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国外逃亡費用いくら? 米メディアの個別インタビューでゴーン氏が語ったこと

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
記者会見で、逃亡後初めて公の場に出てきたゴーン被告。(写真:ロイター/アフロ)

日本から国外逃亡したカルロス・ゴーン被告が1月8日、レバノンで記者会見を行った。

ゴーン被告は英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語の多言語をたくみに操り、約2時間半にわたって持論をまくし立て、世界中のメディアを前に、日本の司法制度を批判し、身の潔白を主張した。

日本からも多くのメディアが会場前に殺到したが、「公正に報道するであろうメディアだけを厳選した」(ゴーン被告)とし、日本からの3社(朝日新聞社、テレビ東京、小学館)含む自身のお気に入りメディアのみと、ごく限られた報道陣だけが会場内に入ることを許された。

米ニューヨークタイムズ紙は会見後の第一報として、「東京からの逃避行カルロス・ゴーン 長くこじれた防衛からの解放」とする記事を発表。

ただし、世界中の人々がまず知りたかったであろう、「逃亡日の行動」と「どのように国外に脱出したか」についての2大クエスチョンマークについて、せっかくゴーン被告が沈黙を破ったのに、被告は「会見を開いたのは『なぜ』日本を離れたか、について話すためだ」とし、肝心な疑問への答えが見出せなかったことへの困惑が表れる内容だった。

しかしながら同紙は、被告の逃亡日の行動について、自社と各国の複数のニュースメディアの報道から以下のように推測するとした。「12月29日の午後、東京の自宅を徒歩で外出し、新幹線を利用して大阪に移動。コンサートの音響用具ボックスに身を隠し、関西国際空港からコーポレートジェットでトルコのイスタンブール・アタテュルク空港へ飛んだ。そこで別の飛行機に乗り換えベイルートへ、という線でおそらく間違いない」。

また同日、米CNBCは、ゴーン被告の個別インタビューの様子も報じた。被告の服装が合同記者会見の時とまったく同じなので、おそらく会見後に応じた個別インタビューだろう。

出典:CNBC
出典:CNBC

そのインタビューで被告は、合同記者会見同様にすべての容疑を否定し、公正な裁判のためには国外逃亡するしか選択がなかったと、保身の姿勢を崩さなかった。

またCNBCのインタビュアーが、改めて「どのように逃亡したか?」と問うと、「他人をトラブルに巻き込まないために、自分だけで実行した」と返答。「数時間も(狭い)ボックス内にうずくまっていた、んですよね?どういう感じだったのか」と聞くと、被告は肯定も否定もせず、このように語った。「それについては話すつもりはないが、移動中はもちろんものすごく不安だった。しかし、レバノンに到着し妻や家族に会うことができ、心配ごとが一気に消えた。まるで、自分が新しく生まれ変わったような気持ちになった。ここにいるのは新しい自分だ」。

「逃亡にどのくらいのお金がかかったか?」とインタビュアーが突っ込んだ質問を投げかけると、被告は具体的な金額については言及しなかったものの「これを実行し成功させるには、とてもとても惜しみないもの」と答え、「多額過ぎるということ?」という問いに「そうだ」と答えた。

また、CNBCの同日の関連ニュースでは、元FBIの特別エージェント、ジェフ・ランザ(Jeff Lanza)氏をゲストスピーカーに迎えた。同氏は「もし日本の監視体制が抜かりないものであったならば、このような飛行機、電車(新幹線)、車両(タクシー)を使った移動、逃亡劇は決して起こりえなかっただろう」と指摘。改めて、日本のセキュリティの甘さが浮き彫りとなった。

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(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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