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坂道も楽々と、世界初の自転車リフトが観光スポットに/ノルウェー

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
トロンハイムにある自転車エスカレーターとは? Photo:Asaki Abumi

ノルウェーで第三の規模の都市トロンハイム。観光客が多く集まる中心部には有名な赤い色の跳ね橋がある。橋の先のすぐ側にあるのは急な坂ブルーバッケン。自転車乗りが多いまちだが、さすがにこの坂を超えるのは大変そうだ。

自転車乗りや徒歩で歩く住民、観光客が行きかう場所 Photo:Abumi
自転車乗りや徒歩で歩く住民、観光客が行きかう場所 Photo:Abumi
リフト乗り場を眺める観光客の姿が絶えない Photo: Abumi
リフト乗り場を眺める観光客の姿が絶えない Photo: Abumi

この坂には世界で最初の「自転車エスカレーター」(Sykkelheis)がある。別名「トランぺ」(Trampe)のプロトタイプができたのは1993年。それから15年間、130メートルに及ぶ急な坂を上り下りする自転車乗り20万人の手助けをしてきた。

2013年にはアップグレードされた自転車リフト「サイクロケーブル」(CycloCable)に生まれ変わる。現在は誰もが無料で使用でき、毎年20~30万回使用されているそうだ。開発側によるとこれまで大きな事故は発生していない。

開発者だったヤーレ・ヴァンヴィーク氏は自転車が大好きで、車ではなく自転車に乗る理由をいつもみつけようとしていたとのこと。

トロンハイムの自転車リフトは日本からも問い合わせがあるので、筆者も一度目にしたいと思っていた。今回初めて見に行った日には、残念ながらリフトの機械には「故障」の文字が。道路庁に電話したところ、直すのは週末明けになるかもしれないとのことだったので、「残念」と思っていた。

小さな希望を持って、翌日訪れてみると、リフトが直っていた。自転車乗りをまって数分。男の子たちがやってきたので、許可を得て撮影させてもらった。乗り方にはコツがあるようで、最初は何度か失敗していたが、最後にはリフトで坂の上まで到着していた。

ボタンを押すと出てくる踏板に片足をのせて移動 Photo:Abumi
ボタンを押すと出てくる踏板に片足をのせて移動 Photo:Abumi

驚いたのが、この自転車リフトの存在があまりにも珍しいため、地域の観光スポットになっていたことだった。自転車に乗る地元住民に比例して、カメラを首にかけ、地図を手にした外国人観光客もひっきりなしに訪れる。一眼レフを手にして本格的に撮影するカメラマンもいた。筆者はノルウェーの観光地もよく取材するが、このような特殊な観光スポットはあまり記憶にない。

自転車リフトが必要と判断されるくらいの急な坂だが、運動好きにはわくわくする場所のようだ。トレーニングとして、あえて坂を全員で自転車で走って登ろうとしたり、筋力トレーニングで何回も坂をダッシュしている人もいた。

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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