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米入国にワクチン接種義務化。健康上の理由で接種できない人は今後どうなる?... 専門家に聞いた

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
(写真:アフロ)

アメリカでは「Reopening」(再開)という言葉を、最近また聞くようになった。

パンデミック以降、入国を制限してきた30以上の国と地域(ヨーロッパ諸国、英国、アイルランド、中国、インド、イラン、ブラジル、南アフリカなど)の外国人渡航者に対して、来月より入国規制を解除し、ワクチン接種を条件に入国を許可することになったからだ。

参照

オーサーコメント

バイデン大統領は25日、新たな入国ルールを発表した。ニューヨークとワシントンD.C.では、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)のシンディ・フリードマン(Dr. Cindy Friedman)博士が、外国メディアを対象に詳細を説明してくれた。

今後の主な変更点

  • 外国人渡航者(空路)はアメリカへの渡航の際、WHOやFDAが承認したワクチンの接種証明書と新型コロナウイルス検査の陰性証明書(出発の3日以内)を、空港の出発カウンターで提示する必要がある
  • アメリカ市民や永住者がアメリカへ帰国する際は、引き続き新型コロナウイルス検査の陰性証明書が必要。ワクチン接種者は出発の「3日前まで」、未接種者は「1日前まで」に検査をする)
  • 新たなアメリカへの入国ルールは11月8日から開始

つまりワクチン接種を完了し、陰性である限り、アメリカへの入国を歓迎するというものだ。

ただし、以下に該当する外国人は、未接種でも入国が「例外」として認められる。

例外

  • 18歳未満
  • ワクチンの接種率が10%未満の国(約50ヵ国)からの渡航で、観光が目的ではない場合。(アメリカ到着後、60日以内にワクチン接種を受ける必要あり。国のリストは3ヵ月ごとに更新)
  • 新型コロナのワクチンに対して重度のアレルギー反応(アナフィラキシー反応)を起こしたことがあるなど、いくつかの病状や医学的問題がある
  • COVID-19臨床試験参加者

  • 2歳未満は新型コロナの検査は不要
  • 新型コロナ感染から最近回復した人は、検査の代わりに、医者が発行した回復を証明する書類が必要

おそらくこれを読んでいる人の中には、アレルギー反応を起こしやすいなど、体質的にワクチン接種を受けることができず、今後予定されているアメリカへの渡航について不安に思っている人もいるだろう。その辺の詳細をフリードマン博士に聞いてみた。

医学的問題を抱える人の入国については「非常に限られた例外として認めることがある」と同博士。まず、健康上の理由でワクチン接種ができないのであればそれを証明する手紙を医師に書いてもらい、航空会社の出発カウンターでCDCのガイドラインに基づいてその内容を確認してもらう必要があるという。

他にも関連質問を聞いてみた。

アメリカ入国のために必要なワクチン接種とは、いつまでに「完了」していなければならないかについては、「2回目(J&Jワクチンは1回目)の接種から14日後に完全に免疫力がついたと見なされるため、接種から出発まで14日間経っていなければならない」ということだ。渡航の予定がある場合は早めにワクチン接種を完了しておくと良いだろう。

また中には、ワクチンが解禁してすぐ、早い段階で打った人もいる。11月8日の時点で、ブースターが必要になってくるかどうかについては、「現在のガイダンスにはブースターショット(追加の接種)に関する事項は含まない」ということだ。将来的にガイダンスが変更される可能性は否定できないが、現時点ではアメリカ入国のためのブースターに関しては心配はいらない。

最後に、世界中で偽物のワクチン接種証明書が問題になっている。偽物をチェックする体制はあるかについては「すべての乗客は提出書類に嘘がないと、書類に署名する必要がある。情報が改ざんされたり偽りの書類が提出された場合、ペナルティーや罰金が科されることがある」ということだ。

アメリカではこの新たな入国ルールにより、国外からのインバウンド効果が期待されているが、パンデミック前のような旅行者数の復活は2023年まで見込めないだろうと見る専門家もいる。またワクチン接種義務は、もっとも利用の多い国内線の旅行者にはないため、感染防止の効果について疑う声も出ている。この施策が吉と出るか凶と出るか。

  • 本稿の情報はすべて2021年10月27日現在

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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