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成功率たったの14%? 潜水艇タイタンがタイタニック号まで何回到達できたかようやく判明 米報道

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
出典:oceangateexpeditions.com

難破船タイタニック号の残骸を見に行くツアーの途中で消息を絶ち、その後残骸が引き上げられた米潜水艇タイタン。

結局のところ、この事故が起こるまでタイタン号がこれまで何度、タイタニック号が沈む深さまで潜水できていたのか、米メディアの中でも表記が揺れていた。

しかしここに来て、事故が起こるまでいったい何回深海まで到達していたのかについての詳細が判明したと、今月9日に報じられた。

インサイダーによると、タイタニック号の残骸がある水深1万2500フィート(約3810メートル)まで、タイタン号はこれまで90回の潜水を試み、うち到達したのはわずか13回だけだったという。

つまり、成功率はたったの14.4パーセント程度だったことになる。これを受け英インディペンデントも「到達したのは15%にも満たなかった」と報じた。

この具体的な数字はインサイダーが確認した、タイタン号の運営会社オーシャンゲートによる4ページにわたる書類のウェイバー(賠償責任の放棄条項)に書かれてあった。またその書類には、タイタン号について「experimental(実験的)」という表現も複数回書かれていた。この書類は、タイタン号の搭乗客が深海ツアーに申し込む際にサインを入れたものだ。

つまり(書類をきちんと隅々まで読んでいたとしたら)乗客は、この深海ツアーの成功率がそれほど高くないことを承諾した上で搭乗したことになる。

オーシャンゲート社のウェブサイトのアーカイブによれば、同社は太平洋、大西洋、メキシコ湾で、2隻の潜水艇で14回以上の遠征ツアーと200回以上の潜水を完了したと発表していた。また、タイタニック号への潜水に初めて成功したのは2021年だったというフォーブスの情報もある。

今回の事故で亡くなったストックトン・ラッシュCEOと同社を共同設立したギレルモ・ソーンライン氏は、タイタン号について、厳格なテストプログラムを受け、14年かけて開発されたもので「非常に頑丈だった」と、英BBCニュースで語った。

14%程度の成功率について報じたニューヨークポストは、「裕福な観光客は、30ドル(約4200円)のビデオゲーム用コントローラーによって操縦されていた長さ22フィート(約6メートル)の潜水艇に乗り込み、『不沈船』を一目見ようと25万ドル(約3500万円)を支払った」と皮肉を込めた。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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