2025年の日本経済を左右する「103万円の壁」対策
もちろん、自動車などの関税引き上げの対象になる欧州や日本についても、トランプ政権が繰り出す関税引き上げが重荷になりそうだ。また、日銀が性急な利上げを続ける姿勢を明確にする中で、2024年の前半までのような大幅な円安の追い風の環境は、2025年には変わるだろう。 日本が次期トランプ政権と適切に対峙しながら、自国の利益を追求できるかは、2025年の政治リーダーの最も大きな仕事の一つになることは明らかである。ただ、ドナルド・トランプ氏と懇意だった故安倍晋三元首相とは政敵関係にあった石破茂首相は、大きなハンデを背負ってトランプ氏に向きあわざるをえない。もし、石破首相らの相当な努力と資質がなければ、残念ながら、自国の利益を高める外交政策を繰り出す展開は期待しがたい。
先述のとおり、日銀が7月末に性急な利上げを開始したことが、日本株の値動きを抑えるきっかけになった。政治情勢が不安定化する中で、政治家にかわって、保守的な経済官僚が財政健全化をいたずらに急ぐマクロ安定化政策を決定する状況に変わりつつあることが、日本の株式市場にとって大きなリスクとして認識されているということだ。 こうした意味で、10月の総選挙で躍進した国民民主党が、基礎控除の大幅引き上げを軸にした減税政策を主張していることは、今後の日本経済や株式市場にとってほぼ唯一のポジティブな動きだと筆者は考えている。減税の民意をうけて躍進した国民民主党がキャスティングボートを握っている今の政治状況は、日本経済にとって悪くない。
一方で、インフレ上昇に対応して基礎控除を引き上げるという、民意の後押しを受けた正論に対して、抵抗する政治勢力の動きがメディアを通じて可視化されている。税金に依存する既得権益者にとって、減税阻止は極めて合理的な行動になるということだろう。日本のマクロ安定化政策がデフレ期に機能不全に陥ったアナロジーとして、最近の減税阻止の動きを興味深く筆者は注視している。 ■大幅減税実現の有無が将来の日本経済の命運を左右する