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NYオミクロン株急拡大の中、賛否分かれた「大晦日カウントダウン」決行(現地ルポ)

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(c) Kasumi Abe

気温は摂氏11度。冬の寒さが厳しいニューヨークの“大晦日”としては、集まった人から「暖かいね」という声さえ聞こえてきたほど。

オミクロン株感染が急拡大する中、電光掲示板が眩いタイムズスクエアでは31日、毎年恒例の大晦日カウントダウンイベントが行われ、世界中から集まった大勢の人々が大量の紙吹雪が舞う中、新年の到来を祝った。

このイベントは、1904年(ボールドロップが始まったのは1907年)から続いている伝統的なものだ。第二次世界大戦下の1942年、43年に休止した以外は110年以上にわたって毎年行われてきたが、昨年は新型コロナウイルスの影響で、史上初の無観客(関係者のみ)&バーチャル形式で行われた。

今年は2年ぶりの「有観客」開催だった。当地ではワクチン接種が進んでいることもあり、有観客での開催は早くから発表されていた。そんな矢先、12月に入って変異ウイルスのオミクロン株が急拡大し、再び無観客開催になるのではないかとささやかれていたが、主催者は観客数を通常の4分の1の1万5000人まで減らし、ワクチン接種証明書の提示とマスク着用を条件に予定通り決行した。

年越しの60秒前からビルの上の直径3.6メートルのボールが降りてくるため「ボールドロップ」イベントとも呼ばれる。(c) Kasumi Abe
年越しの60秒前からビルの上の直径3.6メートルのボールが降りてくるため「ボールドロップ」イベントとも呼ばれる。(c) Kasumi Abe

通常の来場者数は5万8000人だが、今年は1万5000人まで大幅に制限された。(c) Kasumi Abe
通常の来場者数は5万8000人だが、今年は1万5000人まで大幅に制限された。(c) Kasumi Abe

通常、大晦日の早朝から来場者による陣取り合戦が始まり、年越しまでの長時間、トイレもない中じっと待機、という過酷な経験談をよく聞く。よってこのカウントダウンは「一生に一度のイベント」とも呼ばれている。しかし今年はワクチン接種証明書のチェックなどがあったため、午後以降に入れたという人も多かった。

参加している人々からは「このイベントについに参加できて嬉しい」といった声が多く聞こえてきた。高校3年になる息子に誘われ、テキサスからこのイベントに初参加したタリーさんは、午後1時からここで年越しの瞬間を待っているそうだが、「楽しみでしょうがない」と疲れがまったく見えない。ニュージャージーからやって来たシュワマリッツ一家は「このイベントで景気づけをし、来年は新たなる冒険と更なる繁栄の年にしたい」と抱負を語った。イベント中にプロポーズするメキシコからのカップルもいて、テレビ中継された。

観客同士で社会的距離が保たれているところもあったが、興奮している人々が「密」になりがちだった。またコロナ禍にしては、警官の数が「異常なほど」多かった。ニューヨークタイムズによると、私服警官やFBI、爆発物探知犬なども含めた警官配備は、テロを厳重警戒したものだという。ただ残念なことに、中にはマスクをしていなかったり警官同士が密になっている光景も見られた。

メインステージでは、過去にビートルズ、マドンナから近年ではポスト・マローン、BTSなどさまざまな大スターがパフォーマンスを行ってきた。今年はジャーニー、KTタンストール、ジャ・ルール&アシャンティ、中国の舞踊団などだった。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

30日、ニューヨーク州の新規感染者数は7万6555人となり、過去最多を更新中だ。重症患者数も昨春ほどではないが、それでも前日より546人増えて7919人に急増している。

この影響で、ブロードウェイのミュージカルも次々に公演が中止に追い込まれている。ラジオシティ・ミュージックホールの毎年恒例のラインダンス・ショー「クリスマス・スペクタキュラー」も17日から1月まで公演の中止が決まったばかりだ。

小説家のドン・ウィンズロウ氏など、コロナ禍でのイベント反対を求める声も多く上がった。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

年明けと共に、エリック・アダムス氏が宣誓を行い、新市長が誕生した。(c) Kasumi Abe
年明けと共に、エリック・アダムス氏が宣誓を行い、新市長が誕生した。(c) Kasumi Abe

ほとんど報じられることはないが、会場周辺にもイベントに入りきれなかった人々で溢れ返っていた。「お祭り」は朝まで続いた(ようだ)。(c) Kasumi Abe
ほとんど報じられることはないが、会場周辺にもイベントに入りきれなかった人々で溢れ返っていた。「お祭り」は朝まで続いた(ようだ)。(c) Kasumi Abe

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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