名スカウトのドラフト採点「成功は中日、育成の日ハム、広島、最悪は阪神」
注目のドラフト会議は、12球団中11球団の1位入札が高校生野手に集中するという異例のドラフトとなった。 大阪桐蔭の“三刀流” 根尾昂には、中日、日ハム、巨人、ヤクルトが競合して中日、3拍子揃った大型外野手の藤原恭大には、楽天、阪神、ロッテが重複してロッテ、報徳学園の超高校級遊撃手の小園海斗には、オリックス、横浜DeNA、ソフトバンク、広島の4球団が1位入札して広島がそれぞれ交渉権を獲得。単独指名は、西武の日体大の松本航だけ。 夏の甲子園準Vで、大フィーバーを巻き起こした金足農の吉田輝星は、外れ1位で日ハムが指名した。 THEPAGEでは恒例のドラフト採点をヤクルトのスカウトを30年以上務め、古田敦也氏や、現楽天GMで4球団競合の外れ1位で立命大の辰巳涼介を引き当てた石井一久氏らを発掘した名スカウト、片岡宏雄氏にお願いした。 「11球団が高校生3人の野手に重複するドラフトなんて過去に見たことがない。これが今の野球界が向かう時代の流れなのだろう。完成品に近い即戦力投手が西武が指名した松本くらいしかいなかった不作の状況も手伝ったと思うが、投手は毎年、出てくるが、スラッガーや大型ショート、3拍子揃った好素材は、なかなか出ない。いいショートが一人出れば、10年はセンターラインが固まる。目先を見るのではなく、チームの背骨になるような選手を獲得して、2、3年かけて育ててチームの土台を作ろうという考え方が、どの球団にも浸透している証拠だと思った」 外れ1位でも、強肩、俊足、巧打の辰巳に楽天、阪神、巨人、ソフトバンクの4球団が競合したが、彼も、またセンターラインと打線の中軸を任せることのできる逸材だ。 チームの骨幹作りを狙ったドラフトにも成功と失敗が生まれた。片岡氏は、「結局、選手が揃わないドラフトでは1位のクジの成否がドラフトの成否に直結する。高校ビッグ4と言われた選手を獲ることができたチームはドラフトに成功、逆に2度、クジを外した球団は苦しいドラフトになった」という見方をしている。 外れ1位を外した球団は、阪神、巨人、ソフトバンク、ヤクルトの4球団である。 片岡氏が「成功」と採点したトップは中日だ。 「私が個人的に買っているのは根尾よりも藤原なのだが、根尾を射止めた中日は、2位で東洋大の梅津晃大、3位で三菱重工名古屋の勝野昌慶という2人の即戦力投手を確保した。梅津は、まだ未完成の部類に入るが、長身でコンパクトにまとめたテイクバックで打者はボールの出所が見にくい。勝野も、広島の黒田博樹に似たリズムで、150キロ級のストレートをどんどん強気で投げ込んでくる。即戦力で使えそうだ。加えて名古屋、岐阜出身の選手を集めたのか、偶然、集まったのかはわからないが、根尾は、将来の看板選手になるだけでなく1年目からチームに大きな影響を与えるだろうし、補強ポイントを押さえた、いいドラフトになったと思う」 中日は、与田剛新監督が「スーパーマン」と評する根尾だけでなく、東洋大の150キロ右腕トリオの一人、梅津、U-23代表にも選ばれ最速152キロを誇る勝野の2人を2、3位で指名できたことが大きい。来季は投手陣整備が課題だからだ。