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北欧各地で核廃絶を訴える。ピースボートで被爆者が世界一周

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員
ノルウェー・ベルゲンでの講演会 Photo:Thea K Mjelstad

長崎や広島の被爆者を乗せた非政府組織(NGO)ピースボートの船は、現在北欧諸国を渡航中。

世界各国で被爆体験を語る「証言の航海」おりづるプロジェクトとして、世界一周をしながら22か国を回っている。期間は4月12日から7月25日の約105日間。航海は今年で10回目を迎え、これまでに約170人の被爆者が世界各地で証言をした。

6月上旬はフィンランド、スウェーデン、ノルウェーを訪問。

外務省より非核特使の委嘱を受けた長崎平和推進協会 継承部会員の三瀬清一朗さん(82)は、4日にノルウェーの首都オスロを訪れる。

三瀬さんはオスロ郊外にあるシシュテン・オーセン名誉教授の自宅で、地元の人々に被爆体験を話した。

被爆体験を語り継ぐ三瀬さん Photo:Asaki Abumi
被爆体験を語り継ぐ三瀬さん Photo:Asaki Abumi

被爆者の平均年齢は80歳を超え、体力的にも海を越えて語り部活動ができる人は減りつつある。

「被爆者ひとりひとり、体験談は異なる。1人でも多くの人に記憶を伝えたい」と三瀬さんは話す。

講演の場として自宅を提供したオーセン名誉教授は、ノルウェー医学部教授として初の女性であり、核兵器廃絶運動にも積極的に取り組んできた。

オーセン名誉教授(右)のオスロ自宅で Photo:Asaki Abumi
オーセン名誉教授(右)のオスロ自宅で Photo:Asaki Abumi

三瀬さんは、ノルウェー外務大臣の右腕であるマーリット・ベルゲル・ルスラン秘書(保守党)とも面会。

外務省での面会、報道陣は同行無し Photo:Anne M Skaland
外務省での面会、報道陣は同行無し Photo:Anne M Skaland

面会を手配したノルウェーの核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は現地報道陣も同行できるように依頼したが、外務省は拒否した。

2013年の国政選挙以降は中道右派政権となっているノルウェー。核兵器禁止に向けた国会での議論は積極的には行われているが、政権の取り組みはペースダウンしていると批判も受けている。

「核兵器廃絶に対するノルウェーでの動きはここ数年は沈静化しています」。ICANノルウェーのアンネ・マッテ・スカランさんは、核兵器禁止条約の交渉会議にさえ参加しようとしないノルウェー現政権に落胆している。

ノルウェーの学校教材では、長崎や広島での出来事は数行しか記載されていないため、人々が被爆者から直接体験談を聞ける機会は貴重だと話す。

その後、三瀬さんはノルウェー第二の都市ベルゲンで他の被爆者と合流し、5日に講演会を開催。祝日だったにも関わらず、140人以上の市民が訪れ、体験談に耳を傾けた。

ベルゲン講演会に訪れた市民 Photo:Thea K Mjelstad
ベルゲン講演会に訪れた市民 Photo:Thea K Mjelstad
Photo: Thea Katrin Mjelstad
Photo: Thea Katrin Mjelstad

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会役員

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信15年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。ノルウェー国際報道協会 理事会役員。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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