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新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”となるか?NYが復興へ前進、大規模再開へ

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
5月20日のニューヨークの街並み。(以下同)(c) Kasumi Abe

ニューヨーク州では19日、ビジネスの入店・入場制限の規制のほとんどが解除され、大規模に経済活動が再開した。

規制が解除されたのは、飲食店、オフィス、小売店、イベント会場、博物館、遊戯施設、ジムなどさまざまなビジネスの入店・入場率、および閉店時間だ。

  • 例外:店内飲食の営業時間規制解除は今月末、ブロードウェイミュージカルの全面再開は9月。集会やイベントは屋外は500人まで、屋内は250人まで、など。

深夜の営業を停止していたニューヨーク市の地下鉄も2日前の17日から、以前のような24時間の終日運行に戻った。

ミッドタウンには、ビジネスマンの姿も増えてきた。(c) Kasumi Abe
ミッドタウンには、ビジネスマンの姿も増えてきた。(c) Kasumi Abe

ニューヨークはこの1年間で、第1波〜第2波と2つの大きな感染の波を乗り越え、やっとここまで到達した。街の人々からは「やっと再開だね」という安堵の声が聞こえてくる。

入店率制限は撤廃されたものの、店内では人同士が6フィート(約1.8メートル)離れなければならないため、いくつかの人気店には依然として入場制限をせざるを得ないところも。

日系の紀伊國屋書店で並ぶ人々。同店ではアニメ人気により売り上げが回復し、先月はやっとコロナ前の数字に戻ったという。(c) Kasumi Abe
日系の紀伊國屋書店で並ぶ人々。同店ではアニメ人気により売り上げが回復し、先月はやっとコロナ前の数字に戻ったという。(c) Kasumi Abe

緊急事態宣言が長引く日本からすると、一時期の感染爆発地ニューヨークが今、一体どのくらいの数値で全面的に経済再開に踏み切ったのか気になることだろう。現状の数値と共にお届けする。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

NY州が全面再開した当日(19日)の感染状況と、2波の推移

ニューヨークは第2波を乗り越え、感染者数は減少傾向にある。

  • 19日に実施された新型コロナ検査は18万6078回。うち、1583件が陽性(全体の0.85%)
  • 新型コロナウイルスによる入院患者(重症患者)数はこの日の時点で、1490人
  • 死者18人

「営業しています!」というスタバの大きな垂れ幕。(c) Kasumi Abe
「営業しています!」というスタバの大きな垂れ幕。(c) Kasumi Abe

NY州の最新のワクチン接種状況

ワクチン接種も順調だ。駅で接種ができるパイロットプログラムが成功し、来週からは州内7つの空港にも居住者を対象に、予約不要の接種会場を開く。

これまでワクチン投与された実績はこちら。

  • これまでに州内で投与されたワクチン回数:1785万4772回
  • 24時間以内に投与されたワクチン回数:10万9748回
  • 少なくとも1回のワクチン接種を受けたのは、18歳以上の62.2%(すべての年齢層の50.5%
  • 必要回数分(1回もしくは2回)のワクチン接種を「完了」したのは、18歳以上の53%(すべての年齢層の42.5%

「コロナ前の風景」が戻っていた。(c) Kasumi Abe
「コロナ前の風景」が戻っていた。(c) Kasumi Abe

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

これまで報告されている州内の感染総数

NY州

  • 感染総数 約209万件
  • 死者数 5万2,505人

NY市

  • 感染確認総数 約94万4000件
  • 死者数 3万3078人

ニューヨーク州の人口 約1950万人

以上が現時点での数値だ。

街で聞こえてくるのは、主流は初夏の訪れと共に経済再開を嬉しがる声だが、中にはさまざまな意見がある。

例えば、この1年間働くことなく失業給付金を得られ、また自分の元々の給料より失業給付金の方が多いため、復職したくないと言う声が人づてに伝わってくる。また、依然陽性者数も少なくないことから、経済再開は「時期尚早」とする声もある。

近所に住むサブリナさん親子は、ワクチン接種を2回「完了」したが、いつもマスクを着けて外出している。「まだビジネスの全面再開もマスクを取るのも早いと思います。多くの人が気を緩めると、またすぐにぶり返すかもしれません」。

「ビジネス再開もマスクを取るのもまだ早いのではないか」と心配するサブリナさん。娘のクリスタルさんと買い物に来ていた。(c) Kasumi Abe
「ビジネス再開もマスクを取るのもまだ早いのではないか」と心配するサブリナさん。娘のクリスタルさんと買い物に来ていた。(c) Kasumi Abe

さまざまな人々の考えがある中、ニューヨークは行政主導で、復興へ向け大きく舵を切った。

忙しなく行き交う大勢の人々を眺めながら、クオモ州知事が昨年の今頃、会見で言った言葉を懐かしく思い出す。

「今、我々の正面に立ちはだかっているのは、歴史的にも稀にみる困難へのチャレンジだ。しかし911(同時多発テロ)やハリケーンサンディを乗り越え、その後より良い社会を再構築したように、もう一度 “Build Back Better”

この街はこれから、新型コロナに「打ち勝った」“先行事例”の大都市となれるだろうか。

我々の未来は我々で作る。さぁ行こう。

(クオモ州知事のツイッターより)

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

落ちては這い上がる、レジリエント(跳ね返りの力)のある街。今こそ、ニューヨークの底力を見せる時。(c) Kasumi Abe
落ちては這い上がる、レジリエント(跳ね返りの力)のある街。今こそ、ニューヨークの底力を見せる時。(c) Kasumi Abe

(Text and photos by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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