議すぎるルス文化と社会の寛容性は、国外の人からすると、突っ込みどころが満載だ。

道路庁によるお願いは、ロイター経由で、ニューヨーク・タイムズなど、国際メディアでも報じられた。

ノルウェーは人口520万人という小国なので、他国でニュースになると、とても喜ぶ。

「道路庁のルスへのお願いが、世界中でニュースになっているぞ!」と、また報道するノルウェーメディア。

「あら、冗談のつもりだったのに」と、道路庁が心配していた高校は、ルールを一部修正したと20日に報じられた(ノルウェー国営放送局NRK)。

ほっと一安心した道路庁は、「あのルールがなくても、ルスを楽しむことはできるでしょう」と現地メディアに答えている。

この交通ルールについても、ひとつ補足しておきたい。

ノルウェーでは、道路に宣伝広告がありすぎると、「運転手の注意があちらこちらに向いてしまって、交通事故が起きやすくなる」という考え方がある。ノルウェーで運転していると、道路に看板が少ないことに気づくだろう。

これは実は特殊な反応だ。隣国スウェーデンでは、道路にもっと看板があり、情報に溢れている。「ノルウェー人は気にしすぎだ」というのが、筆者の周囲にいる、ノルウェー在住のスウェーデン人ジャーナリストの意見。

これと同じ考え方で、道路でルスたちが何かをしていると、「運転手がびっくりしてしまう=交通事故が発生するかも」と、道路庁は気にしているのだろう。道路に裸の人がいたら、誰だって驚きはするだろうが。広告よりも、過激な光景だ。

ルスの時期は、まだ始まったばかりだ。ノルウェーからルスのニュースが国際的に報じられるのは、これが最後ではないかもしれない。

「泥酔して登校する高校生ルスにノルウェー首相が説教、ビール片手に王室ご一家の前に登場!」

Photo&Text: Asaki Abumi