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「山の番人」配置で救助出動件数が激減 ノルウェーの絶景トロルの舌

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
往復10時間ほどかかるトロルの舌 Photo: Asaki Abumi

ノルウェーで人気の絶景スポットとなった「トロルの舌」。

準備不足の外国人登山者が増加し、地元の救助隊は頭を抱えていた。

今年の夏は試験プロジェクトを導入。登山道の途中に、警備員と緊急時のための小屋を設置した。

結果、昨年の救助隊の出動回数は35回。今年は警備員が配置された7月8日以降は「6回」と、激減したことが判明した。

この数字は、地元のオッダ市が13日に発表したもの。ノルウェー政府は、来年度もトロルの舌観光客対策のために補助金を出す予定だ。

地元の方々の反応を取材した。ハルダンゲルフィヨルド観光局のアンデルセン氏は、トラブルを抱える観光客が減少したことに満足している。

救助隊の出動回数

  • 3月24日~7月8日 5回(2016年)/15回(2017年)
  • 2017年7月8日に山の警備員を配置
  • 7月8日~10月20日 35回(2016年)/~10月12日 6回(2017年)

オッダ市でトロルの舌の状況を把握する職員ロルフ・ブーエンさんは、取材でこう答える。

「山の警備員」たちが今年多く救助した登山客の多くは、負傷していたわけではなく、肉体的に疲労していた。少量の食事や飲み物をもらった後は、自力で下山するか、小屋で一晩して休憩し、翌日には自力で下山するケースが目立ったそうだ。

標高700メートルの山にあるトロルの舌までの道の途中では、木がほとんど見当たらない。

「ノルウェーではこの高さでは木は育ちません。変わりやすい天候で、風が強い時には、立つことが難しいほどに強い風が吹きます。外国人が想像する以上に、荒れやすい自然なのです」。

「トロルの舌は、ジョギングシューズや傘を持ってくるような場所ではありません。2年前に比べて、外国人登山客の装備や準備は改善されてきました」。

『トロルの舌を登れたら、これからの先の人生で待つ困難は乗り越えられる』

「外国人登山客からは、様々なフィードバックがきますよ。『今までで一番大変な体験だったけれども、登り切れて嬉しかった』と。『トロルの舌を登れたら、これからの先の人生で待つ困難は乗り越えられる』とさえ言う人もいます。下山できた時には、これまでに体験したことのない達成感が得られるようです」。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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