「AIの父」すら警鐘…「AIリスク」問題はなぜそんなに重要?軽視しては絶対ダメなワケ
AIの急速な発展に伴い、AIのガバナンス強化が世界で議論されています。2024年のノーベル物理学賞を受賞した「AIの父」ジェフリー・ヒントン氏は、「AIの脅威」を指摘する1人です。現在カナダのトロント大学の名誉教授であるヒントン氏は、「AIの危険性について自由に発言するため」当時在籍していたグーグルを退職しています。「AIの父」も警鐘するAIのリスクとは何か、それに対して企業は何をすべきか、AIガバナンスに詳しい、PwCコンサルティングの橋本哲哉氏が解説します。 【詳細な図や写真】「AIの父」として知られるジェフリー・ヒントン氏。2024年、ノーベル物理学賞を受賞(写真:The New York Times/Redux/アフロ)
【調査】9割超の企業が生成AI活用を推進
現在、多くの企業がAI/生成AIをビジネスにどう活用するかについて、多大な時間とコストをかけていることでしょう。 PwC Japanグループが定期的に実施している生成AI調査の最新情報「生成AIに関する実態調査2024 春」によると、生成AI活用の推進度合い(活用中・推進中・検討中までを含む)は、2023年 春時点で「22%」だったものが2023年 秋時点で「88%」と急伸し、そして2024年 春には「91%」まで増加しています(図1)。 もはやAIを活用しないことは、企業にとって重大なリスクであると言えます。一方で、AIの影響は甚大であり、今後の社会や経済に対して、連続的なパラダイムシフトを招くことが予想されています。ただし、そのパラダイムシフトは私たち人類にとって、必ずしもプラスの結果を招くとは限りません。
「AIの父」も警鐘を鳴らす「AIのリスク」とは
実際、「AIの父」と呼ばれるジェフリー・ヒントン氏も「AIの脅威」に警鐘を鳴らしています。ヒントン氏は、2024年のノーベル物理学賞を受賞したAI研究者2人のうちの1人です。ヒントン氏が長年にわたって研究に取り組んでいる深層学習は、現在のAIや生成AIの基礎を築いたと評価されています。 ヒントン氏は、目標を与えられたAIが人類にとって不都合な解決策を導き出すことや、今後、AI同士が競い合うことで自律的進化を遂げ、人類が取り残されてしまうこと、そして、AI兵器が登場し、人類に危害を及ぼすことなどに危機感を募らせています。 AIは人類の知能を超えるのか、はたまたAIは知能を持つのか。これはAIのシンギュラリティとして以前から論じられているテーマです。しかし、シンギュラリティが訪れるか・訪れないかを論じるよりも、訪れた場合に、どのように人類とAIが安心・安全に共存していくかを論じるほうが重要です。 AIの発展は著しく、今後、ますます加速していくでしょう。ヒントン氏の危機感が現実のものにならないよう、私たちはAIがもたらす脅威にどのように向き合っていくのか、今、それを真剣に考えるべき局面を迎えているのかもしれません。