「気候変動問題をセクシーに取り組む」の違和感はこうして生まれた(そもそもsexyとはどういう意味か)

小泉進次郎環境大臣。(写真:ロイター/アフロ)

国連総会環境ウィークでニューヨークを訪れている小泉進次郎環境大臣。温暖化問題のイベント後に開いた会見での発言が「意味不明」と、物議を醸している。

発言の内容:

気候変動のような大きなスケールの問題に取り組むことは、本来は楽しいはずであり、かっこいいこと、そしてセクシーなことでもあるはず。

出典:テレビ朝日系(ANN)

小泉氏の「セクシー」発言に対して、舛添要一氏などが非難している。

「セクシー」という気候変動問題についておおよそ関係ないワードが出て、そこで映像が終わっていたため、筆者もこの映像ニュースを初めて観たときは、意味がよくわからなかった。

アメリカでの「セクシー」という言葉の使われ方

セクシー(sexy)という言葉は、アメリカでは通常そのままの意味で使われる。人気テレビ番組『Sex and the City』などを観てもわかる通り、異性への(時には同性への)性的な褒め言葉だ。

ただしこの言葉は、トリッキーな一面も持つ。深い関係になっているカップルでは普通に使われるが、例えば最初のデートで相手が「You are sexy」(あなたはセクシーですね)と言ってきたら、もちろん褒められているのではあるが、アメリカ人でさえも「この人はちょっと要注意」とイエローカードが出る。まだ会ったばかりで、これから真剣に向き合おうとする相手に対して、決して軽々しく使わない言葉だからだ。

また、芸術や料理の世界で「セクシー」という形容詞が、レトリックとして使われることもたまにある。例えば「セクシーな技法」「セクシーなアプローチ」「セクシーな盛り付け」「セクシーな車」などとといった具合だ。

ただし、これらは単なる言葉の綾として使っているだけで、直球的に「セクシャル」だと言っているわけではない。日本語にはない言葉の綾だが、「美しい」とか「魅力的」という言葉の替わりに使っていると言えば、より理解しやすいだろうか。ただしここでも要注意なのは、多用した途端にチープに聞こえてしまうので、決して多用しないこと。

どちらにせよ、「セクシー」は政治の世界や会合、職場などお堅い場でやすやすと使われる言葉ではない。例えば過去に使ったことがある政治家がいるとすれば、人々の注意を強く引くために言葉の綾として使ったのだろうし、その後に言葉の真意を伝える説明があって然るべきである。

小泉氏はなぜ「セクシー」という言葉を使ったのか?

私は動画ニュースを観た後、検証のためにもう一度動画をチェックした。 そして2回目に気づいたことがある。それは、小泉氏が「セクシー」と発言しながら、隣の女性を指差したことだ。

通常これはとても失礼にあたる。なぜなら、指を差した人をセクシャルな対象として捉えているというボディランゲージだからだ。

しかし、あのような場だ。これは何か隣の女性にヒントがありそうだと思い調べると、もともとの「セクシー」発言は隣に座っていた女性が以前発言したもので、小泉氏はそれを引用したことがわかった。

その隣の女性は、UNFCCC(国際連合枠組条約)の事務局長、クリスティアナ・フィゲレス(Christiana Figueres)氏。同氏はコスタリカの外交官で、2010年7月から同事務局長に就いている人物だ。

フィゲレス氏の発言概要:

今こそ、グリーンセクシー(環境セクシー)に取り組む時であり、それを標準にする時です。とてもセクシーに。明日から明後日から取り組もう、ではなく「今」なのです。この責任を我々の子ども世代やそれ以降の世代になすりつけてはなりません。この問題は今の私たちにかかっているのです。この責任を理解することは、私たち、今の世代の人々次第です。この問題への挑戦を避けて通らないよう、人々に啓蒙しようではありませんか。

出典:Rio+20: Christiana Figueres, UNFCCC Executive Secretary

動画を観る限り、フィゲレス氏がセクシー発言をした後、両サイドの男性が少し反応しているから、同氏はあくまでもレトリックとしてセクシーという言葉を使い、注意を促したことがわかる。

環境問題でセクシーという言葉を使うことについて、欧米の環境界では「環境に配慮=セクシー」は10年以上前からある概念のようだ。

  • 英メディア『The Guardian』

2007年、アリソン・ベンジャミン(Alison Benjamin)氏が寄稿した『Is green the new sexy?』(環境問題への取り組みは新しいセクシーか?)という見出しの記事。「リサイクルをする(環境に配慮したエコフレンドリーな)男性はセクシー(ホット、魅力的)か」を問う内容。

ここで使われているセクシーも、本記事の文頭で書いた「魅力的」という意味に近い表現。

  • 英『The Gryphon』(リーズ大学発行の新聞)

2017年に発表された『Let’s make sustainability sexy』という見出しの記事。

リーズ大学では、サステイナビリティの意識向上に関する新キャンペーンで、気候変動の国連大使であるレオナルド・ディカプリオ氏をイメージマスコットとして起用したと発表。同氏は16年、プロデューサーとして環境ドキュメンタリー『Before the Flood』を製作した。

記事では「レオが我々のイメージマスコットになったことで、サステイナビリティはセクシー(な話題)となり注目を集めることになった」とある。

混乱を招いた要因:言葉尻だけを捉えてはいけない

ではなぜ今回、小泉環境相のセクシー発言がこれほど騒動になっているのか。

まず文頭で上げた動画ニュースの発言の部分の映像が「セクシーであるべき」発言で終わっているからだろう。あの部分だけを観たら、誰でも「環境問題=セクシー???」と混乱するに決まっている。アンチ小泉氏にとって、同氏を叩く格好の材料となってしまった。

通常テレビや新聞などの報道では、時間や文字数の問題で、発言の一部がピックアップされて報じられることが多い。また今では誰もが、インターネットやソーシャルメディアを使って、まことしやかに情報を発信できるようになってしまった。よって現代生活の中で受け手に求められているのは、おかしいなと感じた時に「これは本当なのか?」「その発言の真意は?」「引用元は?」と疑問を持つことだろう。

近年叫ばれて久しい情報リテラシーとは何か、を改めて考えさせられた。

(Text by Kasumi Abe) 無断転載禁止