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NY州感染者数、全米2位に 感染爆発で2週間封じ込め作戦へ【新型コロナウイルス】

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
ニューヨーク市内も感染者が増えているがこのようなマスク姿はたまに見る程度。(写真:ロイター/アフロ)

3月10日、ニューヨーク州ではCOVID-19(新型コロナウイルス)の感染者数が173人となり、全米ではワシントン州に次ぐ多さになった。

173人の内訳:

108人(ウェストチェスター郡)

36人(ニューヨーク市)

19人(ナッソー郡)

6人(ロックランド郡)

2人(サラトガ郡)

1人(サフォーク郡)

1人(ウルスター郡)

この日も記者会見を開いたニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、このように述べた。

「173人と言えども、その中で病院で治療を受けている重病患者はわずか14人(8%)。そのほかの感染者は症状が軽いため、自己隔離で静養している」

クオモ知事の記者会見のキャプチャ。(以下同)
クオモ知事の記者会見のキャプチャ。(以下同)

改めて「お年寄りや持病のある人に感染させないことが大切」「健康な人は、何も恐れることはない」「体調が悪ければ外出しないことが大切」といった、先日発表したポイントを再び強調した。

次に、ニューヨーク州の感染者数はワシントン州と同じくらい多いが、死者数がまったく違うという特徴も示した。

なぜワシントン州だけ死者が多いか?

「お年寄りの多い介護施設内での集団感染が原因」とクオモ知事。

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これを受け、「我が州も特定エリア内でのクラスターの封じ込めを実施する」と発表された。懸念されているエリアは、ウェストチェスター郡のニューロシェル市だ。

「ニューロシェルは現在、アメリカ国内でおそらく最大のクラスターである」

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同市は、マンハッタンから北方に車で1時間の距離にある。

ニューロシェル市の地図

3日に発表された弁護士の50歳の男性(州内で確認された2人目の感染者)が、礼拝に訪れたシナゴーグで集団感染となり、現在ウェストチェスター郡だけで108人の感染者が確認されている。

封じ込めは明日木曜から2週間、対象地区で実施される。この地区の学校、礼拝所、大規模なイベントなどがすべて閉鎖される。期間中はナショナルガード(国家警備隊)が派遣され、各家庭に食べ物を届けたり、公共の場の清掃を行うとのこと。

この対象地域を通る2つのメトロノース(電車)やスーパーなどは通常通りオープン。住民の行動は制限されず、ほかのエリアへの往来も自由という。

ニューヨーク州の今後の明暗を左右するであろうニューロシェルでの封じ込めが功を奏するか。作戦の成果を願う。

感染者36人になったニューヨーク市内の様子

この日も市内はいたって通常通りだ。地下鉄も多くの人が利用し、店やレストランも通常通りの賑わいだ。行き交う人々のマスク姿もほんのわずか(1%ほど)で、大多数はマスクを着用していない。

(ニューヨーク市民の足である地下鉄に関して、パット・フォイヤMTA会長は先日、改めて地下鉄利用の安全性を強調したが、ビル・デブラシオ市長は「何らかの症状が見られる場合は利用を避けて」と市民に呼びかけている)

またここにきて、リモートワーク(テレワーク)を実施し始めた企業や、「オンライン授業」に切り替えた学校も増えつつある。

ドラッグストアの様子

(2月上旬)

アルコール消毒液、抗菌用ジェル、除菌清掃グッズなどは豊富にあった。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

(3月7日)

これらの商品は影も形も消え、棚はすっからかんの状態。

(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe

(Most photos and text by Kasumi Abe)  無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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