ノルウェー移民大臣、「スウェーデンは移民統合政策の失敗例」と強調しはじめる

正直な発言が世間を驚かせがちな移民大臣  Photo: Asaki Abumi

スウェーデンの例をみれば、どれだけ狂気じみた事態になりかねないかが、十分にわかるでしょう。ノルウェーがスウェーデンのようにならないように、私は毎日の業務に励むことを約束します」。4月末、ノルウェーで移民・難民政策に最も厳しいとされる進歩党(与党・右翼ポピュリスト政党)での全国集会で、シルヴィ・リストハウグ移民・社会統合大臣(同党)が壇上で語った言葉だ。進歩党の会場は、大きな拍手に包まれた。

過激な発言で物議を醸しやすい同大臣だが、彼女の正直な言葉は、メディアの見出しを連日大きく飾る。そのことを熟知してのことだろうか。同大臣は今、隣国スウェーデンを「移民政策の失敗例」として強調しはじめ、「気持ちと理想だけで、スウェーデンのように大量に難民申請者を受け入れてしまえば、ノルウェーも同じような結果を招く」というメッセージを発信しはじめた。

ノルウェーの記者がスウェーデンの移民地区で脅される

さらに、移民大臣の言説に新たなエネルギーを注ぐこととなったのが、ノルウェー国営放送局の記者たちを襲った事件だ。5月6日、国内で高い視聴率を記録する夕方の報道番組ダーグスレヴィーエンの取材のために、敏腕記者マグヌス氏をはじめとするテレビ局一行が、スウェーデンを訪れた。現場は、移民統合政策が失敗した地域といわれているリンケビーとフースビーだ。フースビーのカフェ内でインタビュー中、現場にいた一部の若者が「何を撮影しているんだ」、「フースビーで取材するな」と罵声を浴び始め、撮影クルーは避難。カメラマンは「ここで撮影するのは得策ではない」と話し、一行が店を出る際には、「パン、パン、パン!」と銃声を連想させる音を若者たちが叫んだ。現地の警察に同行中、若者たちから石を投げられる警官の様子などを番組はレポートした。その内容は、平和な国「北欧」のイメージからは程遠く、紛争地のような危険を感じさせ、ノルウェー国内に大きな衝撃を与えた。

リストハウグ移民・社会統合大臣は、9日の国営放送局での放送で、「ニュースを見た人は、スウェーデンでの状況に、誰もがショックを覚えたことでしょう。ナイーブで優しすぎる移民政策が引き起こしてしまう末路、これがその証拠です」と話した。

優しすぎる理想的な移民政策はクレイジー

厳しい移民政策が必須と強調する移民大臣 Photo: Asaki Abumi
厳しい移民政策が必須と強調する移民大臣 Photo: Asaki Abumi

11日、ノルウェー政府と関係各所での集まりでは、同大臣が新たな移民統合政策案を発表。壇上で、同大臣はスウェーデンを移民政策統合の失敗例の代表として、あらためて強調。

「スウェーデンのように、移民や難民が労働市場に参加せずに、初期段階で受け入れ可能数の限界を超えてまでも受け入れてしまうことが、どれだけクレイジーなことか」を語った。

今回発表されたノルウェー政府の政策案資料でも、移民の社会統合に失敗したエリアは治安が悪くなるとし、犯罪率が増加、警察の仕事が困難になると記載されている。欧州での事例として、スウェーデンのヨーテボリが挙げられている。同時に、資料では、ノルウェーでも、「国の法律を破り、移民グループによる独自の文化が形成された別社会、パラレル(平行)社会が生まれかねない」と警報が鳴らされている。

「スウェーデンは失敗例」と大臣はなぜ強調しはじめたのか?

今、スウェーデンの社会統合の成功例は、報道・議論されていない。大臣が強調するのは失敗例だ。

ノルウェーの隣国であるスウェーデンは、文化や言語も近く、ノルウェー人にとっては最も身近に感じる外国となる。ドイツなどの欧州他国での出来事を例にするよりも、隣のスウェーデンでの現状のほうが、ノルウェー人にとっては現実味が帯びる。その心理状態が、現状に反映されているともとれる。

厳しすぎると批判を浴びがちな同大臣と進歩党だが、大臣のフェイスブックは、「素晴らしい」、「これからも頑張ってください」という支持者からのコメントで溢れかえっている。

Photo&Text: Asaki Abumi