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王室特権はある?ハリー王子の薬物使用の告白は米滞在ビザに影響するのか

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ハリー王子が若いころに起こした違法騒動を報じた米タブロイド紙。(提供:Star/Splash/アフロ)

すべて「真実」に基づいて書かれたとされるハリー王子の回顧録『SPARE(スペア)』。本の中で王子は王室との確執、初体験、麻薬(ドラッグ)使用、アフガニスタンでの敵兵の殺害など、事細かに暴露し物議を醸した。

特に王子は過去にコカイン、マリファナ、マジックマッシュルームなどの違法薬物を使用したことを、本の中で赤裸々に告白している。コカインを使ったのは王子が10代のころだそうだが、成人してからも幻覚をもたらす「サイケデリックなもの」を試したと認めている。しかしここにきて、その正直さがアメリカ滞在において仇となる可能性を、米メディアが報じた。

ウェブニュースのページシックスは、王子があまりにも正直であるが故に、過去に使用した麻薬が今後もしかするとアメリカに住む権利に影響を与えるのではないかとする法律専門家の声を紹介している。

外国人が留学、就職、駐在などでアメリカに入国および滞在する際、必要となるのは滞在資格証明のビザだ。記事の中で、元連邦検察官で現在弁護士事務所の代表を務める人物は、このように話した。

「薬物使用の自白は通常、容認できない根拠だ。コカインなどの使用を自ら告白したため、彼の(アメリカ入国および滞在のために必要な)ビザは拒否または取り消されるべきだった」

日本のメディアでもたびたび、元皇室である小室眞子さんと夫の小室圭さんのビザについて話題に上る、外国人のビザ問題。アメリカの滞在・就労ビザに元王室や元皇室の「ロイヤル特権」はどこまで通用するのだろうか?

その専門家は、「ロイヤル特権や、ただの娯楽目的で気晴らしに使ったから問題ない、などの例外はない」と断言する。

ハリー王子はトラウマの専門家と今月はじめにオンラインで話し合った際も、薬物の使用についてこのように認めている。

「フロントガラスを拭き取るようなもの。人生のフィルター (辛いこと)を取り除き、リラックスと解放感、心地よさをもたらしてくれ、気が楽になった」

さらに薬物は自身の人生において「基本的なもの」、つまり必要とされるものという認識を示したことが伝えられた。

もちろん逮捕、起訴そして有罪判決があった場合、ビザ取得の障壁になる可能性は十分にある。しかし別の移民法の専門家には、過去の薬物使用の告白がビザや滞在ステータスに影響を及ぼすことはないとする見方もある。

「ドラッグに関する刑事告訴や常習的なドラッグ使用者であるという司法当局の認定がない限り、本の中での開示が(ビザに)問題になるとは思えない」

この移民法の専門家によると、アメリカ市民でないドラッグ依存者は、犯罪者同様に入国管理局による調査対象となる。しかし、若いころの体験を本に書いたくらいでビザに影響はないだろうという。「移民局は特にアクションを起こさないだろう。よっぽど逮捕されるような事件を起こしたり飲酒運転などしない限りは」と説明した。

滞在ステータスについて、もう1つ。王子の妻、メーガン・マークル氏はアメリカ国籍者だ。よって専門家の中には、娯楽目的の薬物使用歴は滞在ステータスに特に問題にならないとの見方が多い。アメリカでは何十年もの間不法滞在をしていても、アメリカ人と結婚するだけでいとも簡単に永住権(グリーンカード)を取得でき合法滞在者になることが可能だ。

王子は2020年、英王室離脱と共にメーガン夫人と長男アーチーくんと共にカリフォルニアに移住した。21年の英タイムズの報道によると、王子はアメリカの永住権や市民権を取得する予定はないとしている。

(Text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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