2025年の日本経済を左右する「103万円の壁」対策
日本の首相交代と解散総選挙、そしてアメリカ大統領選挙という日米2大政治イベントが終わり、株式市場では「アメリカ>日本」の構図がより鮮明になっている。 7月末に日本銀行がサプライズで利上げを行うまで、年初来の騰落率では日本株がアメリカ株を上回り優位に立っていた。だが、8月からはアメリカ株が逆転、11月22日時点の年初来騰落率はS&P500種指数が25.9%、TOPIX(東証指数)は13.4%であり、アメリカ株優位がはっきりしている。
■アメリカは利下げ継続困難でも大きなリスクにはならず 前回の「次期トランプ政権下で米国株高は本当に続くのか 」(11月8日配信)で述べたように、今後、経済政策が大きく変わっても2025年のアメリカ経済は2024年と同様に底堅い経済成長が続く、と筆者は予想している。 次期トランプ政権では、関税政策の引き上げのネガティブな影響と、減税などの財政政策のプラスの効果がほぼ相殺するとみられ、かつ規制緩和など企業活動を後押しする政策を実現する可能性が高いからだ。
こうした中で、2025年のアメリカ経済の成長率は2%を上回ると予想される。一方で、関税引き上げが、インフレ率をやや高めるため、2025年央にはFRB(連邦準備制度理事会)の利下げ継続は難しくなるとみられる。ただ、次期トランプ政権下でもインフレ制御に責任を持つFRBに対する市場の信認が揺らぐには至らず、株式市場の大きなリスクにはならないと見込まれる。 こうした筆者と同様の投資家の見通しが反映される中で、大統領選挙後にS&P500種指数は一時初の6000ポイントの大台を超え、上昇基調にある。今後、割高感が意識されて一時的に調整する場面は何度もあるだろうが、共和党の「トリプルレッド」の政治状況において、アメリカ経済については今後も成長する余地が大きいと筆者は考えている。
■このままでは中国は1990年代の日本と同じになる ただ、次期トランプ政権の経済政策が、世界経済全体の成長を高める可能性は低い。大幅な関税政策の対象となる中国については、輸出主導での回復がかなり難しくなり、2025年も経済停滞が続きそうだ。 中国でも各種の経済政策が打ち出されているが、経済成長率を高めてデフレ状況を克服するに至る政策対応はほとんど実現していない。このまま無策が続けば、アメリカからの対外的な圧力に直面した1990年代の日本と同様に、経済的な自滅に至るだろう。