「欧州版ドナルド・トランプ」と名指しされたノルウェー移民大臣と、その上を行く過激政治家たち

移民大臣と進歩党がトランプ現象の比較対象に Photo:Asaki Abumi

ワシントン・ポスト紙が、5月19日付の報道で、「欧州版ドナルド・トランプ」として、ノルウェーのシルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣(進歩党)を名指しした。ノルウェー国営放送局をはじめ、多くの大手報道機関でこの件は取り上げられた。

ワシントン・ポスト Meet the Donald Trumps of Europe

リストハウグ氏とともに、欧州版トランプとして指名された政治家は、オーストリアの大統領選で、ここ数日話題となっている自由党のノルベルト・ホーファー氏。フランスの国民戦線(FN)マリーヌ・ルペン党首。イギリスの元ロンドン市長で保守党のボリス・ジョンソン氏。デンマーク国民党のKristian Thulesen Dahl氏。オランダ自由党のヘルト・ウィルダース氏。

救助隊と難民の体験を共有するための地中海ダイビングで、一躍有名に

4月、リストハウグ氏は、救助活動がどのようなものかを理解するために、地中海に飛び込んだ。「ぷかぷかと水面に浮かんでみなければ、難民の気持ちがわからないのか」と、ノルウェー国内外で驚きをもって報道された。この一件で、同氏は「ノルウェー極右政党の顔」として、一躍有名になってしまったようだ。

「難民の体験を共有」するために地中海に飛び込んだノルウェー移民大臣 熱烈な支持者を増やす、怖い魅力

移民大臣、反論する「ノルウェー政治のことを何もわかっていないようですね」

リストハウグ氏や進歩党は、自分たちの政策や思想が正しいと確信しているため、批判報道に動揺することはあまりない。ワシントン・ポスト紙の報道に対して、最大手アフテンポステン紙に、同氏はSMSで回答した。

「私や進歩党にレッテルを貼りたがる人がいることは、今に始まったことではありません。今回の件で、ワシントン・ポストがノルウェー政治を何も理解していないことが明白になりました」。

記事での他政党と進歩党では、政策が似ていないことも指摘。同氏は、進歩党は減税政策などを重視していることを、各紙に強調した。

移民大臣以上に、ドナルド・トランプ的な政治家は、進歩党に大勢いる

党首(右)と副党首(左)はさらに過激な発言をする Photo:Abumi
党首(右)と副党首(左)はさらに過激な発言をする Photo:Abumi

もし、ワシントン・ポスト紙がリストハウグ氏の存在や言動に驚いたとすると、進歩党の他の「英雄たち」のことを知れば驚愕するのではないだろうか。

  • 進歩党の党首で、現・財務大臣(つまり、現政権で第二位の権力をもつ)シーヴ・イェンセン氏
  • 進歩党の副党首であるペール・サンドバルグ漁業大臣(いずれ、ノルウェーサーモンのPRで来日するかもしれない?)
  • 進歩党の元党首でカリスマ的存在であるカール・I・ハーゲン氏(現在は首都オスロの市議会で、対立する左派勢力の「番犬」として大活躍中)
進歩党で最も知名度が高い伝説の政治家ハーゲン氏 Photo:Abumi
進歩党で最も知名度が高い伝説の政治家ハーゲン氏 Photo:Abumi

ほかにも仰天発言をする政治家は進歩党には数多くいるが、ワシントン・ポスト紙の分析を基準とすると、この3人だけでも、リストハウグ氏以上の「ドナルド・トランプ氏」ぶりを発揮している

昨年末は、新設の移民大臣が誰になるか、ノルウェー国内で話題を集めていた。最終的に、漁業大臣となったサンドバルグ氏だが、彼が移民大臣とならず、「ほっとした」人も多かったと思われる(同氏の移民受け入れ否定の態度は、すさまじい)。

その言動が、どうしても注目を集めやすい各国の極右政治家。ワシントン・ポストでは、リストハウグ氏は「進歩党で人気急上昇中のスター」と描写されている。しかし、党内だけではなく、一部の国民の間でも「希望の星」として同氏が熱烈な支持を集めていることは、注目すべき事実といえる。そもそも、欧州の難民問題が露呈化する前に、進歩党はすでにノルウェーで与党になっていた。

「極右政党」や「右翼ポピュリスト政党」というだけで、単純に説明できる現象ではないだろう。

進歩党の第2副党首にインタビュー 

外国メディアに深い取材をされることもなく、「極右政党」と描写されることについて 「極右=怖い?移民・難民政策に厳しいノルウェー与党・進歩党は、非人間的で冷酷か」

Photo&Text: Asaki Abumi