果たして、合格できるのか…現役の理系大学院生が「マニアックすぎる」試験に挑戦
有機化学専攻の学生として、某大学にて日夜研究漬けの生活を送る大学院生の ゆか。前回記事の特別展「毒」に続き、今回彼女が体験レポートをしてくれたのはその名も「元素検定」! マニアックすぎるような気もするこの検定、果たしてどんな検定なのか……? 【画像】じつは「科学者」でもあった「宮沢賢治」が作品に登場させた「元素の名前」 早速届いたレポートを見ていきましょう!
最も熱を伝える物質は?
突然ですが、皆さんにクイズです。 次のうち最も熱をよく伝える物質はどれでしょう? 1. 金 2. 銀 3. 銅 4. ダイヤモンド 皆さん、答えを決めましたか? 正解は…4. ダイヤモンドです! えぇっ! と驚かれた方も多いのではないでしょうか。 日常生活の中で金属の熱伝導率の高さを実感していると思いますので、「金、銀、銅の中で一番熱伝導率が高いのはどれかな」と思考を巡らせたのではないかと予想しています。 ちなみに、この3種類の中だと銀、銅、金の順で熱をよく伝えます。 もちろんこれらの金属は熱伝導率がよく、あらゆる製品に用いられています。身近な例で言うと、「溶かしてすくうアイススプーン」がありますね! アルミニウムや銅などで主に作られているのですが、まさに「熱伝導率の良さ」を生かした商品です。 ただ、これらの金属の熱伝導性を上回るのが「ダイヤモンド」です。おおよそ銅の熱伝導率の5倍にも達すると報告されています。その謎はダイヤモンドの特徴的な構造に起因します。 ダイヤモンドを構成する炭素原子は4つの価電子を持ち、よく「結合する手が4本ある」と表現されます。 ダイヤモンドの場合には、4個の価電子の全部を使って隣接する4個の炭素原子と共有結合し、正四面体を単位とする立体網目構造を作ります。 その格子が振動することにより、高い熱伝導性を示します。
「元素検定」って一体何だ?
……おっと、自己紹介が遅れました。大学で有機化学を研究している大学院生 ゆかです。 先ほど炭素の魅力として、正四面体状に結合しダイヤモンド構造をとることで、高い熱伝導性を有するということを紹介しました。他にも、世界一硬い石としても有名ですね。(細かいことを言うと実は最近の研究によりダイヤモンドよりも硬い物質が開発されています) ただ、炭素の魅力はこれだけではありません。4個の価電子が、炭素同士や水素、酸素、窒素、ハロゲンなどと多様な化学結合を作り、様々な形の分子を作ります。 それらの組合せででき上がる化合物の種類は無限ともいえます! このように炭素原子を骨格としている化合物を「有機化合物」といい、医薬品、食品、色素、洗剤、そして我々の体など多岐にわたります。たった一つの元素「炭素」が多種多様な化合物を作り出し、「有機化学」という大きな学問領域が展開されているの、すごいと思いませんか? 周期表を見ると現在118個の元素が登録されていますが、一つの元素を主役として大きな分野を創造しているのは「炭素」だけであると言えると思います。 その「炭素」が作る有機化学に魅せられて、朝から晩まで毎日研究しています。 そんな私ですが、今回「元素検定」というものにチャレンジしてきました。 冒頭のクイズは、先日私が東京で受けた元素検定の問題の抜粋です。ちなみにお恥ずかしながら、ダイヤモンドの熱伝導性の良さをしらずこの問題は間違えました… 元素検定では他にもこんな問題が出題されます!(元素検定HPより引用) 例題1:太陽が燃料にしている元素はどれでしょう? 1.水素 2.炭素 3.窒素 4.酸素 例題2:「新しい双子」というギリシャ語が語源の、高性能磁石に欠かせない元素はどれでしょう? 1.Sm 2.Pr 3.Co 4.Nd このように元素検定では、発見の歴史や名前の由来、性質、応用先といった個々の元素の特徴や、それらの元素を周期律を利用して並べた「周期表」について、自分がどれくらい知っているか力試しをすることができます! 普段「炭素」やその周辺元素ばかり着目している私ですが、今回は視野をぐっと広げて元素、そして周期表を知る旅に挑戦です! ちなみに例題1の答えは1の水素、例題2の答えは4のNd(ネオジム)です。正解できましたか?