ノルウェー版「共謀罪」とは?(2)政府を信頼する北欧の人々

憲法記念日の警備強化のために、車両で道路を封鎖して市民を守る警察(写真:ロイター/アフロ)

「ノルウェーにはすでに共謀罪がある」という日本の記事を見かける。それにしては、ノルウェーでは大きな反発は起きなかったようだ。現地の専門家たちから話を聞いた。

ノルウェー版「共謀罪」とは?(1)日本ほど反発がなかった理由

ノルウェーの表現の自由やプライバシーを専門とするヨン・ヴェッセル・オース弁護士(Jon Wessel-Aas)と、メールでやり取りをした。

「確かにノルウェーや他国には、すでに犯罪予備軍に対するテロ法が複数あります。特に2013年にできた法の役割が大きい。誰かが将来的なテロ行為を計画しているかどうかを調べるために、国家公安警察には、パソコンや電話を“ハッキング”したり、コミュニケーションを密かに監視する全権があります」。

「一般市民や政治家からはそこまで反発がなかったというのは本当です。しかし、法律に携わる業界からは大きな抵抗の声がありました」。

オース弁護士は、昨年地元のNy Tid紙に寄稿したコラム記事で、「なぜ、ノルウェーはここまできてしまったのか」と批判的だ。

「このような法は、政治家にとっては理想郷のような期待そのもの。手腕を見せるための、“最も安価なやり方”。誰かがテロリストになる前に、次のテロを防げるだろうという願いで、警察が全権力をもって国民を監視します」。

「“安価な”というのは、国会で法案を可決させること自体には、大金がかからないからです。安くて、一晩で実現できしてしまう。そして多くの有権者は喜びます。長期的で手間がかかる対策は、売り物にはしにくいのです」。

「国民の安全を守るためであれば、法を改正すべきという動きに政治家もノーと言いにくくなります。テロがまた起きてしまった時、誰も責任を負いたくないからです」。

政府を信頼しすぎている国民

「ノルウェーの人は、日本人よりも政治家や警察を信頼しているから、このように両国で反応が違うとも感じるのですが、どう思いますか?」と筆者は聴いた。

「そうですよ。ノルウェー、いわゆるスカンジナヴィア諸国の人々は、政府をあまりにも信頼しすぎていると私は思います」とオース弁護士は答えた。

世界各国を比較した様々な調査では、北欧諸国は他者、公的機関、警察に対する信頼度が高いことでも知られている。

例えば、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、「他者への信頼」におけるレベルは、欧州加盟国の平均は5,8に対し、ノルウェーは7,3と高い(0=どのような他者も信じない~10=多くの人を信じる/10段階)。他者などを信頼する傾向が強いことは、ノルウェー国民の気質やライフスタイルを理解する上では重要な要素だ。

国営放送局 NRKによると、ノルウェー国民の80%は警察を信頼していると答えた(Ipsos調査、2017年1月付)

続きは、ノルウェー版「共謀罪」とは?(3)監視社会で市民が自由な発言を控えるリスク

Text:Asaki Abumi