戦後日本の「長期政権」と首相像 発足半年、菅政権の行方は?
菅義偉氏が首相になって半年が経った。自民党総裁の任期は9月まで。衆院解散も年内のどこかである。当初の人気は陰り、コロナ対策など手詰まり感のある菅政権だが、果してこの先、「つなぎ政権」で終わるのか、はたまた長期の本格政権となるのか。 「長期在職」だった前任の安倍晋三氏を含め、戦後日本で5年以上首相を務めた人物は5人しかいない。このタイミングで一度その5人の特徴を比較しながら戦後政治、行政の一端を振り返ってみよう。(行政学者・佐々木信夫中央大名誉教授)
首相在任は“平均2年” これでいいのか?
戦後の首相は菅氏を含め35人いる。単純に平均すると在任期間は2年そこそこ。平成(1989年)以降は17人だが、第1次安倍政権から福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦まで1年そこそこの「短命政権」の連鎖だった。まるで「回転ドアのようだ」と米国のメディアは報じていた。そうした点からすると、第2次安倍政権の7年8か月の在任は特異な存在とも言えよう。 もとより、首相が解散権を振り回し、政権維持の道具として使う日本的やり方はおかしい。民意と国会の意思がずれた時、民意を問うために解散を行うのが筋。解散権が首相の専権事項だという仕組みにも疑問符が付く。議院内閣制の母国英国はこうした弊害を除去するため、与野党を含め国会の3分の2が解散に賛成しないと国会を解散できない。 内閣の重要な仕事の1つは予算をつくること。1つの予算のライフサイクルは予算編成、執行、決算検査からなる。日本の場合、予算編成に約1年、執行に1年、決算検査に1年半の合計3年半かかる。予算を政治家の人気取りに使う傾向もあるが、内閣が頻繁に変わると予算はつくりっぱなし、予算の政策評価に当たる決算検査を受けないまま次の内閣に移っていく。 「無責任の連鎖」になりかねず、同時に「予算の大盤振る舞いをしても評価を受けることがない」状況が常態化することで財政膨張の原因にもなる。少なくとも1つの内閣は「4年」は政権の座にいないと、責任ある政治を行うことにはならない。短命政権の続く日本の政治は異常とも言えよう。 戦後、計5年以上務めた首相は5人に過ぎない。安倍晋三、佐藤栄作、吉田茂、小泉純一郎、中曽根康弘だ。 議院内閣制では、首相は国会議員の手で選ばれる。その点、国民が直接トップを選ぶ大統領制とは仕組みが異なるが、とはいえ、「その時代が首相を生み出す」感はある。戦後復興、高度成長、低成長、バブル崩壊、長期デフレなど、この70年余の社会経済は大きく変化してきた。その時代が求める者がトップに選ばれている。以下、5人の特徴を見てみよう。